【無料公開記事】災害時にPRアカウントは何をするべきか? Twitter運用の防災マニュアルを考える
こんにちは。おいでよ上田です!
先日すべての解説を書き終えた「Twitter運用戦略がひと目で分かるシート」ですが、今回は番外編・災害時にPRアカウントは何をするべきなのか?というお話をしていきます。
本編はこちらから(noteマガジン)👇
日本にいる限り災害からは逃れられない
日本は災害が起こる国です。
体感で、とかではなく、構造上災害が起こりやすい場所にある国なのです。
世界中の約2割の地震が日本で起こっていますし
ご存知の通り、台風の通り道にもなっています。
地震、台風いずれにしても日本は構造上たいへん発生頻度が高く、また周囲を海に囲まれている島国のため、津波の被害ももちろんそこに加わります。
わたしが最近かなり懸念している南海トラフ巨大地震も、この30年以内に発生する確率は70~80%、地震の規模は東日本大震災クラスとされていて、これはまもなくほぼ確実に巨大地震が来ると言っているのと同義だと考えています。(→南海トラフ巨大地震へのそなえ|知りたい!地震へのそなえ|国土交通省)
わたしはおいでよ上田も含めてSNSでの発信をし始めてから、東日本大震災、新型コロナウィルスの流行をはじめ、社会的に影響の大きい事件など様々な非常事態を経験してきました。
その時SNS上でどのように振る舞ったのか、どう振る舞ったら良かったのか、今後そういった事が起こった場合どうしたら良いのかなどをこの記事で考えていきます。
今後かなり高い確率で起こる災害をはじめ、自然災害以外の非常事態などが発生した時も参考になるはずです。
起こりうる非常事態と具体例
まずは起こりうる非常事態と、その影響でSNS上でどういった影響があるのかを考えていきます。
非常事態を大きく分類すると2種類に分けられます。
自然災害:地震・津波・台風・大雨・洪水・疫病など
人間が原因で起こるもの:テロ・戦争・大量殺人事件など
非常事態というとやはり自然災害を思い浮かべる方が多いと思いますが、SNS等での影響を考えた時、人間が原因で起こるものも想定しています。
おいでよ上田(と中の人)が経験してきたもの
最も古い記憶は2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件です。この頃はまだTwitterもなく、従来型携帯電話(ガラケー)が普及し始めた頃だったと記憶しています。
幸いというべきか、この時代はまだインターネットでの交流は限られた人しかできなかったため、オンラインでの大きな混乱は表面化していませんでした。
国際情勢は日々変化していますし、国内でもオウム真理教によるテロ事件などの前例もあります。国外・国内に限らずこういったテロ事件が今後起こらないとも限りません。
そして社会的に大きい影響があった事件は2008年、秋葉原通り魔事件です。いわゆるインセルによる事件が日本で表面化してきた特徴的な事件だったと思います。
当時はTwitterが日本でサービスを開始した直後で、ユーザーも限られていたためオンラインで大きな騒動にはなりませんでした。
しかしまだ小さなコミュニティであったため、個人情報の保護などの観点はまだまだ甘く、そういった部分では問題があったともいえます。
インセル問題はこのときだけでなく、最近でも京王線ジョーカー事件など状況が似通った事件が幾度か起こっているため、今後も同様の事件が起こる可能性は大いにあります。
最も大きいターニングポイントとなったのは東日本大震災、2011年3月のことです。
当時TwitterにはBOTサービスができており、中の人は趣味のBOTを運営管理していました。そのBOTは有名ブラックジョークのセリフをひたすらつぶやくもので、いわゆる当時の「震災被害に遭った人もいるのにこんなセリフを発信しているなんて不謹慎だ」と主張する、いわゆる「不謹慎厨」の標的になってしまったのでした。
ちなみに昭和から平成になった際の昭和天皇崩御のときも、宴会や楽しいことをする人に対して「不謹慎だ」と主張する人が少なからずいたようです。
インターネットがあるかどうかにかかわらず、多くの日本人が共通して心を痛める事象があった時、こういった現象が起こることがわかります。
こういったいわゆる「不謹慎狩り」はインターネットによって多様な価値観を持つ人が交流できるようになったため、より慎重な対応が必要になっていると感じます。
そして令和元年台風19号。わたしの地元である長野県上田市でもローカル線・上田電鉄別所線の赤いトラス橋が落ち、大変強い印象を残しました。このときは中の人もおいでよ上田を運営して3年目で、何を発信して何を発信しないかを非常に悩み、混乱したのを覚えています。
また最近でも新型コロナウィルスやロシアウクライナ問題など、現在進行系で起こっている非常事態もあり、ここは多くの方が実際にSNSでの混乱を肌で感じていることでしょう。
冒頭でも説明した通り日本にいる限りこうした自然災害は必ず起こりますし、東日本大震災級の災害もすぐそこに迫っているのが現実です。
その他人為的に起こされる災害やテロ、事件など社会的に大きな影響を及ぼすものも、今後起こる可能性が「ない」とは言えないということがわかっていただけたかと思います。
普段から非常事態を前提として備えておこう
こういった非常事態に対して最も有効なのは備えておくことです。
学校では定期的に避難訓練をしますし、普段から非常持出袋を用意したりローリングストックを…など言われているのと同じで、情報発信をする人もその時に備えて何をするべきかシミュレーションしておくのが良いでしょう。
わたしがおいでよ上田として具体的に普段から行っているのは以下のようなことです。
非常時に信頼できるアカウントを見やすいように整理しておく→【Twitter「災害関係」リストの整備】
定期的に上記「災害関係」リストの存在をツイート
上田市の災害メールを複数アドレスで受け取れるように設定しておく
災害アプリ【NERV防災・Yahoo!防災速報】をインストール、設定しておく
上田市内のハザードマップを定期的にダウンロードしておく
社会情勢や災害情報に関心を持ち、節目の際に自分の災害意識を確認する
普段から信頼できる近隣アカウントと交流し、情報交換できるようにしておく(最終的に非常時に頼りになるのは人のつながりです)
非常事態が起こってしまったら
ここからは、実際に非常事態が起こってしまった時にPRアカウントを運営している人が何をするべきなのか、という視点で考えていきます。
Twitterでの運営を前提としていますが、他のSNSでも応用できる考え方になっていますので参考にしていただけたらと思います。
1,自分の身の安全を確保する
何はともあれ、運営しているあなたの身の安全が一番です。
少しでも自分自身に危険が及ぶ可能性がある場合は信頼できるメディアから情報収集を行い、適切な行動を取りましょう。
※非常時の情報収集はテレビ、ラジオ、行政の公式メディア、SNSなど複数の情報源から受け取るのが鉄則です。
ここは発信をしている・していないに関わらず、くれぐれも普段から備えておきましょう。
2,一切の発信を止める
PRアカウントのなかには、いわゆるBOTと呼ばれる自動配信でツイートしているものもあります。
わたしが災害とSNSの関係を強く意識したのがこれだったのは既にお話したとおりです。
例えば過去の私のようなブラックジョークでなくても、非常事態になったときはどの発信が炎上につながるかわかりません。
今やインターネットは本当に様々な視点を持った人が使っていますので、どんな角度から「こんな時にこんな事を発信するなんて!」と指摘されるか全く予測ができません。そのため、BOTでなくてもとりあえず一切の発信を止めます。
また、非常時は情報収集ツールとしてSNSが使われることが多くなってきたため、必要な情報にたどり着きたい人のノイズを減らすという意味でも有効です。
3,速報系ツイートはリツイートしすぎない
何か非常事態が起こった時、信頼できるアカウントからの発信ももちろん「こんな被害があります」「拡散お願いします」などの緊急性が高い(と思われる)ツイートが増えます。
まず、ニュースや速報系の信頼できるアカウントの速報ツイートでもひんぱんにリツイートしないようにしましょう。
そもそもの話として、事業のPRをするためのアカウントの読者は速報をあなたのアカウントに期待していない事が多く、多くの読者は非常時に信頼できる別のアカウントをフォローしている可能性が高いからです。
フォロワー数が4桁を超えてくると読者からどういった情報が求められているかが肌感覚でわかってくる場合が多いのですが、もし「自分のアカウントはそういった情報を求められている」と感じる場合はこの限りではありません。
また、公式マークがついていないアカウントの「拡散希望」系のツイートはむやみに拡散してはいけません。
非常時は特にデマが増えますし、あなた自身も混乱しているであろう状況の中で「デマかどうか」を冷静に判断するのは困難です。
もし既に広く拡散されているものであっても、万が一それがデマであった場合、あなた自身がデマをさらに広げてしまう可能性があります。
非常時でなくても、基本的にリツイートが多いと読者は鬱陶しく感じることが多いものです。
特に非常時は精度の高い情報が必要な時であり、そういった時に余計なものを見せられるのは一分一秒を争う人にとっては邪魔なものでしかありません。情報拡散はくれぐれも慎重に行うのが良いでしょう。
4,意見を表明しない
非常時になると、意見の表明をしたくなるものです。
新型コロナウィルスの初期の頃はこの傾向がかなり強く、わたしもこれに関しては反省の意味を込めて書いています。
新型コロナウィルスはご存知のとおり「新型」であり、まん延が始まった当初は誰も専門家がおらず、政府・医療関係者も詳細不明なまま対応をしている状況でした。
正体がわからない物は心理的に非常に不安を煽ります。そのため、他人を攻撃したり誰かを悪者にしたりしてしまう心理が働きます。これは人間である以上仕方のないことです。
新型コロナウィルス禍では、マスクをするかどうか、ワクチンを打つかどうか、外食するかどうかなども各個人での価値観の開きが出たため、程度は様々ですが各意見の対立のような状況になっていると感じる方も多いのではないでしょうか。
また政治・医療関係者・他国など、何かの責任と思いたくなるのは仕方のないことです(人間は「わからないもの」の原因を「何かが悪い」と思うことで不安感を解消させたいという心理があります)。
しかし、誰かを悪者にしたところで状況が良くなるわけでもありませんし、それを発信してもあなたの事業が得することはありません。
考えたり思うことは仕方のないことですが、発信するのはやめましょう。
もしどうしてもそういった発言をする必要があるなら「〇〇が悪い」という他人を使った表現ではなく「私はこうしている」と主語を自分にし、ポジティブな書き方にすることを心がけましょう。
主語を大きくしないというのは、普段から気をつけたいことでもあります。
5,自分のアカウントだからできることを考える
発信を止めたら、「読者にとって自分が今どんな発信が求められているのか」を考える時間を作りましょう。
誰でもできることをやるのではなく、あなただからできることがあるはずです。
非常時には様々な支援が必要になります。
そのなかで「自分(自社)だからできることは何か」を考え、発信していくのを心がけていきたいものです。
具体例を令和元年台風19号で印象的だったものを引用でご紹介します。
他にもこの時、不安な日を少しでも明るく過ごすためにTwitterでゆるいイベントを行ったり、癒し系の画像をツイートしたり、大きな社屋を持っている会社が避難所として開放していたり…などがありました。
またPRアカウントが非常時にどれだけ意味のある行動をできるかを周囲は見ています。
非常時だからこそ何ができるかを普段から考えておくことは、PRすべき事業にとってもプラスになることは言うまでもありません。
運営者の心を大切に
ここまで「何をするか、しないか」という話をしてきましたが、最も大切なことは運営者の安全・安心です。
物理的な安全を確保することはもちろん、非常時は心理的にも過剰なストレスがかかります。
わたしも台風の際は自分の身の安全が確保できていたからこそ多くの発信ができていましたし、また「これ以上は駄目だ」と感じたときはなるべくSNSから離れて休息の時間をとるようにしていました。
PRをする・しないに関わらず、普段からの備えを十分に行うのは重要です。
そのためにも普段から災害や社会情勢にも興味を持ち、非常事態が起こった際に適切に行動できるようにしておきたいものです。
参考資料
令和元年台風19号通過の際のおいでよ上田Twitterログ他。
当時の混乱ぶりや後日の意見交換のようすなどがわかります。
おすすめ動画:
日本における地震について、かなりわかりやすく紹介されています。前後編で少し長めですが、目を通しておくと災害に対しての意識が変わるはずです。