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181 『アオのハコ Prologue』原作:三浦 糀小説:七緒

 面白かったです。発売日に13巻と一緒に買い、翌日に頁を開いたのですが、今年10月からの俄かファンの私にも満足の三篇でした。一話目が星を観る話し、二話目が夢佳の話し、三話目が針生先輩と花恋の話しですが、どれも青春のぎごちなさ、瑞々しさ、清々しさの正に「アオのハコ」、青春小説以外のの何物でもありませんでした。
 一話目の冒頭は千夏先輩が猪股家に居候してから暫く経った後、といってもインターハイへの県予選の前で、「大喜くんなんら大丈夫だよ」と激励した後の間。大喜くんがその時、千夏先輩がバドのサーブ打てなかったことに言及してました。
 そして大喜くん、一年前の夏に思いを手繰る。当時は針生先輩とは中学のバドで見知っていたものの、女バスの千夏先輩とは接点がなかった頃、夏休み終わり間近、大喜くんは雛ちゃん、匡くんと夏休みの宿題にてんてこ舞い。尤も匡くんだけはもう読書感想文だけ。微笑ましく読み始めることができました。
 特に雛ちゃんは原作でも明かされた全中四位の新体操選手。いくらスポーツ強豪校でも学業が疎かだと格好がつかない。そしてそれは夏休みの遊びの思い出が作れないことを意味してて。
 だから雛ちゃんは三人でどこか遊びに行きたいと言い出し、その過程がやはり微笑ましいドラマになっていました。最初はプラネタリウム、それが栄明高校屋上での流れ星を観る会に変わり、千夏先輩と花恋、針生先輩が登場するのに説得力与えてる。
 計画が変遷する間に大喜くんや匡くんが高校の部活に参加する話しになり、そこで針生先輩と久しぶりの対戦とともに、女バスの千夏先輩を見かけることができた。大喜くんは知ってるけど千夏先輩も実は初対面でなく、千夏先輩が高一のとき、中三だった当時は名前を知らない少年の口惜しい表情を見たことがある。千夏先輩もその一年前に同じ感情を持ったため、わかるよ、と心の中で声をかける。大喜くんと千夏先輩、同じ魂を持っていると早大に言いたいほどいい話しでした。
 そして高一のときの千夏先輩には県予選準優勝でインターハイを逃したことの他にもう一つ、夢佳という心残りがある。それが実は木戸夢佳が主人公の第二話の伏線になってる。そして小二から千夏と一緒にバスケをやっていた夢佳、どうもバドの兵藤将太と対称関係だと思えて仕方ない。
 単純な話し、兵頭さんはテニスから転向したか子供の頃からバドのジュニアで活躍してたが、後から始めた同学年に追い上げられた過去があるのでは。それは夢佳と同じ状況で、違うのは夢佳が競争に耐えられず兵頭さんは踏ん張ったこと。それが兵藤さんのバドをカンストにしてるとしか思えないのです。
 第三話は針生先輩と花恋の話し。そこで当然兵藤さんも出てきて、二人の仲の(本人はそれと知らないまま)波風を立たせる。しかし恋人付き合いは高二のとき、大喜がバド部に入った後なので、曖昧な関係で話しは終わる。原作を読んでその未来を知って安心してるからですが、この中途半端な終わり方が面白いと思いました。

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