石油製品の品質規格(JET燃料編)
初めに
前回はガソリンの品質規格について説明させて頂きました。(お時間が有れば読んで頂けたら幸いです。)
今回はJET燃料についての解説をしようと思います。
JET燃料については普通に生活をしていたら自分で扱う事がほぼないであろう燃料かと思います。
一方でコロナ禍の改善で旅行がある程度できるようになって来た事から、旅客機に乗る事も多くなる事から知らず知らずに触れる機会もあるのではないでしょうか。
また、JET燃料は脱炭素のご時世の中でも、非常にホットな燃料の一つとなっています。
脱炭素の事を調べられている方で有ればSAF(Sustainable aviation fuel)と言う言葉を聞いた事があるのではないかと思います。これは和訳では「持続可能な航空燃料」であり、まさにSDG’sを目的とした燃料になります。
SAFについてはまた別の機会に説明をしようと思っています。
ちなみにSAFの規格はASTM規格にてAnnex1~Annex7までの7種類の製造法と、規格が定められています。
長くなりましたが本編に入ろうと思います。
•JET燃料の品質規格
JET燃料の種類について
実はJET燃料にはガソリン以上に多くの種類の規格があります。
民需用の規格としては
JET-A1(1号),JET-A(2号),JET-B(3号)の三種類があります。
日本国内ではほぼ作られていませんが、海外の軍用規格として
JP-1 ~ JP-8,JPTDの9種類があります。
軍用規格については古い物もあり、現代では作られていない物も多かったり、JP-6,JP-7やJPTSの様に特定の軍用機専用規格があるなど、紹介する意味の薄い物が多いため、割愛させていただきます。
(JPTSに至っては製造している製油所が米国の2ヶ所のみと、正直わからない事が多く知見の外にあります。)
品質規格項目について
JET燃料の品質規格項目としては
全酸価、芳香族分、メルカプタン分、硫黄分、蒸留性状、引火点、密度、蒸気圧、析出点、動粘度、真発熱量、燃焼特性、銅板腐食、実在ガム、水溶解度
以上の17項目があります。
全て紹介するには多いので今回は、この中でわかりやすい、析出点と引火点を紹介いたします。
JET-A1(1号),JET-A(2号),JET-B(3号)
現在国内の民間機に使用されている燃料はほぼJET-A1規格の燃料になります。
JET-A規格については現在ではほぼ生産されておりませんので、JET-A1とJET-Bの相違点を中心にお話ししたいと思います。
JET-A1,JET-AとJET-Bは組成(混合される油)が大きく異なります。
JET-A1,JET-Aは一般的にケロシン系と言われており、灯油の成分が中心基材となっており、比較的扱い安い燃料となっています。
それに対してJET-Bは一般にワイドカット系と呼ばれておりナフサ留分とケロシン留分の混合品となっていて、ケロシン系に比べて低温性状がよくなりますが、引火点が低く扱いにくい物となっています。
JET-Bは現在では北極圏などの空港で使われるほか、国内では戦闘機燃料としても使用されています。(最近では製造する拠点も減って来ています)
•析出点
JAT燃料の規格のなかで非常に重要な項目として、析出点という項目があります。
析出点を簡単に説明すると、JET燃料内で凝固点の高い物質が凍り始める温度と考えて頂けてればわかりやすいと思います。
JET-A1ではこの析出点が-47℃以下と定められており、JET-Aでは-40℃以下、最も低いJET-Bでは-50℃以下となっています。
なぜ、こんなにも低い温度になっているかと言えば、航空機の飛行する高度が非常に高い事から、外気温が非常に低い環境で使用されます、そのため析出点が高い場合、燃料が結晶化してしまい、エンジントラブルの原因となる可能性があるためです。
燃料が析出してしまうと、供給ノズルで目詰まりを起こしてしまい燃料をタービンへ供給する事が出来なくなってしまいます。
そのため非常にケアの必要な性状となっています。
(上空でエンジントラブルは考えたくないですよね)
析出点を調整するには、添加剤の添加や、出来るだけ軽い(密度の低い)性状の油で作り込む必要が有ります。(ただし引火点が低くなるため難しい)
•引火点
引火点はその名の通り、何度で引火するのかと言う指標になります。
燃料と言えば直ぐに燃えると言うイメージがあると思いますが、実は以外と燃えない燃料も有ります。
C重油では引火点が70℃なので、生火を近づけてもなかなか燃えません、逆にガソリンでは引火点は氷点下なのであっという間に燃焼します。
イラストのように引火するには、燃料が気体(蒸気)となり空気と混合される必要があります。
JET-A1,JET-Aではこの引火点規格が37℃となっており、ガソリンに比べて非常に高い温度となっています。
一方でJET-Bではナフサ留分が混合されているため引火点は氷点下(ガソリンと同様)となっており、静電気などで容易に引火点してしまいうため、非常にハンドリング性が悪い事がわかります。
JET-Bは極低温地域での使用や、高性能なJETエンジンでの使用を前提としているため、JET-A1やJET-Aに比べ、扱いにくい高性能となっている事が分かるかと思います。
最後に
JET燃料については、軍用規格と民間規格が入り乱れており、全てを解説するには非常に重たい文章になるため、完結にわかりやすい所だけをピックアップさせていただき、解説を行いました。
そのためプアになっている部分も多いと思いますので、知りたい項目などが有れば、コメントなどを頂ければと思います。
それでは、次回もよろしくお願いしますねぇ
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