【往来堂・笈入のオススメ】その2『北海道犬旅サバイバル』著者サイン本
「サバイバル登山」とは、食料として生米と最低限の調味料だけをもち、猟銃でシカやイノシシを狩るか、イワナを捕まえて補給しながら進むなど、文明の利器をできるだけ使わず、自分の能力を最大限に使って山に挑む登山のことです。
著者の服部氏はそのやり方で様々な山に登ってきましたが、50歳を前にして自分の本当にやりたいことは何なのかと改めて考えます。そして人生の集大成として、50日間に及ぶ北海道縦断のサバイバル山旅に、愛犬ナツとともに挑みます。
鹿を撃ち、犬と共にそれを追いかける際の描写が幾度となく現れるのがとても印象的です。それと同じくらい私が面白いと思ったのが、サバイバル登山のルールを葛藤しながらも少し曲げるところ。
そもそも自然豊かな北海道とはいえ、旅のコースを人間の手が全く入っていない本当の自然だけに限るのは難しい。それほど人間の経済活動の広がり、浸透ぶりは相当なものです。ならば、貨幣を持たずに旅をすれば? 経済社会にアクセスする術を捨てれば、そこに人工物があったとしても自分にとっては荒野も同然。こう考えて著者はお金を持たずに出発します。旅が終わった後、北海道を発つ飛行機の便を確定するための電話をかけるためのテレホンカードを除いては。。。
最低限の装備と己の体力、知恵や状況判断能力、そして偶然までもを味方につけて生き延びる。冒険家の物語というのは、有限の能力・時間・持ち物を設定することで、生き残るために自らの能力が極限まで発揮される体験を記したものです。その態度に、生きているフィールド(荒野)は違うけれども、文明社会に生きる私も共感します。すべての人の能力・時間・持ち物も冒険家と同じように有限なのですから。
『北海道犬旅サバイバル』
服部文祥・著
みすず書房
旅から帰るとジャンクフードを猛烈に欲するところも面白い。お気に入りは湖池屋の「ポリンキー」だそうで。アイテムを絞ったスーパーだと置いてないでしょう、今勢いがあるのはYBCの「エアリアル」か。
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