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FREEK TALK #003 チャプ太郎に聞く「ムーミン」のはなし

文/構成:とんこ

本企画は、編集部員であるとんこが毎回異なるゲストを呼び、その人の「好き」を「自由」に語ってもらいつつ、根掘り葉掘りおしゃべりするものです。
第2回のゲストは、大学のゼミ同期のチャプ太郎。長い付き合いの中で、じっくり話すのは実は初めてかも。テーマは「ムーミン」!

とんこ 大学時代からの仲ですが、ムーミンが好きなのは知らなかったなあ。

チャプ太郎 みんなにわかるような形でキャラのグッズを持ったりとかする感じでもなかったからね。実はLINEスタンプは使ってたりする。

とんこ 好きになったきっかけはあるの?

チャプ太郎 親、特にお父さんが好きだからその影響なんだよね。子どもの頃に漫画か絵本を読んだらしい。僕はビデオで全話録画してあったアニメを見せられてた笑 だから妹も含めて、家族全員好き。ムーミンって何回か映像かアニメになってるんだけど、古いシリーズは「ねえムーミン こっち向いて」ってテーマ曲のやつ。

とんこ それ知ってる!

チャプ太郎 僕が見てたのは1990年に放送されてた「楽しいムーミン一家」シリーズの再放送。ムーミンの声をコナンの声優で有名な高山みなみさんがやってた。

とんこ なんとしっかりとした…。そんなに昔だと、記憶があるようなないような時期だよね。

チャプ太郎 テレビ放送を録画してるからCMも全部入ってるんだけど、懐かしい曲が流れてるし、画質も画質だよ。

とんこ 実は私は観たことないんだよね。でもムーミンバレーパークはちょっと行ってみたいなあと思ってる。

チャプ太郎 あの辺一体が北欧のテーマパークみたいになってるんだよね。僕の結婚式のために上京してきた両親と妹が次の日に僕以外で行ってた。僕が行ったのは3年くらい前かな。

とんこ パークのホームページを今見てるんだけど、「あわただしい毎日の生活の中で、なんだか気持ちがざわついたり ふとさびしくなったり 何が大事なのかわからなくなったことはありませんか?」って書いてあって、まんまと行きたいって思っちゃった。「時には厳しくも ありのままで飾らない自然とありのままの自分にそっと寄りそってくれる」んだって。

チャプ太郎 最初の文だとちょっと雄弁だなって思ったけど、次の「ありのままの自分に〜」はムーミン的だね笑

とんこ キャラがとかストーリーとか、特に好きな要素はある?

チャプ太郎 当時は何が好きだったんだろうなあ。覚えてないけど、大人になって受け止め方が変わった部分はある。キャラで言えば昔はスナフキンがかっこよくて好きだった。ムーミンたちが冬眠している間に旅に出るような姿が、落ち着いてて大人びてて。

とんこ 冬眠?!ムーミンって一体何者なんだ…。

チャプ太郎 妖精みたいだよ笑 でも改めて考えると、今はムーミンがめっちゃ好き。臆病なところも情けないところもあって、主人公だからかっこいいという訳でもなく、だからこそスナフキンやミイ、フローレンのような周りの友達にも愛されてる。困ったらみんな助けてくれるんだよね。ムーミンのそういう人となりは何から来てるんだろうなと思った時に、ムーミンパパとムーミンママの愛かなあと。ムーミンパパは昔冒険家で、今は小説家をやってて。

とんこ か、かっこいい!

チャプ太郎 しかもロマンチスト。一方でおおらかな、いわゆるおじさんっぽい感じもある。ムーミンママは、ザ・お母さんで無償の愛を周りにそそぐ人。もちろんムーミンに対してもだし、ムーミンの友達に対してもだね。あるエピソードで、ムーミンママが焼いたパンケーキや作ったジャムを家族や友達、みんなで食べ後、空っぽになったジャムの瓶が映し出される。それを見たムーミンママが、ジャムはたくさんありすぎたからね、って全く気にしない姿に愛を感じたなあ。子どもの頃だけじゃなくて今も好きでいられるのは、そういう愛を感じるからなのかなって改めて思った。

とんこ 確かに私が読んでた絵本でも、愛とか家族、友達、命について描かれているものが多かったかもしれない。

チャプ太郎 子ども向けだから当然と言えば当然なんだけど、恋愛要素とかはあんまりないよね。

とんこ 特に好きなエピソードはある?

チャプ太郎 実は今回のインタビューに当たって、家族に好きで覚えている話があるか聞いたんだよね。そうしたら、やっぱりお母さんもお父さんも妹もそれぞれ思ってる話があったみたいで、語ってくれましたね。でもみんな共通で一番最初に挙げたのが第9話の「姿の見えないお友達」と第10話の「笑顔がもどったニンニ」。ある日、友達何人かがムーミンの家に遊びに来るんだけど、その中に姿の見えないニンニっていう子がいて。たしか預けられてた家の環境が悪くていじめられて、自分の世界に閉じこもっていたら姿が見えなくなっちゃった。ムーミンの家でも、ここにいるよって紹介されても初めは見えなくて。だけど遊びながら心を通わせていくにつれて、着てる服のリボン、次はワンピース全体、次は足っていう風に少しずつ見えていく。最終的には海にみんなで遊びに行って、ムーミンパパがムーミンママの背中をふざけて押して海に落とすような仕草をした時、ニンニがやめてー!って言って止めに行くの。その勢いでムーミンパパは逆に突き落とされるんだけど笑、その後ニンニの顔が見えるようになってる。「あなた、こんなに可愛い顔してたのね!」で、めでたしめでたし。そんな話だったなあ。

とんこ あらかじめ考えてきてくれてたにしてもすごい鮮明に覚えてるね。また観直したりしたの?

チャプ太郎 してないしてない。どんな話があったっけなーってタイトルだけ載ってるリスト見て、これいう話だなと。

とんこ それですぐに思い出せるくらいなんだね、すごい……。親の影響ってある種恐ろしいよね。

チャプ太郎 ムーミンは20年以上好きだし、アニメも何回観たかわからないからね。同じように、らんま1/2もめちゃくちゃ好きだったよ。登場人物のお下げ髪を真似したくて、お母さんかおばあちゃんが新聞を縛るあのビニール紐で三つ編みを作ってくれて、当時いつも着てたベストにテープで付けてた。

とんこ 物心ついた頃に知っていたものを嫌いなことってあんまりないかもね。

チャプ太郎 他にも映画化もされた「ムーミン谷の彗星」っていう象徴的なエピソードがあるんだけど、この「彗星」を原爆に重ねる研究者もいたりするよ。そもそもムーミンシリーズの第1作が発表されたのが1945年で、2作目がこの「ムーミン谷の彗星」らしい。ムーミン谷に彗星が来たら全てが終わりとされる中で、どうにかして生き残るために壊れたバスタブで洞窟に蓋をするシーンがあったりして、直接的に戦争を描いているわけではないけど戦争の風刺になってると読み取れる部分もあるみたい。トーベ・ヤンソン本人が戦争風刺の絵を描いていたことや戦後間もない時期だったこともあって、反戦っぽい空気がある作品なのではと言われてたりもする。そういう要素を感じず楽しく観られる作品でもあるんだけどね。

とんこ 懐の広い作品だなあ。

チャプ太郎 だからどれも子どもの頃から楽しめてたけど、改めて説明するために思い出して、あれはああいうことを表すための描写だったのかな、と感じることもある。また観ようかな。当時はたしかVHSに直接焼いて観たものから上書きしてて、VHSを再生する機械が家からなくなるタイミングでさすがにムーミンだけは残そうとDVDに移した記憶がある。まだ実家にはあるはず。

とんこ 新聞記者だったお父さんはムーミンへの愛を社会問題に絡めて記事を書いたこともあるそうで…本物だなと笑 妹さんがムーミンのTシャツを着てる写真も見せてもらったね。かわいい〜。

実際の紙面

チャプ太郎 新聞に書くのは趣味すぎないかと思った笑 お父さんはキャラの造形にもこだわりがあるみたいで、このバージョン、この絵はあんまり好きじゃないとかあるらしいです。Tシャツに関してはタグのところにムーミン展って書いてあって、僕が買ってあげたらしい。覚えてない…。

とんこ 私はチャプ太郎の結婚式にも行ってるしご家族とも一度はお会いしてるから、みんなムーミン好きなんて聞いたらもうそんな最高の家族やんけと思っちゃうね。全員共通で同じコンテンツ好きなんて、めったにない気がする。

チャプ太郎 ムーミンを通じて家族のことをまた好きになれるというか、同じものを愛する者としての連帯感みたいなものは感じるかもしれない。大学生になって上京してから、家族が東京に来た時ソラマチのムーミンカフェに一緒に行ったり、池袋の西武百貨店の催事場とか駅のコンコースのポップアップとかで売ってるグッズをお土産として買って帰ろうかなって思うようになった。ある意味鎹なのかな。当時地元の熊本にそういうお店はなかったし。こじつけかもしないけど、家族に喜んでもらいたくて買って、それにより家族を近くに感じて、家族への愛とムーミンの中の愛の世界観がオーバーラップして「好き」が深まったのかもしれないね。

とんこ ムーミンと共に人生を歩んできてるんだね。今までこの「FREEK TALK」を2回やってきたけど、1回目のテーマが「ハイキュー‼︎」、2回目が「生ハム」で、どっちも高校生、大学生と割と最近ハマったものだったのね。昔から好きだったものについて話してもらうのって初めてだなあ。

チャプ太郎 こんな好きに語らせてもらえるところなんてないから、ありがたいです。より愛が深まる時間になったよ。

とんこ 企画者冥利に尽きます!


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