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麺つゆを入れてはならない

空き家の塀の中に草がぼうぼうに生えていると「いいなあ」と思う。田舎で緑に囲まれて育ったので、塀を遥かに越える高さまで伸びた草たちを見ると懐かしい気分になるのだ。塀で囲われていることで、でっかい盆栽みたいになっているのもいい。人工物と植物が混ざっている感じも好きだ。管理してる側としてはいろいろ厄介だったりするのだろうが、こちらは一切関係がないので、無責任に「いいなあ」と思って写真を撮ったりするのである。申し訳ない。申し訳ない、とか言いつつ特に申し訳なく思っていない点に関しても申し訳ない。

まだまだ厳しい残暑が続いている。駅前に設置されているミストを噴射するマシンの前で暑さを逃れていたが、もし何者かがこのマシンに麺つゆを入れたら大変だなと思った。何せ行き交う人が知らぬ間に下味をつけられてしまうのだ。『注文の多い料理店』みたいなシステムである。クマみたいにでっかい犬を連れておかなければ。テクノロジーは使い方によっては恐ろしい結果を招くことは歴史が証明している。「絶対に麺つゆを入れてはならない」という当たり前の意見を、人類一人一人が繰り返し胸に刻んでおかなければならないのだ。


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