「ネパールの『吟遊詩人』―映像音響資料の当事者との共有」@みんぱくゼミナール | 大人の学び
2024年8月17日(土)、第548回 みんぱくゼミナール
「ネパールの『吟遊詩人』―映像音響資料の当事者との共有」
講師:南真木人(国立民族学博物館教授)
に行ってきました。
南先生は、人類学専攻で、南アジア、特にネパールの社会を調査研究されている、と講師プロフィールにありました。詳しくは↓
楽師カースト ガンダルバと擦弦楽器サーランギの変化
ネパールにもカースト制度があり、ガンダルバはその一つで、生業は楽師。
元々は村々を旅して歩き、サーランギという擦弦楽器の弾き語りをしていた。特別な日に門付(かどづけ)をしていた。門付とは「人家の門前に立って音曲を奏するなどの芸をし、金品をもらい受けること。また、その人。」
1970年代頃からは、外国人旅行者を顧客とするようになり、旅行者の多い街に集まり「旅する吟遊詩人」ではなくなった。土産物の露天や店舗での商いをする人も多くなった。
ガンダルバは不可触カーストの一つのため、差別から逃れるためにサーランギの演奏をやめた人は多い。しかし、近年は、フュージョンの演奏で金属弦サーランギを演奏するのを見て、これに憧れて非ガンダルバの人が習い始めている。また、ガンダルバ カーストでない人が楽団を作って祝い事で祝儀をもらったりする例も出てきている。
…というお話であったと理解しています。
自分としては、カーストによる差別が残っている一方、カーストと仕事の結びつきが崩れつつあるという状況が、新しい発見でした。
映像音響資料の当事者との共有とは?
民博(国立民族学博物館)では、今年9月19日から12月10日までの日程で特別展「吟遊詩人の世界」が開催されます。
この企画に向けて、これまでに収集されたサーランギの弾き語りの録音と映像をデータベース化して公開すべく作業を進めておられます。記録された音源またはビデオを、誰でもインターネット上で、時期・場所・演奏者などで検索して再生できるようになります。
これが、「映像音響資料」が指すものです。
では、残る「当事者との共有」とは?
1982年と2016年以降に集められた映像音響資料が、計80奏者237曲あるそうです。
これらを博物館の中だけに留めておくのではなく、複製して現地に返して、「サーランギ音楽の見直しやアイデンティティーを模索する活動」(南先生)に役立ててもらうのが一つ。
もう一つは、返還して終わりにするのではなく、演奏者やその遺族に趣旨を説明して了解を得ながら、調査研究可能な形で整理して公開すること。
この2つを合わせて「共有」と呼び、その姿勢を重視しておられるということだ
…と私は理解しました。
以前館長が話されていた(と私が理解している)
「現代に生きている博物館」の活動の1つの姿だ!
と、私は感動しました。
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展示物を見ているだけではわからない、研究者の思いを知り、研究の現代における意味を理解できる民博の公開講座、いい企画です。
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サーランギの音色にご興味があれば。
ただし、弦の種類によってかなり変わるようです。
腸弦→ナイロン弦→金属弦 と変わってきたとのこと。これは金属弦かな?
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