留学話6
NYのがんセンター、Memorial Sloan-Kettering Cancer Center (MSKCC)に留学というか就職したのは1999年でした。MSKCCは世界でも極めて有名ながんセンターですから、立派な病院なんだろうと思って行きましたが、意外と古くてボロボロ(今は立派な高層の研究棟が建っていますが)、9階のオフィスに行くエレベーターも心許ない古さで途中で止まったり、いつも冷や冷やでした。いくつか研究棟が分かれてありますが、皆と同じ旨にスペースがないとのことで研究棟の一角をもらいました。前任者も泌尿器科関連のマーカーの基礎研究者で有名な人でした。周りの部屋の人が、今度はどんな研究者が来たのかと興味津々で質問しに良く来ました。6ヶ月ほど経ってやっと落ち着いたと思ったら、ボスから部屋を移ってくれと、普段から無理難題を言う人ではないのでどうしたんだろうと思ったら、いわゆる学長に当たる人が入れ替わり、新しい人が使いたいとのこと。何で学長が基礎研究棟にと思ったら、何とレトロウイルス専門のノーベル賞学者のヴァーマス先生とのこと。流石に逆らえず素直に明け渡しました。しかし、そのヴァーマス先生の格好いいこと! 多分、50歳くらいだったでしょうか。 バックパックを背負い自転車で、服装も極めてくだけた格好で。これこそアメリカだなと感じました。放射線療法や抗がん剤治療や世界の医療の歴史を刻んできたMSKCCの底の厚さを実感しました。