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まだ夏ですが、冬を生きるということ。

コロナ禍の続く中、ネガティブケイパビリティとか
冬を生きるとか、そんな言葉を励みに日々生かされています。

昨年芥川賞を受賞した「推し、燃ゆ」の作者である宇佐美さんが、
受賞の言葉の中で「明けなさに向きあいたい」と語っています。
ネガティブケイパビリティや冬を生きるという感覚に近いものを感じます。
失恋した時には、失恋の詩を聴きたくなります。
それと同じで、絶望した時には、絶望の言葉の方が、
心に一層沁み入ることがあるような気がするのです。
シェークスピア『マクベス』の「明けない夜はない」、
原文は、”The night is long that never finds the day.”です。
直訳すると「夜明けが来ない夜は、長い」。
マクベスの邦訳には、これとは別に、
「朝が来なければ、夜は永遠に続くから」というものあります。
更にもう一歩踏み込むと、
「明けない夜もある」と訳すのはどうでしょうか。
宇佐美さんの言葉を読んでそう思いました。
大切な人を失ったとてつもなく深い悲しみは、
いつまでも続くという意味です。
そんな「明けさな」の中に、
いかに希望の灯火を小さくても
灯し続けることができるか、
それが私たちの考える
ポジティブネットのある社会なのかなと。

そんなことの大切さを教えてくれる映画に会いました。
映画のタイトルは、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』。
内容は観ていただくとして、
まあハリウッド映画の大作とは対極の映画。
舞台はアメリカ東海岸の小さな実在の街、
マンチェスター・バイ・ザ・シー。
アメリカ・ボストン郊外で
アパートの便利屋として働くリーは、
突然の兄の死をきっかけに
故郷マンチェスター・バイ・ザ・シーに戻ってきた。
兄の遺言で16歳の甥パトリックの後見人となったリーは、
二度と戻ることはないと思っていたこの町で、
過去の悲劇と向き合わざるをえなくなる。
なぜリーは心も涙も思い出も
すべてこの町に残して出て行ったのか。
なぜ誰にも心を開かず孤独に生きるのか。
父を失ったパトリックと共に、
リーは新たな一歩を踏み出すことができるのだろうか・・・・?
癒えない傷も、忘れられない痛みも。
その心ごと、生きていく。
そんなテーマの映画です。
そして、何より音楽が素晴らしかった!
バロック音楽の作曲家、
トマゾ・アルビノーニ(1671-1751) の作品を編曲した
『アルビノーニのアダージョ ト短調』が
最初から最後まで丸々かかり、
主人公リーの孤独と哀しみを見事に表現しています。
ちなみに、2015年の成島正監督作品
『ソロモンの偽証/前篇・事件』にも使われていました。
その他の音楽も秀逸、ぜひご覧ください。
以下のサイトに音楽集められていましたので、
ご参考に。

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』音楽一覧

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