「虎の門外あふひ坂」−裸の男と暖かいうどんは寒さを引き立たせる対極−『名所江戸百景』
最近Kindleの30日間読み放題に加入しました。
でもiPhoneで利用しているので読めないものも多いのが残念なところではありますが、ある程度読めちゃうのがいいところ。
今はゴッホの生涯について記されたものを読んでいます。
以前大学の講義でゴッホと日本の浮世絵との関係を勉強して、ゴッホに興味を持ったのでちょうどよかった。
マジで先月までやってたゴッホ展行けばよかったと後悔してばかりです。
図録とかどっかで売ってないかな、、。
彼の悲劇性が作品の良さを引き立たせているような気がして作品をもっと見てみたいと感じます。
そんなゴッホに陶酔している今日も広重。
今回は『名所江戸百景』の「虎の門外あふひ坂」です。
本日も参考元は『広重TOKYO 名所江戸百景』です。
これは確かまたまた「江戸の天気」展でみた気がする。
これは冬の風景なんですよね。
なのにこんなに寒そうな格好で商売をしている。
この坂道が続き先に木が2本生えています。そのまた上に月がありますが、その上にかかっているように鳥がzの形に天に伸びています。
坂道がどこまでも続くような印象を与える絵ですね。
この正面の坂が葵坂という坂。その向こうに生えている木は榎。
榎坂は今でもあるようです。
左下の坂が榎坂。
その右側の環二通りの北側に葵坂があったようです。
↓葵阪之図 (広重東都坂尽)です。
葵坂と榎が続いているのがよくわかります。
その手前の道にも人々が多くいるのがよくわかる絵ですね。
葵坂 (江戸名所百人美女)歌川豊国
この女性がメインなのはもちろんですが、右上の小さい枠の中の絵が葵坂。
溜池から堕ちる水がメインで榎がよくわかるくらい。
葵坂はよく判別できません。
絵の一番気になるポイントであるほとんど裸の男性たち。
手前の少年は若干笑顔。笑
提灯には「金毘羅大権現」と描かれていて、右の男性は「日参」の提灯を持っています。
彼らは虎の門にある金毘羅大権現に寒参りをしてきたということであるそうです。
https://tokyo-trip.org/power-spot/marugamehan/
金毘羅大権現の本拠地は香川県であるようですが、分社が虎の門に移ったそうです。
かなり歴史のある金毘羅。讃岐丸亀藩主が江戸に移転した時に一緒に藩邸内に金毘羅大権現も移転したためにここにあるそうです。
虎と虎をかけて白虎に値する場所に作ったのですね。
元々香川県にあった金毘羅宮が、江戸に来たものですから江戸の人は当然訪れるわけです。
しかし明治維新後の神仏分離令で金毘羅大権現は金毘羅宮と神社になりました。
全国の権現様は一斉に神になったようです。
そんな歴史のある金毘羅大権現にお参りした男性二人はそこで寒参りに出向いたそうです。
まさに親かと思われる男性が鈴を持っているのがそういうことですね。
30日もやるの?!!
見習いの職人がそういう修行をすることが修験道の簡易版としたのですね。
因むと本には毎日水垢離を行うともあり、冷水を浴びて穢れを取り心身を清浄にすることであるとあります。
ただでさえ裸なのが寒すぎるのに、冷水にかかりに行くのなんて修行以外の何ものでもないですね。
そんなほぼ修行僧みたいな親子が通る葵坂に「大平しっぽく」と「二八おそば」という看板をかけた簡易的な屋台があります。
あったかそうなものを売っています。
しっぽくとはうどんやそばに野菜やきのこ、蒲鉾などを入れて煮た料理のことであるらしい。
ほうとうみたい。
土日にお昼作るのがめんどくさい時に適当に具材入れたうどんみたいで庶民的。
絶対に小学校の時とか母親が作っていた記憶が日本人にはありそう笑。
こういうの寒い日の夜に食べたらもっと美味しいんだろうなあ。
そんな寒い冬を感じさせる裸の男性たちと暖かい料理を見た日でした。
今日はここまで!
【追加】!!!
こんな追加編集なんて初めてですが、追加しておきたい情報を見つけました。
親に毎月届く『大人の休日倶楽部』の2022年の1月号に浮世絵の特集があって、親にもらいました。
『現代版 浮世絵の楽しみ方』という特集の「水都・お江戸探訪」という枠で、竹村光太郎さんという日本水フォーラム代表理事の方のコメントとその引用です。
これを読んで、あ!これってダムだったのか!という気づきがあったのが一点。
本当の溜池があったところも今は埋め立てられているという気づきが一点。
町中の井戸からという点から、以前やった柳の井や櫻の井といった井戸があちこちにあったのかという気づきが一点。
以前見た絵と繋がってきたし、現代に重ねるとどんな役割があるのがわかってくる。
この絵では裸の男たちとその周辺の商売についてばかり目が行ったけど、地理的なところにも気付けていたらと思いました!!!!!