コンテンツビジネスも変わるけど
クリエイターズという単語に惹かれた、わけではないものの少し自分語りを兼ねて。とはいえ、どこから言ったもんか・・・#cakesコンテスト2020
おじさん、別に名乗らないが昔は本名でgoogle検索20万以上ヒットしたことがある。何をしたのかと言うと、別段珍しいわけではないけど紙の雑誌に連載を持っていたり、書籍を書いたりしていた。当時日本に上陸したてのアマゾンを筆頭に書籍の通販などがヒット数を底上げしてくれていわけだ。書いていた内容は2000年ぐらいから一般的になったパソコンの自作やソフトウェア関連。ソフトウェアというと広いが雑誌ではソフトウェア全般でQ&Aを書いたりもしたが、書籍はDTM関連ばかり書いていた。そのおかげで今でも仲良くしてくれているミュージシャン連中とつながったりしたので、大事な仕事だった。
元々、アメリカに留学していたこともありソフトウェアのローカライズやら営業やらを仕事として選んでいた。そこで知り合った雑誌の編集部の人のおかげで売文稼業に。当時はまだ紙の媒体文化が残っていたし輪転機という巨大なローラーを見せられたりで、今のライターとはかなり違う教育を受けられたことは幸せだった。おかげで、web連載などをやらせてもらった時もギャラが高いにもかかわらず何年にもわたって好きにさせてもらった。webライターが当たり前の時代になると、紙の教育というものは貴重になるのだろう。
文字数を増やすだけなら素人でもできる。同じ内容を段組みに合わせて○文字以内にまとめるのがプロの腕だ。
この「削る技術」は人生において非常に役に立つことになる。
その後は縁があって映像の仕事へ。
スタジオも持っていた会社だったこともあり、結果としてアニメーションの制作から実写制作、PVの編集などクリエイティブに関わることばかり延々やっていた。今思えば音の仕事はライターの頃もやっていたとはいえ、機材に詳しくなったのは明らかにこの頃。暇な時はただただスタジオにいたし、役者の人たちと積極的に話し込むようにもなった。今でも当時の人たちとはつながっているし、一緒に仕事をすることもある。副業的なやつでロンドンオリンピックの凱旋記者会見にカメラ担いで取材に行ったこともあるが、スタジオで遊んでいた経験が買われてだった。思い出深いのはトイレの前で当時未成年で最年少だった石川佳純選手と、トイレの前でぶち当たってひたすらに謝られた記憶。あれ以来、卓球は詳しくないけど応援している。
映像に関してもプロの仕事というものは膨大な知識と素材を用意して、そこから必要なものだけをひたすらに抜粋する作業と言える。つまり、コア以外をいかに削るか、いかに必要な無駄を効果的に使うかが問われる。クリエイティブの根幹は捨てる技術だな、とこの頃から自覚し始めたと言える。
今何をしているかというと、芸能事務所の立ち上げに関わり、ゲーム会社で音響の責任者をやっている。ちょっと前まではゲームのディレクターもやっていたけど、若いのに譲ったというか、音響一本にしてもらった。
ゲーム制作に関しては簡単に説明すると「クリエイティブの中で最も様々な業種が必要となるジャンル」といっていい。だからこそ面白いし、人が育たない。
ゲームを作ろうと思うと、イラスト、UIデザイン、SEやBGM、声、クライアントプログラム、通信関連プログラムなどなど、様々なプロと仕事をすることになる。こんな人たちとのやりとり、新卒の子供たちにできるわけがないし、独自の風習がある職種ばかりなのでマニュアル化も基本できない。ある程度全ての作業を知っている人間が指示を出さないかぎり、動きが破綻してしまう。なので、いろんな人と関わるので猛烈に楽しい仕事ながら、できる人間にのみ仕事が集中する。3つのコンテンツ同時進行は流石に死にかけた。その結果、若いのに経験をさせてヘルプで入ろうというわけで、音響一本に絞った。楽したつもりが社内のコンテンツ全ての音響責任者になってしまったので、常に何をしているのかわからない状況だったりする。これは今思うと明確に失敗だった。
芸能事務所の方で言うと、シンプルに言うと声優を抱えた音響制作事務所。関東平野に百以上の同業他社があるので、さしあたって珍しい仕事ではない。ただ、役者に対しての教育もあれば、クライアントとしてお金と仕事を分配することもある。本当は朝から晩までProtools触って遊んでいたいものの、悲しいかなそれが許される立場にはない。スタジオ持ちなので、ずっと遊んでいるっちゃ遊んでるけどね。
ツイッターなどで声優志望と検索するとものすごい数がヒットするぐらい声優という職業は憧れの職業のようだ。現実を昔から見てきている人間からすれば、不思議に思うぐらいではある。他人の求める誰かになりきる。これ、普通の精神では続けられない。誰だって自己顕示欲というものはあり、それが強いからこそ役者なんて堅気じゃない職業を選ぶのだから。なのに、仕事内容は自己顕示欲を消す・削りきること。職業としての矛盾があるから面白いとも言えるし、誤解されて憧れを持たれる部分でもある。
さらに技術職でもある。
技術がないとマイクという繊細な機械の前で行動することなどできないし、音というこれまた繊細な売り物を完成させることなどできない。専門学校や養成所に通っている声優志望の子たちが思っている以上に技術の占める割合が高いのだ。
とはいえ、新人の採用で技術を重要視するってわけでもないのが難しいところ。
自分は役者ではないので演技以外になるが、技術的な部分や聞く人の意識などに関してはワークショップで教えている。noteでも一部だけだが有料公開している。別に買ってもらいたいってよりも、地方の人たちにも情報を!という地方出身の田舎者の義務感からであり、有料で教えた内容をテキストだけだからと無料にはできないってだけだったりする。ただ、それでも購入してくれる人がいて、役に立ったと言ってもらえてることを考えると、特殊な技術を教えているのだろう、とは老眼鏡片手に思っている。ちなみに面倒なので主催はしていない。どこかの事務所のワークショップや専門学校の授業、役者たちが集まっての自主練などに、講師として呼ばれたときだけ教えている。
作品の作り方、というのがこのコンテストの着地なんだろうが、おじさんになった自分は前述の通り教える側であり、コンテンツ作るとか関わるってものにたいしての説明係。もちろん今でもエンジニアもやるしディレクションもやるけど、積極的にクリエイティブを作るって立ち位置からは、少しだけ横にずれている。つまり、コンテスト参加基準を満たしているのかどうか疑わしい。ただ、他の人のテキストを読んで触発された思い出話であり、一人のおじさんの成り立ちでしかない。ただ、それでいても、なんらかの役に立つかもしれないし、ここまで読み切る人がいるかもしれない。それはそれで十分に成立しているのかな、と時代に必死にふるい落とされないようにしているおじさんは思うわけだ。
いいなと思ったら応援しよう!
