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まだ血の味

またやってしまった。乾燥気味の下唇の皮が前歯にくっつき、そのままめくれて血が出る、というやつだ。これをやってしまうと、傷が小さい割にピリピリ痛いし血はなかなか止まらないしで最悪なのである。やってられない。

自分でやったことだが、いや、だからこそ腹が立つ。何が腹が立つって、

唇が乾く→皮にささくれが生じる→歯が触れてくっつく→動いた歯に持って行かれて皮が剥ける→血が出る

という、やけにシステマチックな流れで構成させている点だ。舌を噛むとか、小指をぶつけるとかのシンプルなヘマよりも、流れがある分より腹が立つのだ。何をちょっと回り道をして魅せるやり方をしているんだよ。観光列車じゃないんだから。畜生。

悔しさと苛立ちを堪えながら唇を舐めた。まだ血の味がした。


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