Tomoko Oishi

大学院博士課程(文化人類学)。タイ東北部のゾウの村でフィールドワーク中。

Tomoko Oishi

大学院博士課程(文化人類学)。タイ東北部のゾウの村でフィールドワーク中。

マガジン

  • ゾウの村 ランブル日記

    • 21本

    ゾウの村の住人、Tomokoの記事。研究のこと、ゾウの村での調査、日々の暮らしのことなどについて書いた記事のマガジン。

  • スリン・ブリラムの失業ゾウ紹介

    • 70本

    タイ東北部スリン県・ブリラム県に暮らす失業ゾウたちを支援する記事を集めたマガジン。失業ゾウ実態調査のアンケートから得たデータをもとに、失業ゾウと生きるゾウ使いたちが運営するYouTubeチャンネルやFBページを紹介中。

最近の記事

ゾウの墓に木を植える

年末年始は調査先の倒れたゾウのことが気になって、休みなしで彼女の元へと向かった。 ホストマザーからは年末年始を家族と過ごせないくらい調査先の仕事が忙しいのかとぼやかれた。いつもならホストマザーの気持ちに配慮して「やっぱり行くのやめようかな」と言ってしまうところだが、今回はどうしてもそれが出来なかった。 もう何ヶ月もの間、治療中におやつをあげていた私に対する彼女の態度は、けっこう傲慢だ。 近づくと鼻を伸ばしてきて、私だと確認すると「さぁ、くれよ」と言わんばかりの顔で私を見てく

    • 見えないものに溢れた世界で

      明け方四時頃、向かいの家にオートマ車が止まる音で目が覚めた。 時間が時間なだけに、強盗かもしれないと思い耳を澄ませた。どうやら向かいの家の息子の友達だったようで、息子のバイクの音とともに車の音も遠ざかっていった。 ほっとして布団に潜り込んだ。 ガチャッ 私の部屋の下に位置するキッチンの裏口が強く引っ張られた音がした。 ホストマザーが起きるには早すぎるし、そもそも内側から鍵を開錠したとすれば静かに開けられるはずだ。 しばらくすると、我が家の犬が激しく吠え始めた。普段は家の敷

      • ゾウに触れる、輪郭が溶ける

        スリン象祭りに運営側として携わっている間に、調査先のゾウが倒れた。 博論執筆に向けた長期のフィールドワークを開始して、もう一年以上が経つ。その間に得た経験から言えば、自分の体重を支えることが出来なくなったゾウに残された時間は長くない。 だが、あれから約三週間。彼女はまだ生きている。いま私の目の前で息をしている。 それでも、日に日に死前臭が強くなっていく。内臓が徐々に機能しなくなりつつあるのだ。 身体の表面に出来た傷には、蠅がたかり、蛆虫が湧いている。それを、可能な限り生理

        • タイ東北部スリン県・ブリラム県の失業ゾウのこと

          タイには多くのゾウがいる。 人々とゾウのかかわりがどのようなもので、いかなる歴史を紡ぎ出してきたのかは、地域やエスニック集団ごとに大きく異なる。 例えば、林業に従事する南タイのゾウ、エレファント・キャンプで働く北タイのゾウ、観光地や故郷であるゾウの村で働く東北タイのゾウ、そして縮小する森林地帯で暮らす野生ゾウたち。それぞれがゾウ使いや近隣に暮らす住民などと多様な関係を築いている。 私が調査を行っているのは、東北部スリン県およびブリラム県の県境にある「ゾウの村」と呼ばれる地域

        ゾウの墓に木を植える

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