保母須弥也先生の『オーラル リハビリテーション』を読み進めながら咬合の勉強 その5

オーラルリハビリテーションとは

ナソロジーの理論に基づき、ヒトの咀嚼器官の形態、機能、審美を改善することを主目的とした歯科医療の一分野と定義されます。従来の補綴学では咬合の基準を歯牙と歯牙の関係にとどめていたのに対し、オーラルリハビリテーションでは咬合の基準を頭蓋と下顎の関係にまで拡大し、人の咬合をより大きな視点から捉えます。

オーラルリハビリテーションの目的

オーラルリハビリテーションでは、歯牙と顎関節の調和を究極の目的としています。そのため、単に全顎補綴を行うことがオーラルリハビリテーションではありません。オーラルリハビリテーションのすべての症例が全顎補綴を必要とするとは限らず、例えば、1歯、2歯の補綴であっても、顎関節の運動との調和を考慮していれば、それをオーラルリハビリテーションと呼ぶことができます。

オーラルリハビリテーションの診断

以上のことから、オーラルリハビリテーションの実施には精密な咬合診断が必要となります。

咬合の診断を口腔外で行うためには、患者の下顎運動を咬合器上に正確に再現することが特に重要です。McCollumは1921年に下顎のヒンジアキシスの測定法を開発し、さらにパンタグラフと呼ばれる下顎運動の描記装置を考案しました。これらを利用して患者の下顎運動を精密に測定し、咬合器の運動量を調節する方法を考えました。その結果、患者の下顎運動を咬合器上に精密に再現し、オーラルリハビリテーションを理論通りに実現する糸口が発見されました。

McCollumの主張

McCollumは、「下顎運動の主導権は顎関節にあり、咬合治療する時には常に顎関節に順応するべき」と主張しました。そして、その目的を達成するためには、歯牙の一部または全部を補綴的に修正することも必要であると述べています。もしMcCollumの主張が誤りで、顎運動の主導権が歯牙のみにあるのならば、顎運動との調和は不要となり、歯牙と歯牙の噛み合わせだけを考慮すれば良いことになりますが、今日そのような意見を支持する人は少ないと考えられます(1970年時点)。



補足

本文章は、1970年時点での情報を元に書かれてます。現在のオーラルリハビリテーションの概念や治療法については、最新の文献や専門家の意見をご確認ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?