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「箱根 湖水図」−山肌と色味は中国産?−『東海道五十三次』

ここ数日で母親の地元岩手に行っておりました。
その期間も書いていましたが、家を開けている間にそれを言ってしまうのは控えていました、。笑

やはり岩手県は非常に涼しく、夜は掛け布団にくるまって寝ます。
しかも夜は静かだし、道は広々としているし、ご飯は何を食べてもおいしいものでした。

海鮮ももちろんのこと、お野菜もお肉も美味しくてお米と一緒に満腹を繰り返して生活していました。

そんな明日からダイエットの今日も広重。今回は『東海道五十三次』「箱根 湖水図」です。

◼️ファーストインプレッション

こちらは絵を見るだけで「箱根だ!」とわかるほどに有名な作品の一つ。
以前箱根に行った時にこの絵が印刷されたパッケージのお菓子がありました。帰りに買おーと思って6時ごろに商店街に行くと全店営業終了していたことを覚えています。

海に面していると思いきや、副題に湖水とあるので湖なのですね。
その際に大きく聳える箱根山はゴツゴツとした岩肌を剥き出しにして画面上部まで伸び伸びと描かれています。

実際にこんなに色の違う岩が入り乱れて出来上がっていたのでしょうか。
流石に湖面のサイドから登ることは出来なくて、手前側の道から登っているみたいですね。
笠の見える数が多いですね。夥しい数の人間がこの急斜面を歩いているみたい。
2人だけが少し高い位置に、その他は自分の足で歩いているみたいなので、大名行列のような大群かもですね。
急な斜面と、左の湖面の高低差が画面一杯に活用されていて、横画面だと思えないほどダイナミックな絵になっていますね。

この湖面はあの、大きな遊覧船が浮かぶ芦ノ湖でしょう。

◼️芦ノ湖

当時の芦ノ湖も今と同じように観光やら信仰やらでたくさんお人が訪れていたのでしょうか。

歌川広重『冨士三十六景』「はこ根の湖すい」です。

湖水を描いていても人っ子一人いませんね。
箱根の山を越える様子もなく、景色でしかない富士山が描かれていますね。
富士がメインなので当然でしょうが、資料としてもう少し人の動きを見てみたかったものです。

広重『不二三十六景』「箱根山中湖水」です。
やはりここでもあまり人は描かれず、富士がメイン。
なのでその雄大さと湖水の広さ、周りの山肌の険しさが描かれるべきものですよね。

あまり浮世絵の芦ノ湖は今回の絵の参考にならないのかもしれません。

今回の絵では山の急斜面のすぐ向こう側に神社仏閣が建てられていることがわかります。
その描写も上二つの芦ノ湖の描写にはない忠実な描き方ですね。

どちらがすごいとかの判別はできることじゃないですが、見ていて面白いのは今回の絵かと思いながら3枚を眺めています。

◼️山水画との関係

今回シリーズで参考にしている本にはこのように書かれています。

「中国の山水画では、緑色と赤褐色を塗り分けて山を描く一連の作品があり、これに影響された日本の作品も多く残っています。岩を積み上げて山の量感を作り上げる描法も、中国画に由来します。
(中略)
中国の山水画は心の中の理想郷を描くものでした。広重は箱根という実在の土地を描きつつ、現実離れした山容によって、山を主役とする理想郷を実現したといえるでしょう。「湖水図」という、かしこまった副題にも、中国的な山水画花の興味が感じられます。

山水図をよく見ることで比較ができますね。

正直誰の何とされてもいまいち特性がわかっていないので概観してみます。
確かにゴツゴツとしていながらも色や質感を変化させて一筋縄では登れないような威厳を放っています。

特にこちら。


色を変えて土か、岩か、草かを描き分けて陰影もはっきりとさせて、視点を上下に移動させる働きをしています。

色味は特に使い分けられてはいませんが、山肌の質感は広重がこのような絵から借用したことが仄めかされていても納得できますね。
岩を1枚、2枚と数えられそうな、しかも地面から生えてきたような様子が見てとれます。
色が黄色や緑・赤褐色と付けられていったら、広重の描写に非常に酷似しているような気もしますね。

こうした中国の種本を広重たち浮世絵師は見ていたことに確信を持てるのは非常に興味深いですし、見ているこちらとしても見識が広がる一方で(いい意味で)頭がいっぱいです。

今回は芦ノ湖の描かれ方と、山水画との比較をしていきました。
今日はここまで!
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