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〇植物図鑑/有川浩

テーブルにはツクシの佃煮とばっけ味噌、
天つゆ、保温してあったさやかの混ぜごはんが
次々に並び、最後にフキの煮物と味噌汁がイツキの手で到着した。
汁椀からフキノトウの香りがぷんと漂う。

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煮立つ湯の中にイツキが二人分のパスタを入れて、
多少柔らかくなるまで菜箸で面倒を見る。
パスタの面倒を見終えたがイツキが
手早くベーコンを切り、
空いたコンロにフライパンをかける。
ベーコンを先に炒めて、
出た脂で次に炒めたのはノビルだ。
球根先に、次いで細長い葉を。
最後に投入されたのはアク抜きされたセイヨウカラシナ。

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味付けは基本的にパスタの茹で汁だけだ。
それなのにそれだけの味ではない。
ベーコンの甘さと塩気は予想の範疇だったが、
セイヨウカラシナのほろ苦さとノビルの甘さと!
特に球根部分をカリッと噛み砕いた
食感と甘い滋味は「アレみたいな」と説明できるものがない。

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翌日の昼が山菜後御膳になった。
ワラビは味噌汁と炊きごみご飯の具、
油揚げの細切りと合わせた煮付け、
ショウガをのせたおひたし、
和え物が確認できた。

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しなやかなくせに噛むとコリッとしている食感は、
ほかに喩える食材が思いつかない。
ごま油と醤油の味付けも絶妙だ。
白飯にいかにも合いそうなおかずである。

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ごま油の香りが食欲をそそり、
これだけでお代わりがいける。
取り憑かれそうになる寸前で、
食べる物をワラビに切り替えた。
ワラビは歯ごたえを残しつつアクもしっかり抜けていて、
成程、実際に料理しなれている人は
本を見なくても工程を大胆に省略できたりするんだなと納得できる。

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そんなわけで、今朝のメニューは洋風に見えてそこから
ワラビが入り込んでいる。
オムレツの具もハムと炒めたワラビだし、
コンソメ味のスープも細切りにしたニンジンや
ゴボウ、レタスなどと一緒にわらびが入っている。

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日曜は昼、夜と手巻き寿司ならぬ
オープンサンドパーティになった。
フィリングのメインが山菜なのが異色である。
まずはコキノシタの天ぷら、
ワラビのごまドレッシング和えと
からしマヨネーズ和えにベーコン炒め、
クレソンは生のものとベーコン炒め、
アク抜きが済んだイタドリもごま油で炒めたものが参加している。
更には常備菜のきゃらぶきまで。

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田舎暮らしの私には
馴染みのある名前ばかりだった。
でも、ここまで幅広い料理に
変身するなんて知らなかった。
勉強になったな~~



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