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非線形偏微分方程式、発展方程式論への小路(第1回) 《通算では、第16講》

第16回です。大学院シリーズ第1回でもあります。発展方程式に入ります。まずは、序章。単調作用素の初歩から話します。


実際の講義の様子は、その講義を実際にやる週の間、youtube で、プレミア公開いたします:


https://www.youtube.com/channel/UCjSunsEjBrfkZP0IdXW62EA



から、該当週の講義を閲覧できますので、ぜひ、ご覧下さい。もちろん、無料です!




Remark: 著作権は放棄してませんので、再配布等は禁止です。

All-Right-Reserved©IsamuOhnishi


* 見つけたら相応の法的処置を取ります。


(この講義草稿自体は有料になっています。その理由はいくつかあり、いろんなところに書いてあるのですが、もっとも大きな理由は、講義草稿をネット公開してしまうと、それをDLすればいいや!ってなって、講義そのものに来なくなってしまう人が多いんじゃないか、と思うことです。それは残念です。時々、反応を見たり、ときには、ちょっと当ててみて、昔の内容を覚えているか試してみたり、そういうことが対面講義の良いところと思っています。有料にしたのは、むしろ、だから、講義にくればDLしなくていいや!って思っているけど、昨今の事情から、講義の内容は、レガシーとして残しておきたいということです。これが一番、大きいでしょうかね?)


今回は、ちょっと違ったイントロを書いてみました。本稿の1章の導入に書いたものですが、いつも同じでなくてもいいかなと思いました!?少し、昔の思い出話も書いています。もう、いい年齢になったんだなぁ!って思います。(w


 通算での第16講では、発展方程式論の初歩をお話しするための第一歩として、単調作用素の話をしたいと思います。これをup する時点で、第15講までのうちのいくつかはアップしていません。いくつか理由がありますが、今年の秋学期は、4年生と修士1年生向けの講義をほぼ同時並行してに行うので、М1向けの準備も同時に行っているのですが、それも、同時にup していくことにしたからです。up しながら、前の講義の内容を見直したり書き直したりする方が合理的だと思いました。なので、幾つか保留にして、第16講から先を上げ始めます。

 私の話は、主に、非線形放物型偏微分方程式論への応用解析を目指して、発展方程式論の始まりの初歩のところを大学院生、特に、修士1年生くらいの学生たちにお話しすることなんですが、その意味では、単調作用素は、非線形楕円型作用素の抽象化のようなものです。これをキチンと押さえておかないと、非線形放物型と関わる発展方程式論へ進むと無理がいろいろ出てきます。この話の内容は、H. Brezis 先生のPh.D 学位論文にその明確な端緒を認められるそうです。ブレジス先生は、何度か来日されたこともあり、筆者も2度、日本の教壇に立たれて講演をされたのを見た記憶があります。もう、当時(1990年代)では、ブレジス先生の御興味は、液晶の相転移と関係したベクトル値関数(本来的には、液晶の「棒状分子」には、”方向”はあるけど”向き”はなく、適切に同一視を行った射影空間値であるのですが、)を未知(従属)変数とするような、変分構造を持つような非線形楕円型偏微分方程式の問題に移っておられたようで、非線形半群理論や発展方程式のお話しは聞くことが適いませんでした。

 余談ですが、この液晶の相転移と関連した非線形楕円型偏微分方程式の問題は、来日されていたブレジス先生が、俣野博先生(当時、東京大学大学院理学系研究科数学専攻教授)と、御茶ノ水駅近くの喫茶店で、何気なくご歓談されたとき、試みにお話しされた問題が端緒だったそうです。私は、いつも大切なときにはその場にいないのですが、この話を聞いた時は、そばにいて、その話を聞いたり、そのような場の雰囲気に触れてみたかったと思ったものです。(自分にも何かできたかも?とはまったく、思いもしませんでした。その場の雰囲気に触れてみたかったのです。(笑) )さらに、余談の余談を続けます。ブレジス先生は、小柄なお体一つで、特に、何にも持たず教壇に登られ、黒板の真ん中に、当時、御興味がおありになったのであろう非線形楕円型偏微分方程式の具体形をサラサラッと書かれた後、歯切れのよい綺麗な(ときに語尾がフランス語っぽくなりはするけど、それはそれで御愛嬌な)英語で、飄々と御講演されていました。具体的な問題に対し、抽象論を援用しながら、キチンと土俵を決め、枠組みに沿った解を作られた後は、興味ある現象から示唆される解の振る舞いや幾何学的特徴を数学的に捉えるため、特別な座標を取って、ガチガチ計算するようなところもあるし、自由自在な学風で、当時、共同研究者であった、M. Coron 先生, A. Bahri先生などのお仕事をも引用されながら、問題の所在、興味ある点、自分たちの結果、困難点、克服した点、などをサラサラっと述べられていました。フランスの数学者のあるべき姿の一端を垣間見れたとても素晴らしい瞬間に立ち敢えて、感謝感激したのを覚えております。

 閑話休題。第15講までの内容はもちろんですが、レギュラーの解析学のコースで、関数解析の重要事項は一通り習っていることが前提になっています。しかしながら、面白いところや注意すべき点は、演習問題にもしていますので、いろいろ調べて解いてみたり、類題にも挑戦したりしてみてください。非線形、不連続、多価がキーワードになるような非線形半群の理論は、学び甲斐があります。その深遠な世界への玄関の前の小路へ続く小門への観光案内になって、一人でも二人でも、その門をくぐり、その小路を自分の足で歩き玄関までたどり着いて、そのドアの呼び鈴を鳴らす若い人が出てくれれば、望外の喜びと存じます。


以下、有料となります。<(_ _)>




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