【デイケアのお風呂場から】専門職の「脅し」
「酸素をつけなきゃ入れませんよ」
100才目前のアノ人は、
息切れする時や運動・お風呂の時には酸素のチューブを鼻につけるように、お医者さんに言われてた。
アノ人は、
「そんなのつけたくない。苦しくてもいいからいらない」と言う。
「酸素つけなきゃ入れませんよ」
この言葉を私は、医療職をしてた頃はなんとも思わず言っていた。
当たり前のこととして。
「正しい」こととして。
でも、
お風呂場の介護職になり3年、
「酸素つけなきゃ入れませんよ」が
「お風呂に入りたくば、酸素をつけろ」
と、脅しに聞こえるようになった。
そしてそれは、私だけじゃなかった。共に働く介護職の何人もから、聞こえてきていた
「あの言い方は、脅しでは?」
理学療法士としての私は、呼吸器が専門。お医者さんの言う意味は、よくよくわかる。
「治療の場」である病院なら、守るべき。
「生き永らえる」ためなら、守るべき。
でもおうちは「生活の場」。
長いお付き合いで元気な頃からアノ人を見てくると、衰え弱ってきたことを痛感する。
そして思う。
アノ人は、
あと何回お風呂に入れるだろうか、と。
限られたお風呂を入るかどうか決めるのは、専門職なの?
「死」を避けるべきものとだけ思っていた医療職の頃には、
できるだけ永らえることが良いことだと思ってた頃には、考えなかった。
その人の命はその人のもの、だと。
「酸素をつけなきゃ入れませんよ」と言った私は、
その人の死に向き合ってはいなかった。
怖くて向き合いたくなかったのが、本音だった。