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新しい清掃工場は進んでいた|京都市南部クリーンセンターの社会見学

(公財)千里リサイクルプラザ主催の環境スクールに参加しています。
このスクールについては下記記事で紹介しています。

第6回講座は、京都市南部クリーンセンターと見学施設である「さすてな京都」、それに環境学習施設である「京(みやこ)エコロジーセンター」への見学バスツアーでした。

この記事では前者について印象に残った3つの点をまとめています。

新しい清掃工場は進んでいました。



1. 博物館のような見学用展示

この工場は5年前である平成元年(2019年)に竣工した比較的新しい工場です。そして、環境学習施設「さすてな京都」が併設されています。

この「さすてな京都」、単なる見学コースを大きく超えたものでした。

【エントランスホール】
玄関を入ると、エントランスホールがあり、京都市のゴミの状況が数字や写真、映像で表されています。見学者はここで、見学についての大きなイメージを持つことになります。

【レクチャールーム】
そのあと、レクチャールームで、京都市における環境への取り組みを紹介するビデオが上映されます。環境への取り組みの一環であるのだな、と頭の中の枠組みを準備することになります。

【見学上の注意ビデオ】
また、別の短い動画を使って、見学での注意点ーリチウムイオン電池の混入により発火があると警報がなる場合がある。その際には係員の指示に従うーが説明されます。この電池の発火や爆発がどこのゴミ処理工場でも問題になっている問題だそうです。この工場で爆発があった時の記録ビデオを見ると、参加者の多くから驚きの声が上がっていました。

このあといよいよ工場の内部を処理工程に沿って見学していきます。持ち込み込みの受け入れ専用の投入口、大型ゴミの粉砕装置、燃えるゴミの集積ピットから焼却炉へ移すクレーンなどを見ていくことができるのですが、ただ見学窓からのぞいて説明を聞くのではないのです。

【ビデオ+口頭説明】
説明ポイントには、博物館にあるようなカラーの説明版があったり、分かりやすい角度から設備が動く様子を撮影したビデオや見えない内部の様子をCGアニメーションで説明する動画が準備されており、ガイドがタッチパネルでボタンを押すと、大きな液晶ディスプレイにその動画が再生されるようになっていたりするのです。ビデオは言語が選べるようにもなっていました。

AR技術を使って焼却炉の中で炎が燃えているイメージをタブレット上で見せるポイントもありました。

ガイドが行う口頭の説明にデジタル技術がうまく組み合わされていました。

【煙突の展望室】
また、焼却炉の煙突の上部に展望室が設けられており、説明を受けた物ー持ち込み込みの計量所やバイオガス用の発酵タンク、金属リサイクル工場といった施設ーを目で見て確認したり、工場が立地する土地のなりたちの説明を受けたりすることができます。

見学日は晴れていたため、8kmほど離れた京都駅前にある京都タワーや比叡山、愛宕山が見えたり、焼却灰の処分地である谷につながる道路まで見ることができました。

このような展望室を持つ清掃工場は国内に5か所あるそうです。説明と実物がつながり、理解が心に刺さる気がしました。

【洗練されたオペレーション】
ちなみに、ガイドツアーは2班に分かれていたのですが、展望所でかちあわないように無線機で連絡を取って進み具合を調整していました。

私は施設を見る際に窓ガラスの清掃状況をチェックするのですが、どの窓も汚れなく管理の良さを感じられました。

2. ゴミの減量と分別の必要性を納得させる展示内容

啓発施設として大切なのがこの点だと思われますが、成功しているように思いました。

【ゴミの減量】
焼却灰の埋立処分場としている山奥の谷にあるダム状の施設「音羽の森」の経過をたどる写真に唸りました(声には出していませんが)。

焼却前のゴミの容量は、焼却により20分の1の灰になり、その灰は毎日専用車で「音羽の森」に運ばれます。ゴミの量だけ谷が埋まっていくのです。完成時の写真から、年を追って埋まっていく様子が「見え」るようになっています。

ただ、良い話もあって、ゴミの減量によって当初の予定よりも長い間使える見込みとなっているらしいのです。このイメージがあると、限られた処分地を長く使うためにできるだけゴミを減らそうと感じる人は多いように思いました。

【ゴミの分別】
焼却炉の説明ポイントに金属と石の塊のような大きな物体がケースに収められて展示してあります。

これは何かというと、「燃えるゴミ」の中に混ざっていた空き缶などの金属が焼却炉の底に溶け落ちて固まったものでした。

「資源ゴミ」として出されれば、専用の機械に通されてアルミや鉄などにさらに分けられて売却され、リサイクルに回る。「燃えるゴミ」として出されると、焼却炉の底の「デブリ」となり、35年と言われる炉の寿命にも影響する。

…このような説明を実物と合わせて聞くと、一手間かけて分別しようという気持ちになる人は多いと想像できます。

行動の結果を現実の物や数字で見せられると、説得力が違います。
「上手いっ!」

3. 先進的な処理設備

私が(素人なりに)感心したのは次の二つでした。

【生ゴミをバイオガス化して発電】
これは全国的にも先例のない試みであるようです。

まず、可燃ゴミとして集められたゴミ(全量ではなく処理可能な一部)を生ゴミとそれ以外に装置で分別します。基本的には重量で分けるようです。

次に生ゴミを発酵タンクに入れます。(私の記憶に間違いがなければ)2週間かけて60℃で発酵させ、バイオガスを取り出します。

そしてそのガスを燃焼させて発電します。タンクに残ったドロドロの残渣は乾燥させ、燃焼ゴミと一緒に処理します。

ゴミの研究をしている参加者のお一人は、可燃ごみから生ごみを自動で分別する技術がすごい、と話しておられました。

ちなみに、
このバイオガスを使った発電と「燃えるゴミ」、「大型ゴミ」を破砕して取り出された可燃物を燃やして行う発電を合わせたものの3分の1でこのプラントの使用電力を賄うことができ、残りの3分の2は電力会社に売却しているとのことでした。

【クレーンの自動運転・排ガスの無臭化・アルミの分別】
私が知らなかっただけで、以前から行われているのかもしれませんが、この3つの小技(?)も印象的でした。

可燃物が集まってくるピットから、時間あたり処理可能な量のゴミを巨大なクレーンを使って燃焼炉に投入します。これが自動だそうです。30分に1回、ゴミがたくさん溜まっているところを(AIを利用して?)探して、2つある投入口に順番に入れるのが自動とは!24時間連続稼働だそうです。

ごみから出る臭いが外に出ないように、臭い成分は全て燃焼され、脱硫され、さらに活性炭を通されるとのことでした。ニオイも燃やすのですね。(そういえば数年前に我が家の台所に購入したグリルも魚の匂いを燃焼すると書いていました。)結果として、煙突から出るのは水蒸気だけとのことでした。

鉄が磁石で分けられるのは分かりますが、プラスチックなどとアルミも分けることができることを説明する実験装置がありました。磁石を回転させることによってアルミの中に渦電流が生じて磁石部分から弾かれる現象を利用するということでした。


ふりかえり

この見学は、「環境スクール」を受講する最大の動機だったのですが、期待に違わない内容でした。

京都市の約120校の小学校の社会科見学を毎年受け入れているとのことでした。

小学生が理解して家庭で話せば、確かに大人が行動を変えることにつながるでしょう。また、小学生たちが大人になったらゴミについて「賢い市民」になっていくでしょう。

しかし、大人には全員参加の見学の授業はありません。
大人にこそedu-tainment(楽しむ中で学ぶ)が必要かもしれません。

処理の仕組み、経済性、環境性能など踏み込んだ理解をわかりやすく提供してくれる「さすてな京都」は、大人の興味にも十分応えて影響を直接与えることができる施設であると感じました。

そういえば、NHK朝ドラの『虎に翼』も、ついつい続きを楽しみに見てしまう魅力と視野を広げてくれる学びが融合していました。社会教育のフィールドは全然違いますが。


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オオニシ チヒロ
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