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【開催レポート】海藻は食べる美容〜OSAJI 茂田正和さんに学ぶ、美肌をつくる海藻料理〜

2024年7月25日に、「海藻は食べる美容〜OSAJI 茂田正和さんに学ぶ、美肌をつくる海藻料理〜」の講義を開催しました。

この講義は、心身の美しさをつくる「食べる美容」を提唱している茂田さんを講師にお招きして、「美肌をつくる海藻料理」をつくっていただきながら、美容の観点から海藻の魅力を教えていただくイベントです。
また、今回は特別に、海藻の専門家集団であり全国各地で海藻の基礎研究・種苗生産・陸上/海面栽培、さらには料理開発まで一貫した事業を行っているチーム「シーベジタブル」さんに食材を提供していただきました。

茂田正和さん
音楽業界での技術職を経て、2002年から化粧品開発者として活動を開始。皮膚科学研究者の叔父に師事し、肌にやさしい化粧品づくりを追究する中で、健やかな美しさにとって五感からのアプローチも重要と実感。2017年にスキンケアブランド『OSAJI』を創立し、ブランドディレクターに就任。2022年に鎌倉で複合ショップ『enso』を開設し、初の著書『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)を出版。2023年に株式会社OSAJIの代表取締役に就任し、2024年に新著『食べる美容』(主婦と生活社)を出版。


美肌に必要な2ステップ

はじめに、茂田さんからこの講義のテーマである「海藻と美容」についてお話ししていただきました。

「透明感のある美肌は、角質層の水分量が十分にあってキメが整うことで生まれます。角質層を詳しく見ていくと、角質細胞とその間を埋め尽くしている細胞間脂質があります。細胞間脂質は水分を保持する重要な役割があり、この細胞間脂質の合成を促すのがマグネシウムです。本来は野菜にもマグネシウムが含まれるのですが、連作によって土が痩せてしまって近年はビタミンミネラルが不足しています。その点、今でも海はミネラルが豊富なので、海藻はミネラルの宝庫です。

また、美肌の観点から今回使う食材の説明もしていただきました。

「肌の保湿は2ステップです。①角質細胞の中に水分を抱き抱えることができる保湿剤(ヒューネクタント:ex.セラミド)を補うこと②その水分が外に逃げないようにクリーム(エモリエント:ex.セラミド/コレステロール/ワセリン/)でフタをすること。今回は、体の中でヒューネクタントを生み出してくれる海藻と、罪悪感は少ないが実は海産物の中でもコレステロールが高いタコ、合わせてオリーブオイルも使いながらエモリエントを補給する料理を作っていきたいと思います。」

美肌をつくる海藻料理

今回、茂田さんに直々に作っていただくお料理は以下の5品。それぞれのお料理のコツや、自宅でも簡単に真似できる応用も教えてくださいました。

・カジキマグロの低温調理  はばのりのソース
・水だこと海藻のマリネ
・海藻豆腐
・さきイカと海藻の若ひじきの炊き込みご飯
・甘酒寒天 スイカのソース

塩麹とはばのりのソース。
「日本人の体にはバターやラードといった固形の油が合わないように感じていて。普段の料理ではバターは使わず特別な日に使うようにしています。塩麹とレモンを合わせるとバターのような旨みとコクがあると発見したので今回は塩麹で代用します。それからお酒。料理の段階で海藻に合わせるのは日本酒の方が相性がいいと思っているので白ワインの代わりに日本酒を入れていきます」
フレンチの白ワインソースの考え方をベースにしつつ、日本人と海藻に合わせたオリジナルのレシピです。
アルコールを飛ばした日本酒にはばのりと塩麹を加えて作ったソース。「いい香り〜」と参加者の皆さんがおっしゃっていました。シーベジタブルのはばのりは香りがいいのですが、湯気によってより一層香りが立ちます。
常備しておくと中華屋和食など何にでも使える万能だし。挽肉を水に入れてから煮込むとアクを引かなくても透き通ったスープになります。ここに香味野菜を入れるととっても便利なスープの完成です。
カジキマグロは低温調理で。塩麹と合わせてジップロックに入れたら炊飯器の保温モードであとは待つだけ。「塩麹の旨みもあるし、待つ間に他の料理が作れるし簡単です。豚型ロースでもおいしいです」
水だこのマリネ。グレープフルーツ、ナンプラー、ディルで香りを組み立てています。特に海藻の香りとディルの香りは相性がいいそう。ナンプラーはいしるやしょっつる、鮎醤油でも◎。上に乗せたトサカノリはオイルでコーティング。オイルで磯香りを包んでおくことで口に入れた瞬間のタコの香りとぶつからないのだそうです。
甘酒を寒天で固めたものに、夏らしくスイカのスープをかけたデザート。美容のために必要なアミノ酸が豊富に詰まった総合美容ドリンク「甘酒」です。旬のスイカはシトルリンが豊富で、実は代謝が上がりにくいという夏に血流を良くする効果をもたらしてくれるのだそう。
HEGEの器で炊いたごはん。出汁を取るという手間を減らし、お米と一緒にわかひじきとさきイカと白醤油で炊いた旨みたっぷりの炊き込みご飯です。「海藻を入れて炊くのはおすすめ。ホタテ貝柱と黄ニラを入れた炊き込みご飯もめちゃくちゃ美味しいです」

シーベジタブルの海藻と料理

今回使用した海藻は、シーベジタブルさんにご提供いただきました。シーベジタブルさんは、海藻の養殖だけでなく、温暖化や食害などの要因で起きている磯焼けによって取れなくなっている海藻の種苗採取から研究者、新しい食材として多様な海藻食文化の可能性をプレゼンテーションする料理人といった生産から食卓まで一貫して行う専門家集団です。

シーベジタブルの乾燥みりん。

今回シーベジタブルの食材を初めて使ったという茂田さんですが、「めちゃくちゃおいしい。香りと歯応えが違うよね。子どもがあんまり海藻食べないけれど、試作でシーベジタブルの海藻を使ってみたらおいしいって言って食べてくれました」とおっしゃっていました。

火を入れると海藻の栄養が壊れるとかはあるんですか?という質問がありました。「海藻には加熱に弱い成分はあまりない。海藻はスープやお出汁で使うことが多く煮こぼさないので丸ごといただける。」と茂田さんはおっしゃっていました。

美容のためには頑張るよりも、楽しいのがいちばん

今回お米を炊くのに使ったHEGE。茂田さんが手掛けてらっしゃるプロダクトで、ワンハンドガストロノミーという考え方を掲げられています。

「家でひとりぼっちをなくそうっていうのがテーマにあって。誰かが犠牲になってご飯をつくるのではなく、テーブルの上でご飯を炊いたりワンパンパスタを作ったり。みんなでテーブルを囲んで湯気を見ながらお酒を飲むっていうのを提案したい」

アルミの鍋なので熱しやすく冷めやすいのが特徴。お湯を沸かすにもソルベを作るのにも使えます。茂田さんはご飯を炊いて鮨酢を入れてそのままテーブルに出して手巻き寿司をするのに重宝しているのだそうです。

美容というひとつの軸を持って、化粧品から料理まで幅広く活動されている茂田さん。美容のお話を教えていただけるとなると、こちらがストイックになってしまいそうでしたが、「大丈夫楽しければ。」という一言にスッと肩の力が抜けるような感覚がありました。

化粧品は一番最後の対症療法。肌を作っているのは毎日の食事。さらにその前提には健康な精神が大事だよねっていうのがある。美容のためのご飯だからとストイックに作ったり、苦手なものを食べたりするのは意味がない。ワイワイガヤガヤ楽しく作って、お酒も適量に楽しむこと。レシピ集も必ずお酒が映り込んでいる」

「タレントの千春さんに昔お世話になったんだけど、彼女はすごく肌が綺麗だった。その秘訣を聞いたところ『やっちゃいけないこととやらなきゃいけないことをなくすこと』と。タバコもお酒もしていて肌に悪そうだけど、これが美容の真髄かと思った。」と今の茂田さんの考えに至る背景もお話ししてくださいました。

美容と健康を日常にどう取り入れるか

郷土料理に海藻がある地域と、某化粧品メーカーが発表している美肌ランキングには連動性があるとも言われています。

「海女さんがあんなに紫外線の強いところで仕事をしているのに、シミになりにくいのは海に入っているからだと思う。海のミネラルは活性酸素を吸う力が強くて、肌が老化しにくい。海藻食文化が今も残っている男鹿半島では、50種類の海藻を操っているお母さんたちがいて、ちょっと海藻をとりに行ってくる、というのが日常にある。」

当たり前のようにある海藻の食文化や海に潜るという仕事ぶりが美肌を生んでいるというのがとても興味深かったです。

「日本人は農耕民族だから米を食べてきた。糖質は多いけれど日本食だけなら肥満にはならない。西洋食が混ざってきているから肥満になると言われていて、発酵食品を使ったものを食べることで肥満とか糖尿病が下がる論文も海外で出ている。オリーブオイルも日本人の食生活にはあまり合わないのではと思っているので、実はつくるのが得意なのはイタリアンだけど、それはハレの日の料理として考えている。なのでいかにケの日の料理を豊かにしていくかが大きなテーマ。米を炊きながら酒飲む会もいいじゃん、良質なカツオぶしを使って簡単においしく料理しようっていうのを提案したい」

コロナ期間中にいろんなことにチャレンジしていたという茂田さん。包丁とぎや寿司職人を極めたり、鰹節と同じ発想でごぼうを乳酸発酵をかけてからドライにする「野菜節」の商標をとったり、とにかく活動と興味関心の幅広さに驚くばかりです。

「モットーは公私混同」と笑ってお話しされる茂田さんがとても印象的でした。講義を通して海藻と美容の関係性はもちろん、美容の世界の奥深さを垣間見ることができました。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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