2024年11月22日から24日まで、おいしい未来研究所が運営する「おいしい学校」の講義として2泊3日のフードツーリズムを開催しました。
農家・漁師・猟師など、各地で暮らす方々が最も輝く瞬間を「ハレの瞬間」と捉え、現地の暮らしぶりを体験するのが趣旨のこの旅。この記事では、北東北の「ハレ」をテーマに体験したこと、学び・気づきをレポートします!
【DAY1】
12:00 阿仁根子集落に到着・昼食
集合場所からバスに乗って阿仁マタギの拠点・阿仁根子集落に到着です。ここでお世話になるのは船橋陽馬さんです。到着すると奥様の奈々さんがお昼ごはんを用意してくださっていました。山に向かう前に、まずはみんなで腹ごしらえ。
お献立は、ヤマドリの鍋とおむすび、山で採れたなめこのおひたし、がっこ(お漬物)。
ヤマドリの特徴について、「肉は白身で少しパサパサしているけれど出汁がとにかく美味しい。ぜひこの出汁を味わってください!」と船橋さん。
小林さんは「出汁で呑めます」とおっしゃっていました。
13:00 マタギの狩猟体験
昼食のあとは林道移動し、間近で猟を見学させていただきました。マタギにとって聖域とも言える山へ、狩猟の時期に山を案内していただけるのはまたとない機会です。
もちろん山での狩猟は適切な装備が必要なため、今回は山の手前の林道を歩きました。林道でもヤマドリなどに遭遇することはあるそう。
この日は残念ながら熊・鴨・キジ・ヤマドリなどの獲物を授かる場面を目にすることができませんでした。しかし、獲物が逃げてしまわないよう列になってひっそりと林道を進んだ時間と、陽馬さんが銃を放った一瞬の静寂は体感として残っています。
15:00 根子マタギコーヒーで休憩
陽馬さんは、マタギであり、本業はフォトグラファー。そしてのもうひとつの顔が焙煎所店主。根子集落で人の交流やお金を生むチャレンジとして「根子マタギコーヒー」という屋号で焙煎所を立ち上げています。
林道から戻ったところで、「根子マタギコーヒー」にお邪魔し、コーヒーを淹れていただき、おいしいコーヒーを片手にお話を伺いました。
17:00 後生掛温泉にチェックイン
1泊目のお宿は後生掛温泉へ。八幡平国立公園の中にあり、湯煙が立ち上がる野趣あふれるお宿です。
【DAY2】
11:00 小山田せんべい店で”テンポせんべい”を体験
南部地方は、米よりも穀物を主食とする食文化が発展しています。その背景にあるのが地理と気候。オホーツク海から吹く冷たい風が奥羽山脈にあたって滞留するため、夏の最高気温が20度を下回ることもあるうえ、雲ができやすく日照時間が短い。稲作には適さず、むしろ雑穀に適しています。
そんな南部地方の食文化のひとつが南部せんべい。この地域にはせんべい屋さんが多くあり、皆さんお気に入りのお店に買いに行かれるのです。最初のせんべい屋さんは小林さんおすすめの”テンポせんべい”が食べられる「小山田せんべい店」です。
11:30 南部町農林漁業体験実習館チェリウスに到着
ここからは、「南部どき」の根市大樹さん(@nanbudoki_smoke_coffee)が南部町の「ハレ」をコーディネート・アテンドしてくださいました。
11:45 菊巻き寿司調理体験・昼食
菊巻きずしは南部地方の農家のお祝い料理。今回は、南部町の名物お母さん・沼畑勝子さんに菊巻き寿司の作り方を教えていただきました。
14:00 法光寺
法光寺は、「けがち(飢饉)」や戦災時にまちの暮らしを救ったとされる南部町ではとても大切な寺院です。ここでは、楢山住職から館内のご案内と法光寺の歴史、南部町の暮らしへのかかわりを説明していただきました。
15:30 せんべいホッピング
南部町には、30年前まで町内に70軒、今でも18軒のせんべい屋さんがあります。根市さんが「南部町のせんべい文化の名残を感じられる場所」と言う平田せんべい店と柳窪せんべい店(おとなり同士です)を訪れました。移動中のバスでは、南部町の暮らしやせんべいについてのお話を伺いました。
16:00 産直チェリーセンターで休憩&お買い物
最後に寄り道したのは産直チェリーセンター。特産の梨やりんご、あんず、野菜、そして干し菊と南部せんべいも!南部町の産品がたくさんありました。
18:00 八戸中心市街地横丁めぐりスタート
八戸に移動し、次に体験するのは「漁師のハレ」。昭和3~40年代くらいまでは大漁で帰ってきた漁師さんがお金を片手に飲み歩く姿があったようです。そんな漁師町のハレの瞬間を支えてきた飲み屋が元気な街が八戸です。
八戸市のことを教えていただいたのは「八戸せんべい汁研究所(通称=汁゛研)」代表木村さん(@hachinohe_jiruken)。8つの横丁を案内していただきながら、郷土料理や海鮮料理など八戸の食文化を体験しました。
横丁めぐりの各コンテンツをご紹介します!
18:00 木村さんのアテンドによる街歩き①
八戸に来たならまずここに寄らなきゃという老舗バー「洋酒喫茶プリンス」。ご当地カクテル「八戸三社大祭応援カクテル」(1人1杯)で乾杯です! (ノンアルコールもあります)
18:40 木村さんのアテンドによる街歩き②
お台所ねねでは、「南部せんべいの天ぷら」(1人1切れ)を立ち食いしました!
19:05 木村さんのアテンドによる街歩き③
8つの横丁をすべて巡り、らぷらざ亭で宴会です!八戸せんべい汁やしめ鯖、いかのお刺身。そのほかにも八戸の美味しいものと美味しいお酒をいただきました。
【DAY3】
5:50 ロビー集合
館鼻岸壁朝市行きシャトルバスに乗車して館鼻岸壁朝市へ向かいます。バス停も朝から多くの人で行列ができていました。
6:11 館鼻岸壁朝市
館鼻岸壁朝市は、毎週日曜日のみ開催されている朝市。全長800mの会場に300店舗ほどが集まり、毎回2,3万人の参加者が訪れるそうです。まずはぐるっと見て回って、そのあとは自由にお買い物や朝食を楽しみましょう!
〜バスにて移動〜
八甲田山を経由して津軽地方へ向かいます。道中、南部地方と津軽地方の違いを地形で体感していただけます。
11:40 旧石戸谷家住宅到着・ご挨拶
弘前市では、津軽地方で江戸時代から受け継がれてきた食文化を研究し、伝承する活動を続けているお母さん集団、津軽あかつきの会(@akatsuki.tsugaru)の皆さんが迎えてくださいました。
12:00 祝言料理の昼食
今回、体験させていただくのは祝言料理。
「祝言」とは日本の古い婚礼のことで、農家の女性が最も輝くハレの日。祝言の料理とは、親戚や近隣の女性が総出で準備するお祝いの料理のことで、津軽地方では「嫁取り料理」と呼ばれています。( 昭和の祝言と津軽伝承料理についてはこちらから資料をご覧いただけます)
最後に
おいしい学校が開催する北東北ツアーも今回で3回目でした。毎回違う季節に、違うテーマで旅することによって同じエリアでも新鮮な発見がたくさんあります。
津軽あかつきの会のお料理を体験する前に、小林さんが「料理自体は普段と違って洒落っ気のあるものだけど、そこで使われる食材は旬のもの、津軽ならではのものです」とおっしゃっていたこと。ハレは特別なものであるけれどケとつながっていて、日常の積み重ねの上にあることを体験できました。
最後まで読んでいただきありがとうございます。おいしい学校では他にも様々な講義を開講しています。ぜひサイトもご覧ください!