感激!駅の売店の小梅!
駅の売店で「元気の出る小梅」なる商品を見かけた。幕の内弁当のご飯にのっているような小梅が20粒弱ほどパックされたもので、目に入った瞬間「これだよ!これこれ!」と感激して手に取り、瞳孔全開でレジに向かった。
僕は昔から小梅が好きだ。弁当を食べる際も小梅は中盤以降の楽しみとして温存し、「まだだ……まだ待て……まだ…………今だ!!行け!!!!」というSWATみたいなスタンスで食べるタイミングを伺っている。カリカリとした食感が最高で、これをたくさん食べるというのは長年の夢だったのだ。
もちろんスーパーでまとまった個数の小梅を買うことはできるし、実際に買ってみたこともあるのだが、いまいち気持ちが上がらなかった。こういうことじゃないんだよなあ、みたいな。結局、100個くらい入ったパックの小梅を賞味期限内に食べ切ることはできなかったと思う。
思うに小梅というのは出先で食べてこそなのだろう。弁当に入っていたり、ホテルの朝食バイキングで見かけたりというイベント性込みで僕は小梅が好きなのだ。家の冷蔵庫に鎮座されても、それはちょっと違うのである。
そんなわけで、「駅の売店で買える20粒弱の小梅」というのは、僕の理想が完璧に具現化された商品と言ってよく、当然即買いせざるを得ないし、商品化を提案した人に会ったらきつく抱きしめざるを得ない。その人がトロッコ問題で片方の線路に一人で寝転んでいる場合は、申し訳ないがたくさんの人命をごめんなさいせざるを得なくなるのは必然なのである。
すごいのは、この商品を見る瞬間まで僕が自分の中にある「小梅を出先でちょっとまとまった数食べたい」という欲求に気づいていなかったことだ。人の無意識の欲求に気づいてそれを形にするというのはとても難しい。答えを見れば簡単なことなのだが、簡単だからこそ気づかない。そこを見事に掬い取って社内でプレゼンし、喫煙所での地道な根回しによって頭の固い上司共を丸め込んで商品化に漕ぎ着けた(イメージ)のは本当に素晴らしいことだ。読みたい。その経緯を田口トモロヲになって読みたい。
「元気の出る小梅」。その名の通り、この商品を見た瞬間から僕はすっかり気分が上がって元気になり、口角も上がり、心臓の鼓動が早くなり、瞬きが増え、穴という穴から液体を垂れ流し、焦点の合わない目で要領を得ないことを口走り、両手をぶんぶん振り回しながらボックスを踏み出した……と言うと大袈裟ではあるが、まあとにかく多少元気にはなったのだ。
そんなわけで、小梅のおかげで僕は非常にいい気分で新幹線に乗り込むことができたのである。実際に食べてみたら20粒弱でも多くて持て余してしまったのだが、まあ、それはそれだ。