高橋克彦『広重殺人事件』から噛み砕くこと
一週間くらい更新せず、まさか「明日更新します〜」なんて言ってからボケっと忘れていたなんてことはありません!
何を題材にしようかな〜と何日も考え、さまざまなサイトに飛んでは、著作権的に使えなさそうなものばかりを探し当てていました。
しかし国立国会図書館のものは『東都名所』や『江都なんとか』などの資料はいくつかありますが、同じ題名でも版の異なるものが混合しているので判別が難しいのです。
他の所蔵先でも広重のシリーズがあっても、美術館が所蔵していたり、大学図書館が所蔵していたりで著作権的に使えないものばかりでもあるのです。
なので今もちょっとまだ探しています。
なので最近読んだ興味深い本を紹介します。
高橋克彦著『広重殺人事件』です。
二人の学者が広重が東北の天童という場所を訪れた証拠として残った絵日記から広重の正体を探る物語です。
山形県東部の天道という地を描いた絵日記が発見され、その作品に関する論文を発表した主人公は亡くした恋人を追いかけて自殺をしてしまいます。
その論文は天童の作品が贋作であることがわかる前に発表されてしまい、余計に謎が深まります。残された学者は主人公の死は広重と天童の関係とも何かしら絡んでいるのではないかと悟ります。
あまり書くとネタバレになりますが、実際に天童を描いた絵日記は存在しないようです。
事実、作品の中では天童の絵日記は贋作とされています。
この作品のなかで興味深かったのが、広重の死に関する状況です。
広重はコレラによって死んだという説が主流ですが、遺言の状態から誰かに殺された説を唱えているのです。
広重の遺言が実物と同じなのかは確認していませんが、コレラに罹患した病人は遺言をしっかりとした字で書くことはできないとされています。
今まさにドラマ『仁』を見ていますが、ドラマが当時に写実的なものでないにしても、落ち着いて筆を執るなんて行動はできたものではないのでしょう。
しかし広重はしっかりとした筆跡で細々と遺言を書き連ねているのでした。
史実とどこまで違うのか、考証する必要がありますが説として唱えられている死に際も、本当に史実と齟齬はないのかを再度確かめて問題点を洗い出さなければいけないのだと実感しました。これはこうした研究をする上での話で、これからの私に何度も言いつけておかないといけないことでもあります。。笑
肺炎や老衰のような病気ではなく、罹患して数日で危篤となるような病気と言われていますから、遺言もまた作品や書簡のように史実を確認する材料となるのですね。
こうした小説を読むことで事実との確認やどのように考証するのかという道筋の片鱗が窺い知ることができます。
読んで読んで読みまくる春休みにしたいと思っています。