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143 バタフライエフェクトとしての『アオのハコ』

 これはちょっと凄いアニメ。今季目ぼしいのは「チ。」、『らんま1/2』に「ブルーロック」くらいと油断していたところ、まさに『タッチ』の正当な後継、青春ど真ん中の部活アニメに熱中するとは自分でも思いもよりませんでした。
 何せリア充の話、それは気分は「青春コンプレックス」の私からしたらとっくに卒業して興味をなくしてもいい物語。『ヤマノススメ』は最初は学校の外、山に主人公を導いたし、『ぼっち・ざ・ろっく!』では喜多ちゃん以外の結束バンドの三人は間違いなく陰キャ。君ソムの二人は昼の学園生活になじめず、夜空に夢中になった。ロシデレは学園物に政治を持ち込んだ差別化に興味を持ちました。他に『氷菓』の再放送があったとはいえ、近年の私の学園物のアニメの興味は(キャラクター、あるいは作品として)アウトサイダーだったことに間違いないのです。
 しかし本作は部活に恋愛を掛け合わせた、あだち充が導入したミームをあからさまに保持したマンガでアニメ。私のファン歴は正にアニメが始まってからで一か月もないのですが、なぜここまで夢中になれたのか、実は簡単に第一話と答えることが出来ます。
 先週まで4話まで放送されているのでネタバレもないと思いますが、予定では日本では高二になるはずの四月から両親と一緒に海外に行くことになっていたのを、千夏ちゃんは断固拒否して日本に残ったこと。そこに私はnoteでも度々言及してる、「バタフライエフェクト」をかぎ取ったのです。
 NHKが番組名にしてるのでNHKの専売特許と思われるかもしれませんが、実は気象の研究で発見された、ノーベル賞の対象にもなった科学の概念。とはいっても量子論や相対論のようにじっくり学ばなければ凄さや価値が分からない論ではないです。それは一言、「ちょっとした決断、あるいは行動の判断が、後で取り返しのつかない状況を生む」というもの。
 現実の具体例は各自思いついて下さいということで、実は前述の通り、『アオのハコ』では千夏ちゃんが日本からいなくなるという状況は起こらなかった。しかしそれは4話までではまだ描かれていない、ご両親への千夏ちゃんの必死の説得があったからのはずで、その行動で千夏ちゃんは責任という重み、インターハイ出場という約束をすることになる。つまり紙のしわが完全には元に戻らないように、現状に復しようとする行動は別のゆがみを生む。実はアニメは大喜くん視点なので以上の過程は描写されてないけど、鹿野家では大体そんな話が展開されたと憶測できたので、それがまさにバタフライエフェクトの(物語の)実例と理解できたのです。
 つまり嫌な状況があるなら自分で変えろと、そんな強烈なメッセージを読み取ったのです。そんな話だから(キャラクターとしても、作品としても)信じることが出来て一遍にファンになり、思い余って二次小説を書き始めたのです。

 作画や背景美術も凄いですがテーマも正に今の時代のものと思うことが出来、アニメの放映分が終わり次第原作マンガを買っていこうと思っています。(大塩高志)

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