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歯科技工7月号より「口腔内データおよび受発注システムの一元化に関する一考察」を読んで
口腔内データおよび受発注システムの一元化に関する一考察
著者:藤田耕介(株式会社横浜トラスト歯科技工研究所)
はじめに
歯科技工業界は今、大きな変革の時期を迎えています。デジタル技術の進歩により、より効率的で高品質な歯科技工が可能になる一方で、新たな課題も浮上しています。本稿では、口腔内データおよび受発注システムの一元化に関する考察を通じて、業界の未来を展望します。
1. 日本のデジタル化の現状
日本のデジタル化は、残念ながら世界的に見て後れを取っています。
2023年の世界デジタル競争力ランキングで日本は32位(前年29位)と過去最低を記録
アジア諸国(韓国6位、台湾9位、香港10位)との差が拡大
レガシーシステムの複雑化や老朽化がDXの障害となっている
この状況は、歯科技工業界にも大きな影響を及ぼしています。
2. 歯科技工業界のデジタル化の課題
歯科技工業界では、CAD/CAMシステムの普及によりデジタル化は進んでいますが、まだ課題が残されています。
製造工程以外でのIoT化が遅れている
既存のアナログ処理への慣れなど、業界特有の要因がDXを困難にしている
これらの課題を克服することが、業界の発展には不可欠です。
3. 新たな展開
しかし、業界には希望の光も見えています。
2024年6月からのCAD/CAMインレー制度導入
情報通信機器を用いた連携による歯科技工士連携加算の新設
これらの要因から、IOSによる印象採得などのデータ活用がさらに進むと見込まれます。
4. ラボの課題
一方で、歯科技工所(ラボ)には新たな課題が生まれています。
歯科医院は個々のニーズに合わせてiOSとクラウドサービスを選択
ラボは全ての取引先のiOSシステムに対応する必要がある
現状では、さまざまな経路からデータが転送されるため、以下のような問題が発生しています:
担当者は各経路にもれなくアクセスし、データを取得しなければならない
このチェック作業は煩雑で、ミスを誘発しやすい
担当者不在時のデータ処理の引継ぎが困難
納品書や請求書作成時に、歯科医院の歯科技工指示書情報を基に再入力が必要
5. 今後の展望
これらの問題を解決するために、以下の対策が重要です:
口腔内データおよび受発注システムの一元化
歯科医院とラボが同一のシステムでセキュリティ化されたクラウド上で管理
まとめ
現在、このような要件を満たそうとしているクラウドソフトは2社存在します:
エミウム株式会社「エミウムクラウド技工」
ホワイトクロス「技工くん」
しかし、歯科技工所がこのようなクラウドソフトを求めている一方で、歯科医院側との意識の共有がなければシステムは達成されません。歯科医療の質の確保やセキュリティの課題を解決するためには、歯科業界だけでなく、国の政策としての取り組みも必要ではないでしょうか。
デジタル化は避けられない潮流です。歯科技工業界が一丸となって、この変革に適応し、より良い歯科医療の実現に貢献していくことが求められています。