なぜ、タグでは知識を整理ができないのか
この記事では、知識を整理する方法の1つであるタグ管理では、情報やファイルを長期的には管理不能となるのはなぜか、その理由を分析していきます。フォルダかタグかという議論に新しい見識を追加するとともに、タグだけではできない新しいアプローチを提案していきます。
パソコンやスマホの機種変更では知識の整理は解決しない
以前の64回目の放送で、「パソコンやスマホの容量はなぜいつも制限ギリギリになってしまうのか」というタイトルでお届けしました。実際にその時のお話というのは私自身のデジタルデータが整理がつかなくなってしまっていたというお話でした。
私たちが機種変をするとき、長い年月をかけて蓄積したスマホやパソコンのデータを次の機種へ移行していきます。過去から溜まってきたデータはどんどんと増えますが、一方でパソコンやスマホの容量がどんどんと増えていきますから、基本的には以前のものをそのまま引き継いでいくことになります。
新しい機種になったからといって、何か減らすようなことを特にするわけではなく、以前のものがそのまま使えるかどうかというのが一番重要なポイントです。それができれば、そのときの移行というプロジェクトは、基本的には、もうすべて終了です。
今までどおりに使えるかが重要で、新しい機種になった時には使い勝手が多少変わっていますので、もうそこに注目してしまいます。情報が整理されているかどうかは、どうでもよくなってしまうわけです。
今までの容量ギリギリという問題は解決され、快適にサクサク素早く動く機種が手に入ったわけです。これで問題解決ということになり振り返ることもありません。
必要な時に必要なファイルが見つからない問題
しかし、よく考えてみると、「必要な時に必要なファイルが見つからない問題」はそのままです。自分の知識デジタルとなったデータというものを次に使おうと思った時、必要な情報が必要な時に見つからないという問題は先送りです。
例えば、自分がこれまでに分類のために作ったフォルダの中を見てみても、あるはずの場所に探しているものがない。
「あれ、ここかな?あそこかな?いつ頃だったかな?」検索でファイル名を思い出して検索をしてみても、なかなか出てこない。いくら探そうとしても、どんどんと時間ばかりかかってしまいます。
必要な情報を探すということに時間がかかってしまい、本来のプロジェクトや仕事に集中できない、時間を使うことができないということになってしまいます。
このように時間の経過とともに整理のために作ったシステムというのは次第に合わなくなり、使うことができなくなってしまいます。ますます混乱状態に陥ってしまうのです。
フォルダだけでは知識管理できない理由
保管に必要なハードディスクの容量はどんどんと増えていき、フォルダの数も増えていきファイルの数も増えていきます。集めてきた情報は収集はするけれども、どこに何があるか使える状態にはなっていないません。
この問題は解決されないまま、どこに何があるか時間が経てば経つほど住所不定、行方不明となってしまっています。
後から一念発起して削除したり、細分類したり、起き場所を考え直したりもします。例えばGmailです。Gmailの中に何百だけではなくて何千、何万という未読のメールがすぐに溜まってしまいます。
この未読のメールですが、どんどんとインボックスに溜まってしまい、後から整理するのは大変な作業です。一念発起をしてメールを整理しよう、削除しようとしても何時間も、あるいは最悪半日ぐらいかけて過去のメールを整理をして行くようなことをします。
このように情報についての利用価値を高めていこうという気持ちはあるけれども、その整理ができない。価値を高めるどころか、必要な情報を探して使うということに苦心惨憺しています。あるいは、もうあきらめ状態になっていることもあります。
このフォルダと言うものを考えてみれば、基本的にはこれは置き場所です。本棚やキャビネットに近いといえるかもしれません。これまでの紙の情報でしたら、置き場所で整理をしてきたはずです。一か所に置いた紙は別の場所にあるわけはないので、どこの場所にあったか探し当てる必要が今まではありました。
タグでファイルや知識を管理していくというアプローチ
これをデジタルで改善する新しい方法としてタグというものが、もう長い間出てきています。タグ付けというような表現ですね。タグというのは付箋とか荷札とかという意味です。検索の時のキーワードのようなものですね。
ダグ付けしておけば、そのキーワードを使ってタグでフィルターをかければ、検索するのと同じような結果を検索結果にずらっとそのタグをつけたものを呼び出すことができます。
これは非常に便利だということで、かなり多く使われるようになってきています。その理由としては、次の3点が挙げられます。
タグが使われる理由
フォルダーの場所にかかわらず、フォルダーを突き抜けて場所を問わない。
簡単でいくつでも付けられる。
複数のタグでクロス検索のように簡単に見つけられる。
このような理由でフォルダではなくタグ付けで管理をしようと言う考え方が人気となっています。しかし、実はこれも大きな問題があると言えます。
私自身も、例えばポケットやインスタペーパーのような「あとで読むアプリ」の中で、タグで管理しようとしていた時期がありました。例えばマーケティングのSEOであったりとか、便利なツールに関する記事であったりとか、あとから自分が読みたいものを呼び出すためにタグ付けたわけです。
タグで知識を管理するときの問題点
しかし、これは本当の問題解決ではないことが次第にわかってきました。
1. タグの大量生産
タグの便利なところは簡単に付けられることです。そこで調子に乗って細かくどんどんと分けていきました。名前を新しいタグをつけてでヒットエンターキーをポンと押すだけで、新しいタグをつけられます。次々とその時々に思い付いたタグをつけて行くということをしていました。
この結果起こったのが「タグの大量生産」です。
その時々で適当にタグを付けていくために、大量にタグが作られていきます。また、一文字でも違うと新しいタグとして追加されてしまいます。そうこうするうち、爆発的に大量生産状態です。
後から見返してみると、似たようなタグもたくさんあるし、なんでこんなタグをつけたのか不明のものも多数あります。あるいは、一個しか入っていないタグも少なくありません。もうタグが何の意味をしているのかわからないほど増えていってしまったのです。
2. タグを整理して管理する必要が出てくる
そうするとタグを整理して管理する必要が出てきます。不必要なタグを削除したり、テーブルのようなものを作り、どこにどういう時にどういうタグを付けるかという整理のルール作りが必要になります。
例えば、その下に2階層目のタグをこうつけようとか、管理分類をしていく必要が出てきたのです。必要な情報を探すことをシンプルにするための手段が、今度は逆に時間を使って管理をする目的となってしまったのです。
3. タグ付けの判断が必要。思考の流れが中断する。
こうなってくると、今度はどのタグをつけるのかということに自分の頭が使われることになってきます。本来の思考がどんどんと漏れていってしまのうです。自分がそれを使って何かをしようと思っているのに、自分の思考が中断されて「どこにこれを置くか」ということに気を取られてしまいます。
情報や知識を使う目的である「気づき」や「ひらめき」をそこから見つ、それを使って何か新しいアイディアを作り出していく。あるいは、何かフレーズ見つけてきて、どこか執筆などアウトプットに使うための材料にするとかということに時間が使われるべきものなのに、そういったことができず、注意力がそちらの方に注意散漫となり、本来の仕事に集中できないのです。
4.複雑なシステムは時間経過とともに使わなくなる
最後に、これはそういった複雑なシステムは、時間経過とともに使われなくなっていきます。とにかくそうやって考えること自体がめんどくさくなってきます。また、次々と変化する自分の仕事や目的に合わせて、タグのシステム自体も修正していく必要があります。
自分の精神状態が非常に落ち込んでで仕事したくない時も皆さんありますよね。もう疲れきってしまって仕事の締め切りからもう間近に迫っているけれども、もう動きたくないような疲れきったような時もあります。
そういった時でも、何か複雑なシステムを動かさなければいけないのであれば、どこかの時点でめんどくさくなり使わなくなってしまっていきます。一旦使わなくなってしまうと、また元に戻ってそこまで使わなくなった期間のタスクを取り戻そうとするのは、特に精神的にも大変な労力が要ります。ですから、ほとんどの場合はギブアップです。
タグやフォルダを超越した新しいアプローチが必要となってきた
こういったことを考えると、タグ付けをどんどんと展開して行く。細かく設定して行くということに関してはあまり意味がないと言えます。フォルダの階層化と同じように、タグ付けという新しいシステムでもう一度繰り返してしまうということになってしまうのです。
実際に私のポケットの中に入っていたタグは、ある時点からもう2度と使われることはありませんでした。実際に何をしたかというと、ポケットからもう1つのあとで読むアプリの「インスタペーパー」に移ってしまいました。
その時は、アプリを移す十分な理由があったのですが、タグにも関わりたくないという気持ちも一方であったのは事実です。そうすることによって、今までのタグをもう一度見直す必要が無くなったわけですから。新しいシステムをまっさらから作る方が簡単ですからね。
情報や知識を整理する2つの究極的な目的とは
こういったように情報整理するという意味では、目的は大きく二つに分かれます。
1. 毎日の仕事やプロジェクトで、いつでもどこでも、すぐに使えるかどうかということ。
シンプルで必要な情報を後からいつでもどこからでも、今現在関わっているプロジェクトや仕事に使えるものでなければなりません。今、必要な場所にある、あるいはどこにあるか探し出してすぐに使えるのは一番重要なことです。これを前提としたものでなければなりません。
整理は最小限にして、アウトプットのため、楽しみむために自分の時間を最大限に使うことが本来の一番重要な目的です。
2. 自分の脳の負担を軽減して、アイデアやひらめきに使うようにする
二つ目として自分の脳の負担を軽減して、アイディアや閃きに使うことができるようにするということです。
人間の脳の得意なのは、記憶をする整理をすることではありません。そうではなくて、自分の中の深層レベル、無意識の中からパッとひらめきの中で浮き上がってくる状態を作り出すということです。
記憶や整理、そして検索といった機能は人の脳が得意とすることではありません。それは、パソコンやスマホ、便利なツールに任せれば良いのです。あとは、それをシンプルに使えるノウハウと仕組みがあれば良い。
一つ一つの情報を後から使えるようにしておくというのは、自分の脳の外に置いて、自分の脳自体はクリアにきれいに整理をして何もないような状況のとき、自分の脳を「フローステート」とか「ゾーン」とか呼ばれるような状況を作り出すこと。
そして、ふっと「新しいことの発見ひらめき」というものが出てきたときに、「あれ、それってどこにある」「あの辺のところを調べたら何かあるかもしれない」と簡単に取り出すことができること。
あるいは、「こういうことができるはずだ。なぜならば…」と言って、その情報を取りに行く。そのときにすぐに取り出せるようなシンプルな方法があれば、それこそが最高な状態だということです。
この2つ、「毎日のプロジェクトですぐに使えるいつでもどこでもすぐに使えるか」「自分の脳への負担を軽減して、アイディアや閃きを促進してくれる、増幅してくれる」ようなものであること。
この二つを可能にするシステムやノウハウが必要です。
この第二の脳をどう作り育てていくか、そして自分の第一の脳を拡張してくれる、そういったような流れ、仕組みというものを作っていくことが必要だと考えるようになってきました。
これを具体的にどうするのかという話をこのあと展開して行きたいと思います。
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