オーガニック芋焼酎【Hi-Five】の開発
大石酒造のオーガニック芋焼酎【Hi-Five】
ここではオーガニック芋焼酎を開発するに至った経緯を書かせていただきます。
オーガニック芋焼酎【Hi-Five】につきましてはこちらのページをご覧ください。
オーガニックという選択肢
大石酒造で専務・取締役を務める大石恭介・晶子夫妻の前職は科学者で、デンマークの首都コペンハーゲンに10年ほど滞在し、コペンハーゲン大学の研究室で働いていました。
コペンハーゲンのスーパーマーケットには有機(オーガニック)食材が豊富にあり、ほとんどの品目で有機製品を気軽に購入することができました。
非有機製品との価格差も僅かなもので、日常的にオーガニック製品を選択することができました。
(詳しくは記事の下部「デンマークのオーガニック事情」をご覧ください)
帰国してみると、日本では有機食材は非有機と比較して高価格なものが多く、気軽に毎日手が伸びる商品であるとは言えない状況でした。
また「オーガニック」というと、身近なものというよりも、暮らしへの意識の高い人々が購入する特別なものというイメージがあるのではないかという印象を受けました。
そして日本でももっと気軽にオーガニック製品が手に入るようになったらいいな、という思いが芽生えました。
そこで自分たちの製造している酒類について調べてみると、2021年時点では、酒類は日本のオーガニック認証である有機JAS規格の対象ではなく、「有機JAS認証」を取得できない状況でした。
(*JAS認証は認められていなくても、各有機食品認証団体の”独自認証”である「有機加工酒類」を取得して、「有機」と表示することは可能でした。)
周囲には有機さつま芋を生産している農家さんも少なく、特に加工用となると自力では巡り合うことができませんでした。
実際に近隣の農家さん方からお話を伺うと、有機でお芋を作ることは不可能ではないが、実際に生産したとしても、有機認証であるJAS認証の取得や維持が難しく、無農薬栽培をしていても有機認証を取得していない農家さんもいらっしゃるというご意見も聞くことができました。
そのような状況があり、有機芋焼酎を作りたいという思いはありつつも、難しい道のりだと感じていました。
デンマークのオーガニック事情
ここで少しデンマークのオーガニック事情についてお話しします。
デンマークはオーガニック管理に関する国家主導のプログラムを導入した世界で初めての国です。
1987年、世界初となるオーガニック法を制定。
この時初めて国家が管理するオーガニック・ラベル、通称「Ø-ラベル」が導入されました。
「オーガニック」はデンマーク語の表記で「Økologisk」なので、この頭文字「Ø」をとって作成されたデザインです。このマークの認識率は98%を超えるという報告があります。
有機でない商品との価格差も日本ほど大きくありません。
政府が主導して有機農業を支援したり補助金等を出したり、国外に向けてデンマークの有機製品をアピールしていることや、一般市民からの需要に応えるよう各販売店それぞれが顧客獲得のため元の価格を低めに設定したり、定期的にオーガニック食品をセール価格で販売するなどの政府・民間双方の努力の結果だそうです。
野菜や果物だけでなく、肉や牛乳、チーズ、パン、サプリや洋服、化粧品まであらゆる製品の棚にオーガニックの商品が並んでいました。
オーガニック認証に対する消費者側のスタイルも様々です。
食品含め身の回りのものを、可能な限りオーガニック製品で揃える人。
子供のものはオーガニックを購入する人。
食品だけはオーガニックを選ぶ人。
気分次第で選んだり選ばなかったりする人。
セールの時だけオーガニックを買う人。
特に気にしない人。
いろいろな人がいますが、身近なところに常に有機か非有機どちらの商品を選ぶかの選択肢がありました。
日本から移住して間もない頃に驚いたのは、オーガニック製品を選ぶ理由が美容や健康ではなく、環境のため・子供たちの未来のためという意識を持つ人の多さでした。
「化学物質を体に取り込みたくないからオーガニック製品を選ぶ」のではなく、「より良い未来のためにオーガニック製品を選ぶ」という前向きなスタンスです。
衣類など、食品以外の製品にもオーガニックラベルが付けられていることを最初は不思議に思っていましたが、なるほどそういうことなのだなと納得しました。
そんな国で10年間過ごすうち、筆者自身もオーガニック製品の見方、考え方に変化があり、少しずつ関心が高まっていきました。
(なぜデンマーク国民がオーガニック製品への関心を高め、国家プロジェクトになるほどオーガニック市場が成長していったのか、さらに詳しい事情は次の記事をお待ちください)
酒類の有機JAS認証
話を戻しまして、日本でのオーガニック芋焼酎開発の難しさを感じていた中、政府から ”2022年10月から酒類がJASの対象になる” という発表がありました。
(参照:農林水産省ホームページ)
また時を同じくして、
「有機さつま芋を生産しているが、規格外の大きすぎる芋が出てしまう。この規格外のお芋を使って焼酎を作れませんか」
と楽天ファーム(楽天グループ)様からお声かけいただきました。
この二つが決め手となり、有機認証の取得、有機芋焼酎の開発・製造へと動き出しました。
鹿児島初 『有機JAS認証芋焼酎』*の誕生
偶然が重なり、原料を入手できる見込みがついた頃、大石酒造も有機JAS認証の製造場として無事に認証を取得。
具体的には【有機加工食品(酒類含む)】の鹿児島県内認証第1号となりました。(2023年7月25日認証)
いろいろな方の力をお借りしながら、サステナブルな取り組みにつなげられたことを、スタッフ一同とても嬉しく思っております。
オーガニック焼酎の製造
有機さつま芋は納入していただけることになりましたが、有機米を探すのも苦労がありました。
加工用の有機米がなかなか見つからず、こちらも多くの方にご協力いただき、製造に間に合うように納入していただき製造に至りました。
有機でも有機でなくても、農家さんに手間暇かけて育てていただいた原料を使わせていただくことに変わりはありません。
製造はいつもと同じように作業を進めていきます。
お米はとても香りの良い麹米となり、お芋は大きく立派なものばかりで、もろみの香りを確認する度にワクワクとした気持ちになりました。
完成した焼酎は焼き芋のようなほっこりとした香りの中に、ほんのりとお米の香り漂う新たな味わいになりました。
(続く)