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プチトマトとオクラとナスの成長を促す

旅館を出るときに布団とか浴衣をきちんと畳むのは実は旅館側にいらない手間を増やしている、的な雑学がある。へぇ〜とは思うが、それを振りかざしてきちんと畳む派の人を見下すタイプの人にはびっくりする。びっくりする、というのはだいぶオブラートに包んだ言い方で、端的に言うと嫌いである。

それは僕が布団や浴衣をきちんと畳む派だからではない。むしろ逆で、そういうのがめんどくさくて極力やりたくない派だ。だから、件の雑学を知ったときは、布団や浴衣をぐしゃっとしたまま部屋を出る大義名分ができたと思って嬉しかった。やったー!って思った。

その一方で、布団や浴衣を当たり前のようにきちんと畳む派の人は偉いなあ、とも思っている。なんといっても人間ができている。お金を払っているんだから、とかいくらでも理由はつけられるのに、本来やらなくてもいいはずの雑務を自分からやっているのだ。たとえそれが無駄なのだとしても、その心意気は尊い。

だから、「それ実はむしろ向こうにとって迷惑なんですよ!」と偉そうに言ってくる系の方々には、「そうかもしれないけど相手を思いやる気がある分僕とかあなたよりはマシだろ」と言ってやりたくなる。

ネットでは特に「一見いいことに思えるこれ、実は迷惑なんですよ!」的な言説がウケやすく、それをこの世の理を全て知っているみたいな顔して声高に発信する嫌なインフルエンサーと、そこに同調することでお手軽に賢くなった気になる嫌なフォロワーが溢れており、見ていると全員にまとめて牛の糞を水で溶いたものをぶっかけたくなるのだが、それは僕の人間としての未熟さゆえの感情だ。

布団と浴衣をきちんと畳む派の人は、きっとそれを見ても「そうなんだ」と穏やかに微笑むのだろう。牛の糞を水で溶いたものも、家庭菜園に撒いてプチトマトとオクラとナスの成長を促すに違いないのだ。

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