物心がついた頃、私の誕生日や兄弟の誕生日にはいつも決まって父が『テキ』を買って来てくれた。 私たち兄弟は皆、口の周りをケチャップだらけにしながら美味しく時には取り合いしながら食べた事を思い出す。 『テキ』とはポークチャップステーキを略した言い方で父が幼い子供たちにも解り易くした略称だった。 年に数回しか食べる事が出来なかったせいか普段の食事とは一線を画す特別な美味しい料理と言う感じがした。 父が記念日に買いに行ったお店は隣町にある都屋と言う小さな食堂だった。 店主は若いころ帝