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「日本橋の朝市」−指一本多いし犬に本気だし−『名所江戸百景』

今日から何を書こうと少し前から思っていましたが、昨日触れた広景について見ていきたいと思います。
夏に太田記念美術館に行ったときに勢いで購入した
『ヘンな浮世絵 歌川広景のお笑い江戸名所』日野原健司さん著 2017年 コロナ・ブックス出版

こちらを参考に歌川広景の『江戸名所道戯尽』を見ていきます。
この作品集は全部で50作品。

まず、歌川広景という人物についてよく見ていく必要がありますね。

彼についてわかっていること。
・生没年不明
・出生不明
・広重の門人
・出版作品は65点
・1863年に指名手配される
・昇斎一景と同一人物説

くらい、、。

わかっていることが少なすぎて人物像に迫ることはなかなか難しいのがキズですね。
『浮世絵類考』にも名前は乗っておらず、昇斎一景の箇所にも「明治の初め絵書あり。」とのみ記されるだけで何のヒントもないのが現状。
確かにこれじゃ研究も進みません、、。

私レベルでは、作品を深掘りして楽しむことしかできないのでそれに徹します。

今回は『江戸名所道戯尽』「壱 日本橋の朝市」です。

◼️ファーストインプレッション

今回は全作品国立国会図書館デジタルコレクションに載っていたので気兼ねなく貼り付けることができます。笑

広重でも北斎でも散々擦ってきた日本橋。
魚河岸と晒し場及び高札があったことは何度もやりました。

今回はその一部の魚河岸の一面を取り上げたみたいですね。

日本橋の目印である擬宝珠は大きく二つ描かれています。
また、光景として必須な江戸城、富士山、蔵の連なりがあります。
手前の騒ぎに目を向けてあげましょう。

全身タトゥーの男性が真っ赤な鯛を咥えて逃げる犬を全力で追いかけています。その反動で桶に入っていた魚が数匹落ちてしまっています。
鯛一匹の当時の値段がいくらかわかりませんが、落とした数匹を取り上げておいた方がより多くの犠牲を増やすことになってしまいかねません。

それを見る男性と女性は楽しそうにそれを囃し立てています。
男性は履き物を履いていませんね、座って作業してたときに面白そうなものを見つけてついつい興奮して追いかけてしまったのですね。笑

日本橋は往来のある橋でもありますので、犬が走っていく先も人がごった返していると想像すると、犬の圧勝な未来が見えてきます。

こんなに人が活き活きと描かれた名所絵は初めてなのでまるで動いているかのように、次の瞬間を想像してしまいますね。

◼️描かれている位置

日本橋の朝市という題名の通り、そして富士山が見られるということは日本橋の北詰でありますね。

これまで『名所江戸百景』で散々現在の位置を見てきたので、今回からは江戸時代の地図で見ていきます。

右真ん中にある橋が日本橋
その北詰から描かれているので見えている向こうの橋は一石橋
東から西を見ていることはよくわかります。

◼️魚河岸

この魚河岸の光景、同じ時間としてみておきたい絵があります。

歌川国安『日本橋魚市繁栄図』です。

向こうに見えているのが日本橋本体。橋の上に人がごった返しているのは一目瞭然。
その魚市の一部が細々と描かれていることに注目しましょう。
続き物なので出てくる順番が楽しみだったものでしょうね。

左の絵には犬が描かれています。彼らは子供たちに分けてあげるためのおこぼれを狙っているのでしょう。
奥の軒ではマグロの解体が行われています。
その手前に大きな魚が丸々持ち運ばれているのも面白い。

真ん中の絵には長い棒を掲げた人がいます。彼は井戸の水を引き上げるための棒を持って上水道に向かっています。

右の絵には棒手振りが描かれています。
彼はまさに今回の絵の刺青男と同じ場面の人です。この桶の魚を長屋まで運びます。
大事な役目だっただけに犬に盗まれると怒り心頭だったのかもしれませんね。

向きは違うけれど、橋を渡る棒手振りと犬の追っかけ劇がこの数秒後に始まりそうな予感を醸し出している絵でした。


魚市を描いた他の作品もみてみましょう。

広重『東海道五拾三次』 「日本橋 朝之景」です。

桶を担いだ男性たちが描かれている一方で、右端に犬が描かれています。
やはり、日本橋の朝市では棒手振りの男性と犬はセットで描かれがちなのですね。
犬もわかって狙いに来ているのですね。


渓斎英泉『江戸八景』「日本橋の晴嵐」です。
ここもごった返している様子。男女関係なく荷物を持って往来しています。
しかしここではワンコは描かれませんね、いや、手前の擬宝珠の左に黒い影があります。人間がしゃがんでいるとは思えない。わんこか?

渓斎英泉はこっそり忍ばせていたのかもしれません。


渓斎英泉『木曽街道続ノ壱』 「日本橋雪之曙」です。
ワンコはいない。
冬の魚は身が締まって人々に好まれていたのでしょう。冬の雪の日でも肌を出して精を出して往来する人々に活気を貰えそうです。



一月になってしょうがない箇所を見つけてしまいました。

あー、解析度が、、。粗いですね。
実はこの男性の足の指、六本あるんです。

浮世絵師である前に、絵描ですからこんなミスというか間違い、わざとでしょ?と思ってしまします。

本当に間違えたのかな?

だめだ、論文やら記事やらを探しても見つからない。

指が一本増えるだけで足の存在感が増している気がします。

残りの一本が残像?足が速いからとか関係あるのかな?笑


謎を残して今日はここまで!
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