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人生で一番ペンギンに近づいた話
前職の時代の話。当時私は広島営業所勤務であり、担当エリアは鳥取県と岡山県北部だった。
毎週二泊三日の出張が必要で、火曜日〜木曜日をそれに充てる事が大半だった。
当然の事ながら、移動の中心は高速道路であり中国道を使う事が多かった。
その日もいつも通り広島から鳥取県に鼻歌混じり(本当は熱唱)で高速を走っていた。
県北のとあるインターを通過してすぐに事態は急変した。
とても強い便意の波が来たのである。書き添えておくと私は酷い便秘体質で毎日コーラックを服用しているのだが、稀に予期せぬタイミングで薬効が発揮される事がある。
その薬効がインター通過後に来たのである。
コーラックの波をご存知の向きもお有りだろうが、説明しておくと、とても強く激しい波である。
我慢すると身体全体がマナーモードくらい震える。
全身マナーモードでアクセルを踏むわけだが、インターから次のインター(もしくはSA)までは50kmほどある事がわかった。
法を犯してフルスロットルで走っても20分はかかる。
「無理やん」
呟いてみる。
まず思考した結果、恐らくは便意の初期段階で発生したと思われるガスを抜く事が最善と思われた。
そのガスが内側からガンガンと扉に右ストレートを放ってきているのだ。
意を決して(細心の注意を払い)下腹部の力をソッと抜いた。
結果としては失敗だった。リカバリ不能の失敗である。
明らかに気体ではない、ソリッドな感覚。やむなく空気椅子状態で踵と背もたれで体勢を維持して運転を継続する。
力尽きて着座した瞬間に人生は終わるのだから。
人生を賭けた空気椅子のまま、なんとかインターに到達し高速を降りる。幸いボクサータイプのアンダーウェアだったので、私の産んだ卵が落ちる事だけは回避できる。
まず最寄りのコンビニに立ち寄る。もちろん歩き方は、ほぼペンギンだ。ペンギン以外の歩き方は不可だ。
おもむろにアンダーウェアを買う。ここでそのままトイレに入りたかったが、パンツを買って即トイレに入るペンギンが居たら皆さんはどう思うだろうか。
想像しただけで怪しすぎるので、パンツだけ購入して退店。別のコンビニに行き、とりあえず衣装をチェンジした。ペンギン卒業の瞬間である。
その後は軽やかにフリスクなどを購入して、爽やかなサラリーマン風にレジを済ませた。
人生、どんな悲劇があっても決して諦めないで欲しいと言うお話。