場づくりに伴うチームの"もやり感"は、どう生まれてどう解消されるのか
チームで場をつくるとき、コミュニケーションのエラーや不足によって"モヤっとした思い"が各個人の中に溜まることがあります。
その"もやり"には、「売上が伸びない」「来店数が少ない」のようにわかりやすいものもあれば、「あの人にもっとこうしてほしい」「なんとなくぎくしゃくしている」など、言語化・数字化しずらいものも。
そこで今回は、ぼく自身の実体験をもとにして、場づくりに伴うチーム内のもやり感がどうやって生まれてどう解消されていくのかについて書いていきます。きっと、デイサービスの運営にも応用できるはず。
場づくりで生まれるもやり感の実体験を踏まえて
ぼくが働いているNINI inc.は、NINIROOM (ホステル / カフェ, 京都市) とTORIKKA (貸別荘 / レストラン, 淡路島) という2拠点を自社運営しています。
2拠点目であるTORIKKAができたのは、2023年秋ごろ。これまで顔の見える範囲で仕事を進めてきた小規模なチームから、遠隔地にチームが増える体制になりました。また、京都のNINIROOMでもカフェのリニューアルを行い、新たにシェフ1名がチームに参加。そのため、この半年の間にチームのメンバーは一気に倍に増えました。
できることがぐん!と増えた一方で、これまでは暗黙のうちにできていたコミュニケーションだけではお互いにモヤっとした思いが溜まってしまい、いい場づくりが難しいと感じることあります。
この経験から、チーム内に生じたもやり感を解消するための現時点でのアイデアを自分への備忘録として整理してみます。
もやり感の4つのフェーズ
結論からいうと「場づくりにおけるもやり感」には、生まれてから解消されるまでに4つのフェーズがあると考えています。
1つ目が、個人の中にもやりが蓄積している状態。2つ目が、チーム内で対話が起こりもやりが共有され始める段階。3つ目が、もやり解決のためのアクションをチームで手分けして起こす段階。そして4つ目が、もやりが晴れてきて新しいスタンダードが生まれている状態。
これをひとつずつクリアしていくことで、各個人の中に溜まっていたもやりが少しずつ晴れて、チームとして次のステージが見えてくるはずです。たぶん。
① もやり感が共有されず、各個人の中に溜まっている
一番最初のフェーズは、チームの各個人の中にもやり感が蓄積している状態。特にそれをメンバーに共有するわけではないけれど、なんとなく不安だったり、楽しくなかったり、イラッとしたり。そんな思いが個人の中に積み重なっていて居心地がわるい状態です。
チームとしてのパフォーマンスが上がりづらく、チーム内でのコミュニケーションに行き違いが生じやすくなったり、他責の思考回路に陥りやすいフェーズです。
このフェーズから抜け出せないと、外 ( = お客さんなど) に向くべき思考のベクトルが内 ( = チーム内) に向きやすくなってしまい、サービスの質が上がらないという負のループに入ります。
「あの人の言うことがコロコロ変わるから」「あの人にもっとこうしてほしいのに」というようなチーム内に対する思考のウェイトが大きい時は、このフェーズにいるのかもしれません。
② チーム内で対話が起こり、各個人のもやり感が共有される
もやりが一定まで溜まってくると、それがある時に表面に現れます。それが、限界で爆発する形で表出することもあれば、気遣い上手なメンバーが誰かのもやりをいち早く察知することも。
ここで大切なことは、まず各個人のもやり感をできるだけフラットな関係性の中で共有することです。それを否定したり、その場で解決しようとせずにまずはちゃんと聞くこと。この段階で、関係性に上下ができてしまう(誰かが誰かに指示をする形になってしまう)と結局、個人のもやり感は共有されることなく塗り隠されてしまい、気まずさや「なんか違うんだけどな感」が残ってしまいます。
もし特定のメンバーに対してもやり感を抱いている時、本人のいない場所でその人に対する思いを他の誰かと共有することは、できるだけ避けた方がいいと思います。時間がかかるばかりか、お互いの信頼関係にも影響します。
他のメンバーと、誰かに対して抱いているもやり感について話す時は、主題をその場にいない人物にすることは避けて、外部にベクトル(サービスの質やお客さんの体験など)を向けた上で話すようにすることが大切だと思います。
もし気になることがある場合は、もやり感が大きくなる前にできるだけ本人と直接話す(対面で難しい場合はテキストでも)ようにして、チーム全体で情報共有や話す場がほしいときは、その機会をつくるようにした方がいいと思います。
まずは、フラットにちゃんと相手の話を聞くこと。お互いの思いや考えていることがちゃんとわかってくると、それだけで、もやり感はかなりクリアになってきます。そして、このプロセスを経て解決するべき真の課題が見えてきます。溜まっていたもやりが吐き出され、チーム内に向いていたベクトルが外部に向かいだすことで、「パフォーマンスを上げるにはどんなアクションが必要か」という建設的な話を腹を割ってできるようになっていきます。
③ 手分けして、もやり解決のためのアクションを起こす
十分な対話の雰囲気が生まれたら、あとはメンバー同士で強みと弱みを補いあいながら、今できるベストのアクションを起こし、仮説検証を進めていきます。
すぐにうまくいくことは稀だとしても、お互いに信頼関係があればたとえアクションが失敗だとわかっても、次にやるべきことを前向きに話し合うことができます。
この時にも継続的な対話をこまめにしていくことで、課題に対するチームのベクトルが大きくずれないように軌道修正を重ねていきます。
フェーズ④ もやり感が晴れてきて、新しいスタンダードが生まれてくる
仮説検証を繰り返していくうちに、真の課題の解決の糸口が見えてきてます。この頃には、初期に個人の中に溜まっていたもやり感はだいぶ晴れて、新しくスタンダードな状態が生まれています。
といっても、場づくりは一度仕組みを作って終わりではなく、時間とともに運営するメンバーも変わり、継続的なアップデートがなければ淀んでしまうので、このプロセスを何度も繰り返しながら生まれ変わっていくんじゃないかと考えています。
立ち止まって話を聞くことが必要なのはなぜか
飲食店であれデイサービスであれ、場づくりをしているチーム内で生じるもやり感の大部分は、コミュニケーションの些細な行き違いによって生じるのではないかと思います。
その小さなコミュニケーションのささくれは、生じてすぐは傷口が閉じやすくても、しばらく時間が経ってしまう塞ぐのがとっても難しい。チーム内に対するもやり感や悩みが大きくなってしまうと、「よりよいサービスや体験をつくろう」という外に向けた発想が生まれてこない雰囲気が当たり前になってしまいます。その場で働くことが楽しいと感じられなくなり、事業としても沈んでいきます。
コミュニケーションの小さな傷口は、チームで場づくりをしていく過程で必ず生じるものなので、傷口の小さなうちにフラットな関係性の中で対話を重ね、ベクトルを外に向けていくことが大切なんじゃないかなと考えています。
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