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封印分岐仮説 ティアキンの時系列について
この年代記は、
現時点で確認できる情報を紡いだにすぎず、
不明瞭な部分も多くある。
そして、ハイラルの歴史は
時世や語り継ぐ者によって変化し、
これからも紡がれていく。
大きく揺らぐことはないにしても、
今後新たな伝説が生まれ、
歴史が書き換えられていくかもしれない。
P68 【歴史を読み解く前に】
はじめに
この記事は筆者個人の憶測や推論が大部分を占めるため、厳密な考察というより、一ゼルダファンが書いた一種の読み物として読んでいただいた方が良いかもしれない。筆者はこの記事によって自説の正当性を主張したい訳でも、公式が想定した“正解”に辿り着きたい訳でもなく、あくまでも「今となってはこんな風に読み取れなくもない……かな?」程度の緩いテンションで書いた個人的解釈を、備忘録代わりに投稿するに過ぎない。どうか肩の力を抜いて読んでもらって「妙なこと考えた奴がいたもんだな」と笑い飛ばしてもらえれば、それで充分である。
※以下、最新作「知恵のかりもの」を含む全ゼルダ作品のネタバレ注意※
早速だが本題に入ろう。
ブレワイ・ティアキンの舞台となった世界をブレワイ時空、スカウォを起点として繋がる伝統的なハイラル史全体を含む世界をスカウォ時空とした場合、ブレワイ時空が先に存在し、そこからスカウォ時空が派生した。そしてその分岐条件はゼルダの時間遡行ではなく、封印戦争の結果によるものだと解釈するのが、今回提唱する封印分岐仮説である。
1.トライフォースを軸とする解釈
ゼルダシリーズにおけるハイラル王国を舞台にした作品群は、大きく二つに分けることができる。
「トライフォースが物語や設定に大きく関わる作品」と「トライフォースが関わらない作品」だ。
前者は既存のハイラル史に含まれる作品群が、後者はブレワイ・ティアキンの二部作が該当する(フォーソード三部作は少し際どいが、一旦ここでは前者とする)。
これまでにファンの間で行われてきた時系列考察の多くは、前者の基本的な構造を保ちつつ、後者をその内部に取り込むというアプローチで行われた。だがこの手法は、諸設定の局所的な整合性は取れたとしても、そこから一歩引いて時系列全体として見た場合に、一本の筋が通った物語の流れや世界観を提示できるかという点で──それが不可能であるとは言い切れないが──極めて難しいように思える。
そしてこうも思う。そんな無理をしてまで元のハイラル史の中にブレワイやティアキンをねじ込む必要も無いのではないか、と。
無論これは筆者個人のスタンスに過ぎず、他人に対して考察という行為そのものの方向性を強要するものではない。
本仮説は、先述の二種類の作品群が互いに別の時空として存在するとしたうえで、それぞれの時空が基を辿れば一つの時間軸から分岐したものだと仮定し、拡張されたハイラル史の中にブレワイ・ティアキンを取り込むことを意図して、各時空のトライフォースの扱いを軸に構築されたものである。
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……と、偉そうなことを言っているが、つまるところこれはブレワイの頃にも囁かれていた「第四時間軸分岐説」的なアレの亜種であって、別に目新しいアプローチではない。
2.封印分岐仮説の要点
本仮説には、これまでファンの間で共有されてきた従来のハイラル史観とは前提や解釈が大きく異なる部分がある。そのため伝統的なハイラル史観をお持ちの方は大変ショックを受けるだろうが、筆者も元々そちら側だったから、その気持ちは痛いほど分かる。だが筆者の乏しい力では、ティアキンという名の怪物を前にして、結局これぐらい強引にやらなければ上手くまとめることができなかったのだ。ゼルダがアタリマエを見直したように、どうかこれまでの常識を一旦取り払って、真っ新な心で読んでいただければ幸いである。
2-A.ハイラル王国(ラウル朝)の建国はスカウォよりも前
(前略)あくまで可能性として話すとすれば、ハイラル建国の話があってもその前に一度滅んだ歴史がある可能性もあります。(後略)
これはティアキン発売後にファミ通が行った開発者インタビューにおける藤林Dの発言である。この一文は当時ファンの間でも大きく取り上げられたが、その時点では「スカウォゼルダの子孫によって建国されたハイラル王国(ハイリア朝)が一旦滅んだ後に、ラウル朝としてハイラル王国が再建国されたことを示唆している」という解釈が大多数を占めていたように思う。
本仮説では逆に、まず先にラウル朝が存在し、その滅亡後に再建国されたものがハイリア朝であるとの立場を取っている。
2-B.分岐条件は魔王封印の成否
ティアキンの封印戦争では、魔王ガノンドロフとラウル&六人の賢者の戦いが描かれた。本仮説では、この決戦の中で魔王封印が成功した世界がブレワイ時空、封印に失敗した世界がスカウォ時空として分岐するという立場を取る。ある意味、本仮説の要ともいうべき部分だ。
これについては直接的な根拠があるわけではないが、後述する魔王と終焉の者の繋がりに関する推測から逆説的に導かれたものである。
2-C.ティアキンガノンドロフは終焉の者と同一存在
まず先に断っておきたいのだが、ゼルダシリーズに登場する全てのガノンドロフが同一人物である必要はない。このことは独自解釈云々以前にハイラル史の情報を整理すれば導けることであり、勝利子供ルートにおいては時オカのガノンドロフがトワプリ作中で倒され、その後の4剣+で別のガノンドロフが生まれている。ガノンドロフは最低でも二人登場しているのだ。
そして、ガノンドロフと呼ばれる存在が歴史全体を通じて複数存在し得るならば、時オカのガノンドロフ誕生以前にもさらに古い別のガノンドロフが存在した可能性があっても不思議ではない。
ティアキンでは、封印戦争における魔王とラウルたちの決戦は中央ハイラルの地下深くで行われた。ティアキン作中でも確認できるが、この時代の中央ハイラルはまだ平原ではなく、木々の生い茂る森林の様相を呈していた。
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神代の時代におけるハイラル平原は、現在と異なり木々が生い茂っていたという。(中略)また、現在はハイラル平原の先にハイラル城が見えるが、神代の時代では森林が広がっており建造物らしきものは見当たらない。
(後略)
P396【神代と現代の地形 ハイラル平原】
また、スカウォのOPでは『邪悪なる存在』が『地を割って姿を現した』という説明がなされ、実際にプレイ開始後のムービーにおいても、封印されしもの(終焉の者)が森林の地面の下から姿を現していた。
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これは女神ハイリアの手で封印の地に封印される以前の出来事で、恐らく終焉の者が最初に大地に現れた瞬間を描いたものだと思われる。
そして何より、ガノンドロフ(魔王形態)と終焉の者は、燃え盛る炎のような髪や黒い肌、衣服の形状など、全体的な意匠が似通っている。実際、ティアキン発売前のトレーラーでガノンドロフの姿が公開された際も、ファンの間で両者の類似点が囁かれ、その繋がりについて考察が盛り上がっていた。
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これらの共通項を手がかりに、本仮説ではティアキンに登場した魔王ガノンドロフと終焉の者が同一存在であると仮定し、ラウルが封印に成功したブレワイ時空ではガノンドロフのままだが、封印に失敗したスカウォ時空では魔王が地下で全ての秘石を手に入れ、闇の力が更に倍加されたことで終焉の者に変貌し、再び地上に現れたと推測している。
2-D.トライフォースが人の手に託されなかった世界
本仮説が想定する二つの時空の最大の違いは、トライフォースそのものの扱われ方である。本仮説において、ラウルによる魔王封印が失敗し終焉の者が誕生したスカウォ時空では、事態を収拾するためにトライフォースを守護する女神ハイリアが降臨し、スカウォで語られた伝承や物語を経て「トライフォースが人の手に託された世界」が始まる。一方のブレワイ時空では、地上の民の力だけで魔王封印に成功したおかげで女神ハイリアが降臨する必要がなくなり、結果的に「トライフォースが人の手に託されなかった世界」に繋がったと解釈する。そのためブレワイ時空では、トライフォースは女神ハイリアと関連付けられたシンボル以上の意味を持たず、誰もそれを求めようとしない。
2-E.ループ構造の破綻から、スカウォ時空が派生する
ティアキンを取り扱う新時間軸分岐仮説でよくあるアプローチとして「ゼルダの時間遡行が分岐の原因」だとする解釈が存在するが、本仮説ではあくまでも、ゼルダはブレワイ時空において、時間遡行することも含めて初めから全ての結果が定められた運命論的ループ構造の中に囚われているために、時間遡行それ自体は分岐原因にはなり得ないという立場を取る。この構造は、公式資料においても「収束する歴史」という文言によってその存在が示唆されている。
(前略)
そしてこの項では、厄災討伐からの数年間と、天変地異によるハイラルの変化、そして魔王討伐までを綴っていく。それは長い長い年月を経てつながり、収束する歴史の幕引きであると同時に、神代の時代に白龍と化したゼルダ姫をゾナウ族の力を得たリンクが探し求める奇跡の冒険譚でもある。
P398【現代〜ゼルダ姫の行方〜】
だがその上で、ゼルダが辿る道筋にはある程度の振れ幅があり、それが許容範囲内に収まってさえいればブレワイ時空に定められた一定の運命に収束する(さながら、どんな道筋を経たとしても最終的にはゼルダのもとへ辿り着くブレワイのように)が、魔王封印に失敗するといった要因でその閾値を越えてループ構造が破綻した場合に限り、新たにスカウォ時空が分岐すると解釈している。
3.創世から分岐までの時系列
ここからは、本仮説が想定するハイラルの歴史について、その創世から二つの時空への分岐に至るまでの出来事を、作中描写や公式資料を基に前後関係を整理し、出来る限り簡潔に記述する。直接的な根拠を持たない本仮説独自の推測に関しては《》で囲む形でその他と区別した。また、ここに書き切れなかった捕捉情報についても最後にまとめている。
①.世界創造~ゾナウ誕生期
・三女神によるハイラル創世。トライフォースと秘石が生み出される。
・三女神はトライフォースとハイラルを女神ハイリアに託し、姿を消す。
・女神ハイリアは秘石をゾナウ族に託し、その守護者に任じる。さらに女神は彼らに特殊能力を授け、ゾナウ族の間で女神信仰が広がる。
・《この時点でトライフォースの真価(願いを叶える力)を知るのは、三女神を除いて女神ハイリアだけ。》
・ゾナウ族は地上で文明を興し、地底を開拓してゾナニウムを発掘・精錬することでゾナウギアを始めとする様々な技術を開発し、繁栄する。
・この頃、ゾナウ族はハイリア人の祖先と接触して交流し、ハイリア人の祖先の間でも女神信仰が広がる。
・その後、ゾナウ族は何らかの理由で地上を離れ、空島に乗って天空へ飛び立つ。
②.ゾナウ天上期~ラウル朝建国期
・天空で繁栄したゾナウ族は、地上で集落や国を築き始めていたゴロン族やゾーラ族、リト族やゲルド族とも接触し、彼らの居住地方の自然環境を整えるための施設(後の神殿)を共同で建築する。
・何らかの理由で絶滅の危機に瀕したゾナウ族は、秘石を携えて地上へ帰還。長い年月の末にゾナウ族の存在を忘れていたハイリア人は、まるで天から神が降臨したかのように彼らを扱い、交流を深めた。
・ゾナウ族は人口減少に歯止めがかからず、ついにはラウルとミネルの姉弟を残して滅亡してしまう。ラウルはハイリア人の巫女ソニアに秘石を与え、結婚して共にハイラル王国(ラウル朝)を建国。ラウルとソニアはそれぞれ初代国王・初代王妃となり、ゲルド族を除く周辺部族とも良好な関係を築きながら、彼らの協力のもとでハイラルの地の大部分を平和的に統治する一大国家となる。
・遥か未来から来たゼルダ(ティアキン)がラウルたちと出会う。
③.魔王誕生~封印戦争
・ゲルド族の王ガノンドロフがソニアを殺害。彼女から奪った秘石の力で、魔王ガノンドロフへと変貌する。
・魔物の軍勢を率いた魔王によるハイラル侵攻が始まる。この過程で被害を受けたゲルド族もハイラル王国軍へ合流、ラウルは各部族長たち四人に秘石を与え、彼らを賢者とする。各部族長にミネル、ゼルダを加えた六人の賢者は、ラウルと共に魔王打倒に向けて動き出す。封印戦争が始まる。
・ラウルと六人の賢者は、ハイラルの地下深くに魔王を誘い込み、封印戦争の終結をかけた最終決戦に臨む。
④α.封印失敗ルート(スカウォ時空)
・《ラウルと賢者たちは魔王に敗北。魔王は彼らが持つ全ての秘石を手に入れて更なる力を解放し、終焉の者へと変貌する。》
・《流石にこの事態を重く見た女神ハイリアは、静観を止めてハイラルに降臨し、地底と地上の間を遮断して終焉の者を地下に封じ込める。》
・《トライフォースの存在とその真価を知った》終焉の者はトライフォースを求めて《再び》地上に姿を現し、軍勢を率いて大地を壊滅させる。《この時、ラウル朝も滅亡する。》
・女神ハイリアは亜人族と共に終焉の者の軍勢に対抗する。しかし敵の狙いがトライフォースであることを知った女神は、万が一の事態に備え、後にスカイロフトと呼ばれる大地を切り取り、そこに生き残った少数の人間とトライフォースを載せて天空へと逃がす。
・女神ハイリアは辛うじて終焉の者を封じ込めたが、それも一時的なものでしかない。そこで、女神の身ではその真価を発揮できないトライフォースの力によって敵を消滅させるため、人間に転生することを決意する。
・その後、スカウォでの出来事を経て「トライフォースが人に託された世界」が始まる。
・スカウォ後、影の一族の追放を経てトライフォースは聖地に安置され、賢者ラウル(時オカ)による時の神殿建立を経て、スカウォゼルダの子孫によってハイラル王国(ハイリア朝)が建国される。
④β.封印成功ルート(ブレワイ時空)
・ラウルの決死の行動により、魔王ガノンドロフの封印に成功。
・時を渡ってきたマスターソードを遥か未来のリンクに届けるため、ゼルダが秘石を呑んで白龍となる。
・《地上の民の力だけで事態が終息したことで、女神ハイリアが降臨する必要がなくなる。トライフォースはまだ女神の手元にある。》
・《トライフォースの真価は依然として誰も知らず、求めることも無い「トライフォースが人の手に託されなかった世界」となる。》
・魔王封印の要としてハイラル城が築かれる。
・地下に封じられた魔王から漏れ出た怨念が厄災ガノンとなる。
・厄災ガノンが幾度も復活するが、その時々の勇者・姫によって封印される。ブレワイから一万年前には古代シーカー族の超兵器でリスキルされる。
・ブレワイの100年前、厄災ガノンが復活と共に超兵器を乗っ取り、ハイラル王国(ラウル朝)が滅亡。ブレワイゼルダがその最後の末裔となる。
・ブレワイリンクとゼルダによって厄災ガノン打倒。
・ハイラル城が損壊したことで魔王ガノンドロフが復活し、ゼルダが過去の世界へ。白龍の助力でリンクが魔王を打倒し、白龍がゼルダに戻る。
・ゼルダ、ハイラル復興を決意する。
時系列に関する捕捉情報
・トライフォースと秘石は三女神によって同時期に生み出された。本仮説における解釈では、ブレワイ時空のトライフォースはティアキンに至るまで女神ハイリアが保持したまま、秘石は各部族長などが継承している。スカウォ時空のトライフォースは人間の手を経てハイリア朝に託され、秘石は終焉の者がすべて手に入れたために後世には残っていない。
・女神ハイリアがトライフォースの真価を明かさなかったのは、地上の民の欲望を刺激して無駄な争いを起こさせないためだったと考えられる。実際、トライフォースの真価が誰にも知られなかったブレワイ時空では、トライフォースを巡る争いそのものが存在し得ないのだから、女神の考えは正しかったと言える。
・ブレワイ時空における女神ハイリアの基本的なスタンスは「静観」である。地上の民の間で何が起ころうと、神として降臨しそれに直接介入することは無かった(唯一と言っていい例外が悪魔像に対する介入で、恐らくこれは悪魔像が曲がりなりにも神であるためだろう)。一方そこから派生したスカウォ時空においては、終焉の者という史上最大の巨悪に対抗するために神として降臨せざるを得ず、それでもなお抗いきれなかったために、亜人族や人間と手を組んでこれを滅した。以降、人間に転生した女神の血脈はハイリア朝に受け継がれ、その血を通じて女神は人間と共に歩むことになった。
・トライフォースの紋章がハイラルの随所で見受けられる以上、ブレワイ時空にもトライフォースは存在すると考えて良い。しかしどうやらブレワイ時空の人々の認識では、その紋章とトライフォースそのもの(あるいはその能力)が結びついていないらしい。それはブレワイやティアキンを通じて、敵味方誰一人としてトライフォースを追い求めていないことからも推測できる。本仮説ではこうした不可解な状況を「人々がトライフォースのことを忘れ去ったため」ではなく「そもそも初めからその存在や能力を知らされていないため」に起きていると解釈している。その一方でトライフォースの紋章が荘厳な様式で神殿や宮殿などの重要施設にあしらわれていることを考えると、女神信仰を通じて、トライフォースの紋章が女神の神聖な力のシンボルとして人々に理解されている可能性は十分あり得る。
・ゾナウ族が地上を捨て天空へ上がった経緯については【4-B.ゾナウ族が地上から離れた理由】で詳しく掘り下げている。
・ゼルダの時間遡行とその分岐可能性については【4-A.ゼルダの時間遡行が分岐原因ではない理由】で詳しく掘り下げている。
・ラウル朝建国期に発生した魔王との戦いを「封印戦争」と呼ぶのは、あくまでも魔王封印に成功したブレワイ時空からの見方であって、封印に失敗したスカウォ時空では別の名称で呼ばれていた可能性がある。そう考えると「封印戦争」という名称が神トラで描かれた全く別の戦争に対して使われるのも、別に不自然なことではない。この時空では、神トラでの封印戦争以前に「封印戦争」が存在しなかったのかもしれない。
・スカウォ時空において、魔王ガノンドロフが終焉の者と化し、女神ハイリアに地下に封じられてから再び地上へ侵攻するまでの間には、スカウォで描かれた大地の様子を見ると、一つや二つの種族や文明が始まって終わるくらいの、かなりの時間的猶予があったと思われる。これはあくまでも筆者が持つイメージであって、具体的な根拠があるわけではない。
・終焉の者とトライフォースの関係性については【4-C.終焉の者がトライフォースの真価に気づいた理由】で詳しく掘り下げている。
・ブレワイ時空におけるトライフォースが封印戦争後どうなったかについては【4-D.ブレワイ時空におけるトライフォースの所在】で詳しく掘り下げている。
・ブレワイやティアキンがスカウォ以降の時系列に位置しないという解釈に起因する様々な疑問に関しては【5.スカウォを経由しないことへの疑問】で詳しく掘り下げている。
4.詳細説明
ここからは捕捉情報で書き切れなかった内容について掘り下げる。
4-A.ゼルダの時間遡行が分岐原因ではない理由
先に説明した通り、本仮説ではラウル朝建国期における時間軸分岐点が「ゼルダの時間遡行」ではなく「魔王封印の成否」と仮定している。この理由についてもう少し詳しく説明したい。タイムトラベルものの作品に親しみがない方は少し混乱するかもしれないが、出来る限り簡単に説明するよう心掛ける。
まず最初に「ゼルダの時間遡行によって分岐が起きる」と仮定しよう。
ここでは一旦ハイラル史の存在を忘れ去り、世界創造からブレワイ・ティアキンまで一直線に繋がる、まだどこにも分岐が起こっていない一本の時間軸を想定してほしい。これがブレワイ時空である。
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ブレワイ時空の未来から、ゼルダが過去に行く。この行動によって既に時間軸が分岐し、新たな時空が発生しているとすれば、過去に到着した後のゼルダは、基となったブレワイ時空から派生した別の時空に存在することになり、その時空はブレワイやティアキンと接続されていない(その時空で白龍になったとしても、ブレワイやティアキンには辿り着けない)。これはつまり、どれだけ過去の世界に干渉したところで、ゼルダの出身時空……つまりリンクが存在するブレワイやティアキンでの出来事には何一つ影響を与える事ができないことになるが、これではティアキンでの物語の描写と食い違ってしまう。
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ということは、ゼルダの時間遡行という行動そのものは分岐の直接的な原因とは言えない。
これは言い換えれば、ゼルダの時間遡行だけでは分岐が発生しないことを意味する。それまで時間軸が一本しかなかった世界にゼルダが突然現れたところで、依然として時間軸は一本のままの状態を維持するということだ。つまりこの世界が始まった段階から、ゼルダが過去の世界に現れることが運命付けられており、その結果がブレワイ・ティアキンに繋がるということも含めて、運命として初めから決まっていたということになる。まるでティアキンのロゴに描かれたウロボロスのように、ゼルダを取り巻く因果関係は、頭と尾が繋がったループ構造を形作っている。
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では、分岐が発生する具体的なきっかけは何なのか?
本仮説が想定する分岐点は、ラウルが魔王の封印に成功したか、もしくは失敗したかである。その状況をさらに掘り下げてみよう。
まず封印戦争の最終決戦において、ラウルが魔王に「心臓掴み」を繰り出して致命傷を与えるシーンを見返していただきたい。ラウルが攻撃を当てる事ができたのは、魔王がラウルに注意を払っていなかったためであり、彼がそうしたのは、ゼルダがモドレコを使って魔王の注意を引いたからである。
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このシーンにおいて、仮にゼルダがモドレコが使えないほどの戦闘不能状態に陥っていたらどうだったか?あるいはそれ以前に、ゼルダが決戦に参加しなかったら?恐らくラウルはガノンドロフへ致命傷を与えるための隙を作り出すことができず、結果的に魔王封印に失敗するだろう。
これは、モドレコを使うゼルダの存在が、封印の成功と失敗を大きく左右することを意味する。
つまり、二つの時空は最終決戦の場に、ゼルダがモドレコを使用可能な状態で参加しているかどうかという一点によって分岐すると解釈できる。
運命論的ループ構造をもつブレワイ時空から、過去世界でゼルダが死亡したり、最終決戦に参加できなかったり、決戦で能力が使えなかったりするなどの要因で封印が失敗したことでループ構造が破綻した場合に限って、スカウォ時空が派生するのである。
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結局のところ、ハイラル世界の運命はゼルダの存在によって大きく動くのだ。運命的な因果に支えられているとはいえ、ブレワイ時空で魔王封印に成功した功績は、ラウルに加えてゼルダの選択と行動の賜物に他ならない。むしろティアキンとは、こうしたゼルダの選択を無碍にしないために努力するリンクの話であり、ゲームの主人公こそリンクだが、物語の真の主役はゼルダなのだ。だからこそティアキンは紛れもなくゼルダの伝説なのである。
4-B.ゾナウ族が地上から離れた理由
ゾナウ誕生期末期にゾナウ族が地上から離れた理由については、公式資料でも基本的に謎とされている。別に解き明かす必要もない……と思っていたのだが、情報を整理する中で興味深い解釈が導けたので一応書いておく。
引用数が膨大になってしまうため、ここではそれぞれの項目内容を抜粋する。実際の文脈については各々確認してほしい。
P374【卓越した能力と政】
・推測:ゾナウ族社会はより多様で強力な能力を有する者が高位な存在になり得た。
・推測:ゾナウマジックはすべてのゾナウ族が等しく有していたものではなく、扱える能力の数やその性質も個人間で異なっていた。
P374【女神信仰】
・女神信仰はゾナウ族に起源を持つ可能性がある。
P380【神の降臨】
・ゾナウ族が降臨した時は、長い年月の末に地上の誰も彼らを覚えてなかったため、まさしく神が降臨したように捉えられた。
P435【人型の彫像】
・推測:地底に存在する彫像は、ゾナウ族の地底開拓期に造られた。
・像の作りはゾナウ族にしては少々粗い。相当古いものか、あるいは別の種族が造ったものなのか。
P452【地底の彫像はゾナウ族?】
・謎の人型像はゾナウ族だと思われるが、何かを握っているように見える。秘石か?
・壁画に残されたゾナウ族の姿と比較すると、少し身体的特徴が違う。
・仮説:誕生直後の原始ゾナウ族か、力の弱くて耳の小さい下位のゾナウ族か、あるいは秘石を狙って争った別種族の姿かもしれない。
P453【ゾナウ族はハイリア人の祖?】
・「ゾナウ族が元祖ハイリア人ではないか」という考えがハイラルの歴史学者の間で最もホットな説になるほど、両者間には共通点が多い。
・推測:枝分かれしたタイミングは、恐らくゾナウ天上期への移行あたり。
・ゾナウ天上期では、ゾナウ族が地上の他の部族と交流した痕跡があるが、ハイリア人の存在については曖昧。
以上の情報を整理すると浮かび上がってくるのが、ゾナウ族の一部がハイリア人の起源となった可能性である。これに基づいて、ゾナウ族とハイリア人が辿った歴史を以下のように解釈することができる。
①ゾナウ誕生期、多様な能力を持つゾナウ族からゾナウ亜族(仮)が派生。彼らはゾナウ族と比べて耳が小さく、恐らく能力も劣っていた可能性があり、伝統的なゾナウ族と比べて社会的に下位階層に位置付けられたことが推測できる。
②この社会構造は次第に両者間の軋轢を生み、やがてゾナウ亜族は秘石を奪うためにゾナウ族に反旗を翻した。この争いで地上にいられなくなったゾナウ族は空島と共に天空へ退避。
地底に遺された「秘石を握るゾナウ亜族像(仮)」は、この時期に造られたと考えられる。
③こうして始まったゾナウ天上期では、ゾナウ族が空島で繁栄を築く一方で、地上に残されたゾナウ亜族は原始的な生活へと後退し、その過程で元の種族的特徴を少しずつ失っていった。恐らくこれがハイリア人の起源であり、その名称は祖先がゾナウ族から分派した際に継承した女神信仰に由来するものと思われる。
天上期のゾナウ族が周辺部族との交流を深める一方でハイリア人との関係性が薄かったことも、彼らの祖先とゾナウ族の軋轢を考えれば不思議ではない。
④やがて何らかの原因で滅亡の危機に瀕したゾナウ族は、秘石と共に地上に降臨。その姿を目にしたハイリア人は、すでにゾナウ族のことや自分たちのルーツを覚えておらず、ゾナウ族側は同じ女神信徒ということでハイリア人と手を組んだ。
⑤ゾナウ族が二人の末裔を残して滅びた頃、ゾナウ族のラウルとハイリア人のソニアが結ばれ、ラウル朝ハイラル王国が建国された。姿かたちがまるで違う異種族同士で子を成し王朝を築くことが出来たのは、二つの種族が元は一つだったからである。
……というのが、マスターワークスの記述から推測できる流れである。
ここからはさらに個人的な考えだが、ゾナウ亜族の基になったのは、恐らくゾナウ誕生期の段階でゾナニウムの採掘に従事した、ゾナウ族の地底労働者たちだったのではないだろうか。地底にゾナウ亜族像だけがあり、ゾナウ族像がない理由として考えられる解釈だ。初めこそ地底という新天地で楽しく暮らしていただろうが、長きに渡る地底労働と周辺環境の影響によって、少しずつ元の姿からかけ離れていってしまったのではないだろうか。
そして、能力者至上主義的な思想のもとに起きたゾナウ族・ゾナウ亜族間の長年に渡る社会的分断が、ゾナウ亜族からゾナウ文明の担い手としての側面を削いでしまったのだろう。だから地上に残されたゾナウ亜族=ハイリア人は、高度な文明を維持出来ず、結果的に原始人になるほかなかったのだ。
フィローネ地方を始めとする各地に存在したゾナウ遺跡は、こうしたゾナウ亜族がハイリア人へと変化する過渡期に築かれたものかもしれない。
しかしながら、そんなゾナウ亜族を祖とするハイリア人も、完全に特殊能力を失ったというわけではなさそうである。
ハイリア人にも特殊な能力を持つ者が、わずかながらに存在した。その中でもソニア(およびその家系)にはとりわけ大きな力が備わっていたと推測される。(後略)
P381【ハイラル王族の祖・ソニア】
ゾナウ族からゾナウ亜族、そしてハイリア人へと進化(退化?)する中でも、一部の能力は特定の家系を通じて後世に継がれたのだろう。そしてその末裔であるソニアがゾナウ族のラウルと結ばれたことで、一度は分かれた種族の血脈が再び合流を果たし、その特殊な力はラウル朝王家の血筋と共に、遠い未来のゼルダまで継承されていったと考えられる。
4-C.終焉の者がトライフォースの真価に気づいた理由
本仮説においては、女神ハイリアが守護するトライフォースの真価に世界で初めて気づいたのが、終焉の者であるとしている。女神ハイリアがゾナウ族に対してすら秘匿し続けた秘密に、敵である終焉の者だけがなぜ気付くことができたのだろうか?
これは少々強引な解釈かもしれないが、個人的には知恵かりに登場した無の世界に生きる存在、ヌゥルが関わっているのではないかと睨んでいる。無論、ヌゥルの存在はティアキン以降に発売された知恵かりで初めて明かされた設定であるが、この二つの作品は開発時期が重なっている部分もあり、もしかしたらヌゥルの構想自体はティアキン開発段階で既に存在したのではないか。とはいえ、このアイデアが作品間を跨ぐ推論の域を出ないことは心しておいてほしい。
知恵かりでの説明によれば、ヌゥルは三女神による創世以前、無の世界で全てを貪り食っていた存在であり、これを封じるために、三女神がハイラルの世界を創造したとされている。
三女神はそうして生まれた世界の守護を女神ハイリアに任じ、トライフォースを授けて姿を消した。
この時点で、女神ハイリアだけでなくヌゥルまでもがトライフォースの真価を知っていた。ヌゥルは全ての存在を消し去って無の世界を取り戻すために、女神ハイリアが持つトライフォースの力を使って世界を滅ぼそうと考えたが、そもそもハイラル世界そのものがヌゥルを封じるために創造されたものなので、結局ヌゥル本体はハイラル世界の中に立ち入ることができなかった(この時のヌゥルの世界侵入の試みが、ハイラル世界にも影響を及ぼしていたかもしれない。ラウルとソニアによる「破魔の行脚」で祓われたハイラル各地の「邪」の存在などは、もしかするとこのヌゥルの行動に起因するのではないか。あくまでも根拠のない推測である)。
自分自身のハイラル侵入を諦めたヌゥルが次に考えたのは、ハイラル世界の中にいる者に協力させる事である。外からドアが開けられないなら、中から開けてもらえばいい。
そこでヌゥルが目を付けたのが、独特な風習を持つ砂漠の民、ゲルド族だったのだろう。
(前略)
太古のゲルド族には、怪しげな動物の骨や土などを用いて悪霊を操る術があったともいわれている。泥人形のようなものを作り、それに邪な魂を吹き込んで傀儡とするのだ。
(後略)
P426【操り人形はゲルド族の秘術?】
ゲルド族に伝わる傀儡の術を使って、自分の一部だけでもハイラル世界の存在に植え付ければ、ハイラル世界の中に自分の分身を生み出せるのではないか。
後々女神ハイリアと戦う事を考えれば、ただの獣や普通の人間よりも、力のある支配者として生まれた方が、何かと都合がいい。生まれた時点で支配者になることを運命づけられた者が必要だ。
つまり……ヌゥルがハイラルに侵入するにあたって、100年ごとに生まれ、やがて王になる定めであるゲルド族の男子が、最も都合がよかったのである。
というよりむしろ──これは根拠のない恐ろしい妄想に過ぎないが──そもそもゲルド族の歴史そのものが、始めからヌゥルの影響によってお膳立てされていたのかもしれない。100年に一度しか生まれない男子、そしてそれが必ず王となるしきたり、王に従う優れた戦士たち、悪霊や邪な魂に通ずる秘術……ヌゥルがその分身をハイラルに送り込む手段として、あまりにも都合がよすぎるではないか。だとすれば、ヌゥルの計画はハイラル世界の創世の時代から、歴史の裏で密かに進行していた可能性がある。
ヌゥルは邪か何かを使ってゲルド族の一部(恐らくティアキンのコタケ・コウメだろう)と接触し、100年ぶりに生まれたばかりの、あるいは生まれる前の男子に傀儡の術を施した。こうしてヌゥルの僅かな欠片=闇の力を植え付けられて誕生したのが、ティアキンに登場するゲルドの王、ガノンドロフだったのだろう。他のゲルド族と違ってガノンドロフだけが耳が丸いのも、ただ性別が違うだけではなく、生まれた時点ですでに他のゲルド族と根本的な違いがあったためかもしれない。だとすればガノンドロフの正体は、ヌゥルの意志がハイラルに顕現するために用意された肉体の器に過ぎなかったと言える。敵ながら哀れな話である。
ガノンドロフはかつて、秘石を得るより前にも偽のゼルダを作り出し、ハイラル城内で隠密活動を行っていた。つまり偽物を生み出したのは、魔王の力によるものではないことが明らかである。となれば、ゲルド族の秘術に由来するものではないだろうか。
(後略)
P426【操り人形はゲルド族の秘術?】
マスターワークスの記述では、ガノンドロフ自身が用いる偽物を生み出す力はゲルド族の秘術に由来するのではないかと推測しているが、個人的には、これはヌゥルの影響によるものだと睨んでいる。
ガノンドロフ自身は、自分が闇の力を持つことは知っていても、それがヌゥルに由来することや、その欠片を宿していることは知らなかっただろう。だがやがてソニアの秘石を手に入れて魔王となり、封印失敗ルートにおいて全ての秘石を手に入れて終焉の者となると、自身の内に僅かながら宿っていたヌゥルの欠片を倍加したことで、膨れ上がったヌゥル自身の意志や記憶を通じて、トライフォースの存在とその真の力、そしてヌゥル自身の目的……トライフォースを手に入れることを思い出したのではないだろうか。
こうして終焉の者は、ハイラル世界で初めてトライフォースの真価に気付いた存在となったのである。
つまり、
終焉の者=魔王ガノンドロフの肉体×秘石で倍加されたヌゥルの意志
だったのではないか、ということだ。あくまで推測である。
因みに筆者は、知恵かりはスカウォ時空のどこかに含まれると考えている。
【追記(2024.11.26)】公式ポータルサイトにて、知恵かりはハイラル史における敗北ルートの三銃士~初代間に位置することが判明した。
4-D.ブレワイ時空におけるトライフォースの所在
本仮説では、ブレワイ時空におけるトライフォースは世界創造からブレワイ・ティアキン時代に至るまで女神ハイリアのもとを離れていないと解釈している。これに関して積極的な根拠があるわけではないが、仮にそうだと仮定した場合、ブレワイ時空とスカウォ時空の二つの世界における地形変動の差がなぜ発生したかを説明できる可能性がある。
ブレワイ時空におけるラウル朝建国期とブレワイ・ティアキン時代は、最低でも一万年以上の開きがある。これだけの年月が流れているにしては、この二つの時代の地形はほとんど変わっていないように見える。精々中央ハイラル平原が森林を形成する湿地帯だったことくらいだろうか。
一方でスカウォ時空では、それほど長い時が流れていないように見えるにもかかわらず、ハイラルの大地は作品ごとに大きく様変わりする。
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敗北ルートの知恵かり(左下)、勝利子供ルートのトワプリ(中央下)&4剣+(右下)
あくまでも推測に過ぎないが、これらの違いはトライフォースの状態が世界そのものに影響を与えているために発生するのではないだろうか。
神トラ2で判明したように、トライフォースは世界の安定を担う要である。その消滅や破壊は、世界そのものの荒廃と破滅に直結する。
(前略)
憂えた王は、争いの元凶となるトライフォースを破壊した。しかしトライフォースは、この世の理そのものであった。つまりトライフォースを失った世界は破滅することになる。
(後略)
P028【もうひとつのトライフォースの世界 ロウラル】
ということは、仮に消滅とまでいかなくても、トライフォースそのものの状態が、世界の安定性に直結するとは考えられないだろうか。
ブレワイ時空では、トライフォースが表舞台に出ることは無く、女神ハイリアが守護し続ける。そのため世界構造そのものの安定が脅かされることはなく、地形も大して変化しない。
一方スカウォ時空では、人の手に託されたトライフォースは時によって分かれたり、割れたり、また集まったりしている。トライフォースそれ自体の状態が安定していないために、世界の形そのものもそれに影響を受けた結果、作品ごとに大きく地形が変わる様になってしまったのではないだろうか。
風タクでハイラルが沈んだのも、作中では神の力によるものだと語られていたが、実際には勇気のトライフォースを宿した時の勇者が過去に帰還したことによってトライフォースの挙動がバグったために起きた、一種の自然災害だったのかもしれない。
他方、時の勇者が帰還した過去の時代でもトライフォースが異常な挙動を示し、処刑寸前だったガノンドロフが突然力のトライフォースを宿した。その後のトワプリの時代では地表はひび割れ、時オカの頃とは大きく地形が様変わりしている。
無論、これは「各作品の開発当初からそれを想定していたはずだ」という話ではなく「今となってはそういう解釈も出来るかも」という程度の話だ。
5.スカウォを経由しないことへの疑問
本仮説においては、ブレワイ・ティアキンはその歴史上、スカウォやそれ以降の作品を経由していない。しかしながら、スカウォで描かれた物語に起因し、後世に継がれたとされるいくつかの要素が、どういう訳かブレワイ時空にも依然として存在している。ここではそういった不可解な状況について、可能な限り合理的な解釈を試みる。伝統的なハイラル史観やスカウォとそれ以降の作品群の繋がりを重視する方などには少々ショッキングな内容かもしれないが、どうかご容赦願いたい。
5-A.ブレワイ時空のマスターソード
従来のハイラル史観において、マスターソードはスカウォ作中で完成したものとされる。だが本仮説の解釈では、ブレワイ・ティアキンはスカウォを経由していないにも関わらず、マスターソードが存在している。
この問題については手がかりも少なく、正直に言うと筆者自身も一定の合理性を持つ積極的な解釈が出来ないでいる。
だが実は公式資料においても、ブレワイ・ティアキンに登場するマスターソードがスカウォで完成したものと同一存在とは言い切れないという、なんとも奇妙な記述が存在しているのだ。
とある伝承によれば、マスターソードは女神が創ったものという謂れがある。女神の剣には精霊が宿り、勇者を導きながら聖なる炎で鍛え上げたという。
現存するマスターソードが同一のものであるかは定かではなく、剣の精霊もまた現存するかはわからないが、マスターソードがなにかしらの意志を持っている可能性は充分にありえる話だろう。女神の加護により、時を超えることができたのかもしれない。
P390【マスターソードの意志】
これは、ブレワイ・ティアキンがスカウォ以降のどこかに位置しており、それぞれの時代のマスターソードが同一であるという伝統的なハイラル史観の立場から見れば、存在すること自体が不可解な文章である。
ブレワイ以前にスカウォ起源とは別のマスターソードが造られたか、あるいはブレワイ以前にスカウォ起源のマスターソードが一度破壊され、再度造り直されでもしなければ、こんな文章は挿入する必要自体無いはずだ。しかも、そんな過去を示唆する情報はブレワイ・ティアキンを通じて一度も出てきていない。ブレワイのマスターソードがスカウォのものと同一か否かなど、最初から誰も疑問に思っていないし、気にする必要も無かったはずだ。
このように従来の立場から見た場合、文章の意味そのものと、それが記載された意義が、まるで不可解としか思えないのである。
だが本仮説のように、ブレワイとスカウォがそもそも別の時空として存在するという前提に立つと、途端にこの文章の存在意義が見えてくる。ブレワイのマスターソードが具体的にどうやって造られたかは依然として謎だが、少なくともスカウォのマスターソードとは起源を異にする可能性がある……つまり、マスターソードが存在するという点に限って言えば、ブレワイとティアキンがスカウォを経由する必要は必ずしもないということを、暗に示唆しているように読み取れないだろうか。
あまり積極的に断言することもできないが、ブレワイとティアキンに登場するマスターソードは、スカウォに登場したものとは恐らく別物である……というのが、本仮説における解釈である。
5-B.ハイラル王国の紋章のモデル
ハイラル王国の紋章は、翼を広げた鳥とトライフォースの意匠によって構成されている。スカウォ以降の作品では、この鳥の意匠はスカウォに登場したロフトバードがモデルであると解釈されてきた。しかしブレワイ時空ではスカウォを経由していないため、ロフトバードはハイラル王国とそれほど重要な関係を持たないはずである。だとすれば、ブレワイ時空におけるこの紋章は一体何を表したものなのか?
これについては根拠がどうこうというより、実際に見ていただくほかないのだが、ブレワイ時空におけるハイラル王国(ラウル朝)の紋章の造形は、ロフトバードではなくゾナウ族のシンボルに由来するのではないだろうか。ラウル朝の血統はゾナウ族のラウルをその起源とするのだから、それほど不自然な発想ではない。
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ハイラル王国の紋章ではトライフォースに相当する部分がアカリバナ、鳥の足はゾナウ族の目、鳥の翼は……ゾナウ族に翼は無いはずだから、これは恐らくゾナウ族の長い耳を表しているのだろうか?それにしては少々独特な造形をしているように見える。むしろこのシンボルをティアキンで新たに登場させるにあたって、あえて王国の紋章側のデザインに寄せにいっているように見えなくもない。メタ的な読みではあるが、ティアキンの開発に際して、ゾナウ族のシンボルが始めから王国の紋章の原型としてデザインされた可能性は無いだろうか。
因みにアカリバナはティアキンプレイ中こそ便利な照明アイテムとして消費されるが、ゾナウ族の文化においては特別な意味を持つ重要な花であった。この意匠にどのような想いが託されていたかを考えると、後の時代にハイリア人の手によってトライフォースと置き換わるのも、自然な流れに思える。
(前略)
ほかにも、代表的な意匠のひとつに「アカリバナ」があり、調度品のほか宝飾としても好まれていたようだ。太古は花そのものを照明として設置していたようだが、のちの宮殿や神殿の装飾にも用いられており、ゾナウ族の国花のようなものであったのかもしれない。かつてゾナウ族にとって、アカリバナは地底開発に欠かせない植物であっただろう。文明の発展の歴史からも、アカリバナのモチーフは彼らにとって特別な意味をもつようになり、伝統的に使われるようになっていったのではないだろうか。
P453【龍とアカリバナのもつ意味】
以上の見解から、二つの時空における王国の紋章は見た目こそ全く同一ではあるものの、ラウル朝のものはゾナウ族のシンボル、ハイリア朝のものはロフトバードとトライフォースがモデルであり、その起源は別物である……というのが、本仮説における一応の解釈である。
5-C.女神の血の起源
本仮説においては、ラウル朝建国期には女神ハイリアはまだ女神として存在していることになる。したがってラウルもソニアも転生した女神ハイリアの血を引いていないことになるが、二人の子孫に当たるゼルダには女神の血が流れているとされている。この女神の血はどこから来たのか?
これは筆者自身も少々過激な解釈だと思うし、恐らく本仮説で最も議論を呼ぶ部分であるかもしれないが、そもそもブレワイゼルダには女神ハイリアの血が流れていない可能性がある。
つまり、ブレワイやティアキンの時代においても女神ハイリアは人間に転生しておらず、女神として存在し続けているということだ。この解釈であれば、女神像から聞こえる声の正体が説明できる。
また、ブレワイからティアキンにも引き続き登場する悪魔像は、ブレワイ時点ではハテノ村近くに位置していたが、ティアキン時点では王家の隠し通路に移動している。この件に関して、悪魔像自身の供述と公式資料の記述が、女神ハイリア自身の関与を示唆している。
命と力を司る神…
それが かつての俺だ
その俺が 金と命を取り引きしたのが
女神ハイリアのお気に召さなかったらしい
こんな石像に姿を変えられて
自ら動くこともできぬまま 時だけが過ぎ去った
(中略)
ところが女神ハイリアは
俺のそんな悪あがきを 見逃してはくれなかった
大通りから裏通りへ飛ばされ
裏通りからさらなる細道へと飛ばされた
(中略)
そして遂には 退屈極まりない土の中に
飛ばされてしまったというわけだ
(後略)
悪魔像との最初の会話より
(前略)
石像になってもなお取り引きを続けていた悪魔は、女神ハイリアによって人の気配のない場所へと飛ばされたのだという。町外れ、洞窟、沼の底……ついには土の中へ。それがこの避難壕の奥であった。
(後略)
P404【悪魔の囁き】
つまり、少なくともブレワイとティアキンの間に女神ハイリアが悪魔像に干渉し、その位置を移動させたということだ。一度は人間に転生した存在に、そのような神の如き力を行使することが果たして可能だろうか?個人的にこれは、女神ハイリアが人間に転生していないからこそ可能な芸当であるように思える。
だとすれば、女神の血の「女神」とは一体何なのか?これに関して、マスターワークスに興味深い記述がある。
(前略)
ソニアは当時のハイリア人における、巫女のような役割をもつ存在だったのだろう。人々に叡智を授ける姿は、まるで女神の化身のように映ったに違いない。
P381【ハイラル王族の祖・ソニア】
(前略)
ところで、現在「ソニア」の名を冠した地名や遺跡は残っておらず、古文書などにもそうした記載は見つかっていない。初代ハイラル王妃の名が残されていないのはいささか不思議である。
(後略)
P388【ソニアゆかりの神殿?】
これは憶測に過ぎないが、生前のソニアは人々の間で女神の化身のように思われており、その死後、彼女の存在が長い年月の中で語り継がれる過程で、次第に伝承の中で女神ハイリアそのものと同一視されるようになってしまったのではないか。
ラウルと違ってソニア個人の名前が一切後世に伝わっていないのも、その存在が女神ハイリアの神話や伝承の中に吸収されてしまったからではないか。
つまりゼルダに流れる女神の血とは、現代では当然のように女神ハイリアのものだと信じられているが、本来は初代王妃ソニアからはじまる血統のことを指していたのではないか……というのが、本仮説における基本的な解釈である。
5-D.封印の力とトライフォース
ブレワイにおいてゼルダが封印の力を行使した際、その手の甲にトライフォースの紋章が浮かび上がった。これを封印の力はトライフォースに由来するものと解釈し、ゼルダが全てのトライフォースを所持している証拠と捉えたうえで、過去作におけるトライフォースの所在から逆算して、ブレワイ及びティアキンの時系列位置を特定する……というのが、これまで行われてきた時系列考察における一般的なアプローチだったように思う。
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本仮説では、ゼルダが持つ封印の力はトライフォースそのものとは直接的な関りは無いという見解である。【4-D.ブレワイ時空におけるトライフォースの所在】でも述べたように、ブレワイ時空のトライフォースはティアキン時代に至るまで女神ハイリアが守護したままだと考えられ、ハイラル王家を含む地上の民には託されていない。だとしたら問題は、なぜトライフォースの紋章が浮かび上がったのか、ということである。
ここで、封印の力を含むゼルダの身に宿る力について掘り下げてみよう。ティアキン作中では、ゼルダが宿す力について封印の力・光の力・時の力・破魔の力など、いくつかの名称が用いられる。言わずもがな、光の力と時の力は、それぞれラウルとソニアの血に由来するものである。
また公式資料の中で破魔の力は光の力と同一のものとして記述されている。
(前略)
ラウルの光の力──破魔の力で周囲の魔物を滅し、さらにその力を、ソニアの時の力で極めて時の流れを遅くした石に込めて残留させる。
(後略)
P382【破魔の行脚】
ラウルとソニア、ゼルダ姫が協力し、モルドラジークを退けた様子を観察すると、謎に満ちた「光の力(破魔の力)」がもつ特性がおぼろげながら見えてくる。
(後略)
P386【ラウルの光の力とゼルダの潜在能力】
改めて整理すると、ゼルダの身には封印の力・光の力(=破魔の力)・時の力が宿っていることになるが、筆者個人の考えでは、封印の力とは光の力と時の力が合成されたものではないかと推測している。
ブレワイ終盤における厄災ガノンの討伐シーンを見返すと、まずゼルダの手から大きな光球が出現し、その内部に厄災ガノンが取り込まれ、次の瞬間光球が一点に収縮して消滅する……という状況が読み取れる。
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この「光球の出現」と「一点への収縮」が、それぞれ光の力と時の力の作用として解釈できるのではないだろうか。
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(前略)
また、このときのゼルダ姫については、ソニアを凌駕するほどの強い光を発していたことから、彼女が内包する聖なる力の強さがうかがえる。
(後略)
P386【ラウルの光の力とゼルダの潜在能力】
もし封印の力を光の力と時の力の合成だと捉えるならば、ティアキン作中の記憶『ゲルド族の強襲』において、力を行使するラウルをソニアとゼルダが手助けする場面で、ゼルダの方がソニアより大きな光を放つ状況も、十分に説明が可能だ。ラウルの力×ソニアの力=ゼルダの力なのだから、力の総量はゼルダの方が大きくなるのは当然である(無論、彼女がそれだけのポテンシャルを十分に発揮できるようになった背景として、ブレワイにおけるゼルダの体験やその覚悟の影響を無視するわけにはいかない)。
そして、封印の力がラウルとソニアに由来すると解釈できれば、そこにトライフォースの紋章が現れるのも不思議ではないということになる。
ラウルは元々種族的な特徴として特殊能力を有している。それは彼らゾナウ族が、過去に女神ハイリアから力を授かったとされているからだ。
(前略)
ゾナウ族が特殊な能力や叡智を持つことについても、一説には「ゾナウの一族が秘石の守役たり得るよう、女神が特殊な能力を授けた」ともいわれている。
(後略)
P374【女神信仰】
そして【4-B.ゾナウ族が地上から離れた理由】でも示唆されたゾナウ-ハイリア同祖論に則して、ゾナウ誕生期にゾナウ族から分派した種族の末裔がハイリア人であると考えれば、ハイリア人であるソニアの家系が受け継いだ特殊能力も、元々はゾナウ族のものであり、その起源は女神ハイリアに由来するということになる。
その上でブレワイ時空におけるトライフォースの意匠と女神ハイリアの関連性を鑑みると、封印の力の発動時にトライフォースが浮かぶのは、それが大本を辿れば女神ハイリアが授けた力であるということを意味するものだと解釈でき、トライフォースそのものとの直接的な関係を前提としなくても一応の説明が可能なのである。
要するに、封印の力の発動時にトライフォースの紋章が浮かぶのは、それがトライフォースそのものの力に直接由来するためではなく、トライフォースを守護する女神ハイリアに由来するため……というのが、本仮説における一応の解釈である。
5-E.過去作に関連する要素について
ブレワイやティアキンには、様々な過去作由来の要素が登場する。神獣の名は時オカや風タクに登場した賢者が元ネタだし、ゾーラの石碑にはルト姫が出てくるし、地名にも過去作のキャラクターの名が残されているし、ライネルもいるし、マップの地形は神トラ系列に近いし、敗北ルート特有の「ゼルダ命名の習わし」もあるし、コログ族もいるし、ライネルもいるし、息吹の勇者服は敗北ルート特有の意匠だし、儀式の中に「黄昏」という文言が出てくるし、ライネルもいるし、封印戦争は敗北ルートの出来事だし、時の神殿もあるし、リト族もいるし、ロンロン牧場もあるし、ライネルもいるし、ライネルもいる。
本仮説においては、これらの要素は運命論的収束の結果としてブレワイ時空でも発生したものであり、過去作での出来事それ自体とは直接的な因果関係にないと解釈している。
【4-A.ゼルダの時間遡行が分岐原因ではない理由】でも解説したように、本仮説が提示するハイラル世界の歴史モデルには、ある種の運命論的収束性が存在すると想定している。道筋が多少ズレても、辿り着く結果自体は大きく変わらないことがある。ゼルダの時間遡行自体が時間軸の分岐原因になり得ないと解釈するのも、基本的にはこの性質によるものだ。
当然、この性質はブレワイ時空だけでなく、そこから派生したスカウォ時空にも適用される。確かに、魔王の封印に失敗するという世界の本来の運命に背く現象が発生したことで、ブレワイ時空と大きく事情の異なるスカウォ時空が誕生した。しかしながらそれは、それ以降のスカウォ時空が本来の運命を一切放棄したということを意味しない。
これ以上は複雑になりすぎるので、あえて結論からお伝えするが、要するにスカウォ時空で発生した事象は、そもそもブレワイ時空でも起き得る可能性があるということだ。というより因果関係がむしろ逆で、ブレワイ時空の運命に初めから仕組まれていたからこそ、そこから分岐したスカウォ時空でもそれに近いことが発生し得たのである。記事冒頭でもお伝えしたように、初めにブレワイ時空ありきなのだ。当然、メタ的な意味では過去作に由来する要素だが、あくまでも作中世界における理屈としては、ブレワイ時空に定められていた運命を元ネタとして、それに近い形でスカウォ時空でも運命が実現したということになる。だから逆説的に、スカウォ時空において特定のルートにしか存在しない様々な要素も、それがどこかのタイミングで実現し得る可能性自体は、ブレワイ時空の運命にも最初から含まれている。
無論、ブレワイ時空での出来事にはトライフォースは一切関与しないので、スカウォ時空ほど激動の時代が頻繁に訪れることは無かっただろう。一方のスカウォ時空ではトライフォースの動向に触発される形で歴史が大きく動く過程で、本来のブレワイ時空ならトライフォースを必要としなかった一つ一つの要素や出来事が、時オカや神トラ、トワプリ、風タクなどの時代の節目に一気に発現し、それが過去作で描かれた物語の形でまとまっていた、というようにも捉えられる。
では、全ては運命論的収束に支配されていて、何をしても結果は同じということかというと、決してそうではない。まず第一に、それぞれの時空に実際に生きる者たちは、自分たちや世界の運命を知り得ない。第二に、もし仮に運命を知ったとしても、必ずその通りになるとは限らない。
これは皮肉にも、ゼルダやラウルが魔王の封印に失敗したことによって明らかになった運命の性質だ。当のゼルダやラウルたちにとっては不幸な結果だっただろうが、結果的にはブレワイ時空における本来の運命と異なる道を歩んだスカウォ時空が存在することそのものが、運命が変えられることの証となるのである。
6.余談
分岐後シナリオのモデル
一年中時系列と向き合っているタイプの、ちょっとヤバめのゼルダファンの方ならもうお気付きかもしれないが、実は封印失敗ルートの分岐とその後の顛末のシナリオ仮説については、敗北ルートでの時オカから神トラにかけて起きた封印戦争前後の出来事をイメージしながら組み立てたものである。
勇者敗北ルート:①時の勇者が最終決戦で敗北し、②ガノンドロフが全てのトライフォースを手に入れ魔獣ガノンへ変貌。③ゼルダと六賢者がなんとかこれを聖地に封じ込めたが、④聖地から邪気が溢れてきたため、⑤七賢者と騎士団がその入り口を封印(封印戦争)。⑥光の世界に復活を果たそうとしたガノンを勇者(神トラ)が倒し、⑦トライフォースがハイラル王国に戻る。
封印失敗ルート:①光の王ラウルが封印戦争で敗北し、②魔王ガノンドロフが全ての秘石を手に入れ終焉の者へ変貌。③女神ハイリアがなんとかこれを地底に封じ込めたが、④地の底から終焉の者の軍勢が溢れてきたため、⑤女神と亜人族がこれに対抗し、終焉の者を封印。⑥復活を果たそうとした終焉の者を勇者(スカウォ)が倒し、⑦トライフォースが人間の手に託される。
正直に言うと、筆者も途中まではこのような近似を持たせようとは考えていなかった。仮説のシナリオを想定する中で「あれ?なんか見覚えがある構造だな」と気づき、実際に寄せてみたら綺麗にまとまったのである。まさかここまで上手くいくとは思っていなかったので、筆者自身も驚いている。
あるいは──これは少々考えすぎかもしれないが──ティアキンで描かれた魔王との戦いが「魔王戦争」や「秘石戦争」などの独自の名称ではなく、あえて過去作から「封印戦争」という名が引用されたのも、こうしたシナリオ構造の近似に対して、初めから開発側が自覚的だったためかもしれない。
古の勇者の魂(一万年前の勇者?)
マジで意味わからん。なにこれ?
【追記(2025.01.10)】
ちょっと考えてみた
終わりに
ここまで読んでくれてありがとう。書いてるうちにこんな長文になってしまい、読む方の時間を浪費させてしまったことを申し訳なく思う。
さて、ここまで読んでもらった方にはお分かりだろうが、筆者は色んな事の言い訳を考えるのが好きである。「たかがゲームだから」「たかがアニメだから」「たかが漫画だから」「たかが創作だから」で片付く不合理に、貴重な人生を無駄に浪費して一定の合理性を見出すのが好きである。報われることはあまりないが。
この記事の内容を一言で表すと「言い訳」である。まず最初に「ブレワイとティアキン、どうも今までのハイラル史とは繋がってなさそうだな」という見解があり、その上で「もし繋げられるとしたら、どんな形になるだろう?」という疑問を解消するために構築したのが、この封印分岐仮説であった。正直に言うと、記事の大部分は全部その場で適当にこしらえた「言い訳」だ。だから筆者は今回提唱した仮説の内容に対して「考察」という語を一度も用いていない。
この記事の内容やスタンスに対して、肯定意見も否定意見もあると思う。いずれにせよ、記事内容をあまりそのままの形で受け取らず、あくまでも参考とする形で、改めてゼルダシリーズの時系列や設定、そして物語について想いを巡らせ、それぞれの頭で考えて、自分の中で納得できる解釈を見つけ出して欲しい。
思い返せば、我々が回生の祠の中で目覚めた2017年以降、ゼルダの伝説シリーズは空前の黄金時代の真っただ中に突入している。シリーズ作品の開発に関わる全ての人々に最大級の敬意と感謝を表するとともに、これからもより一層の驚きと豊かな遊びをファンに授けてくれることを期待して、この記事の締めとさせていただきたい。
ちなみに筆者はこの記事を書きながら「俺、陰謀論にハマったらヤバそうだな」と危機感を抱いた。少し気を付けようと思う。