幽霊のポーズ

テレビ局のフロアの机の上に小冊子が置いてあるのが目に入った。表紙は両手をだらりと垂らし「幽霊のポーズ」を決めた男性二人の写真。夏だし心霊特集が何かだろうか。その手の話は好きなので嬉しくなってよく見てみると、幽霊ポーズだと思っていたのは、両手にアオリイカを持って釣果をアピールしている釣り好き男性二人であった。ぶら下がったイカが、だらりと垂らした手に見えたのである。

僕はがっかりして小冊子から目を離した。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」と言うが、「正体みたりアオリイカ（正確には両手にアオリイカを持った男）」のパターンもあるのだ。知らなかった。人間は自分の見たいものを見ようとするという。心霊特集だったらいいな、という僕の思いが現実を歪ませたのだろう。夜釣りの写真だったのも紛らわしかった。晴天の川釣りの写真だったらこんな見間違いは起きなかったはずである。

「両手にアオリイカを持った男性の霊」という設定の写真だった可能性もゼロとは言えない。もしそうだとしたら中身を読みたすぎる。だが、普通に考えてそれはないだろう。さすがに。