観劇ゆる感想文 11/3『あの星にとどかない』
さて前記事の通り、新宿で『かわいいチャージ』を観劇の後、ダッシュで南千住へ移動。
くちびるに硫酸さんの『あの星にとどかない』がお目当て。
感想はこちらに書いたけど、今回はその補足をゆるゆるでお届け。
ダッシュしないと間に合わないと思ったからダッシュしたんだけど、そんな必要全然なかった。
たっぷり開場1時間前に到着。
とりあえず劇場付近をふらふら。
夕方の16時半にして、すでに商店街は店じまいの雰囲気。
でも、下町感がたまらない。
終演後の話だけど、帰り道で、オッサンが
「バカヤロー!どこいきやがった、あのネコ!!」
と叫びながら飛び出してきてビックリ。
魚でも盗られましたかね。
なんか、のどかと言えばのどかだよなぁと思いながら見ていたけど、ネコに危害を加えたら、その時は私が許さない。
私は人間よりも動物の味方です。
「劇場」と言っても実は住宅。
今回の公演はgekidanUさんのプロデュース公演なので彼らの本拠地であるアトリエ5-25-6、つまりは住宅での開催だった。
まぁ、プロデュース公演というよりはコラボ公演の方がニュアンスとしては近いのかな。
家公演とかって言っちゃうと、何となく色物感があるんだけど、実際はそんなことなくて、非常に緻密で計算された公演。
その魅力はgekidanUさんの『金星』でよく知っていたので、今回は安心してチケットを予約。
その時の感想はこちらをどうぞ。
それもさることながら『くちびるに硫酸』『あの星にとどかない』なんて、素晴らしく詩的な響きじゃないか。
もう、このタイトルだけで観劇に値すると個人的には思うレベル。
前記事でも書いたけれど、演劇の感想って時間を追うごとに変わっていくもの。
日を追うごとに理解が深まっていくから、それに応じて感想も変わってくるというか、厚みを増してくるんだけど、今回観劇させて頂いた、本作『あの星にとどかない』もやっぱりそう。
演劇って、映画やアニメのように、情景の描写って言うのは「舞台」という性質上、どうしても限界があるから、観る側の想像力に依存する部分が多かれ少なかれあって、それがまた魅力だと思うんだけど、本作の場合、観客にはかなり高い想像力を要求されていたと思う。
上演時間が60分と短いので、説明的なセリフが入る余地はなく、本編でも抽象的な表現が比較的多い。
そしてなにより本作は表現が制限された舞台どころか、ただの民家なのである。
リビングで繰り広げられる演劇にどこまで没入できるのか。
先に紹介させて頂いた『金星』は作品の舞台設定がそもそも「家のリビング」だったので、家公演でも違和感はない。
けれど本作で登場する場面は多岐に渡る。
これを家公演でどう料理するのかは、不安交じりの期待で拝見させて頂いたが、いや、もう素晴らしかった。
照明効果との合わせ技でもあるんだけど、もう気が付いたら、そこは病室であったり、草原であったり、研究室であったりするわけです。
観劇時は没入しすぎて、逆に気付かなかったけど、今にして冷静になって振り返ると、なんかほんとに魔法にかけられていたんだなという気になる。
だって、あそこ、ただのリビングなんだもん。
とにもかくにも照明の力が大きかったと思う。
昼間に観劇した『かわいいチャージ』の照明が「シャープ」だとすれば、本作の照明は「繊細」。
どちらが優れているとかいう話をしたいのではなくて、照明というものが、操る人によって、こんなにもその性質を変えるんだという驚き。
病室を模したベランダでの照明効果はもう圧巻の一言。
今、思い出すだけでも鳥肌が立つ。
貼り付けた感想文でも紹介させて頂いたけれど、gekidanUさんが本作のラストを太っ腹なことに公開してくださってるので、ぜひご覧になって。
私の感想文なんか読まなくてもいいから(でも読んでくれた方が嬉しい)、このtweetは観てほしい。
正直、これだけだと全然魅力は伝わらないんだけど、これね、現場で観るとホントすごいの。マジで。
最期の花瓶にライトが当たるシーンなんか、もう身悶えしちゃう美しさ。
素晴らしすぎましたよ、ホント。
そんな素晴らしいバックアップがある中で、脚本も素晴らしいわけだからそれは名作になるに決まってる。
先にも触れたように本作では高い想像力を要求される。
なので、終演後は、正直、理解しきれなかった部分も多かった。
けれど、感想を書いたり、日常を送る中で、少しずつ物語が補完されていき、今の時点で私なりにそこそこ理解が進んだと思っているんだけど、もうなんか色々思い出すだけで、泣けてくる。
あぁ、そうか、そういうことだったのか。
そういう気付きがたくさんある。
「大人のための60分絵本」とは言い得て妙だと思う。
そう、まさしくこれは絵本だ。
だからこそ美しい。
初演を拝見していないので、何とも言えないところだけれど、gekidanUさんとくちびるに硫酸さんが出会うことで、この作品は、また一段とその美しさを増したのではないかという気がしている。
ライブで観る事こそが醍醐味の演劇ではあるけれど、本作は特に、いや、絶対にライブで観るべき作品だと思った。
疲れたけど、はしごしたかいのある作品でした。
観劇出来てホントに良かった。
そういえばgekidanUさんのヒガシナオキさんにようやくご挨拶させて頂けた。またお邪魔させて頂きます~。
劇団の皆様、関係者の皆様、役者の皆様。
素晴らしい演劇をありがとうございました!
帰りは劇場近くの光月軒さんで腹ごしらえしてから帰宅。
おいしかったです(料理の写真は下手なので載せない)。