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sinkhole=陥没穴 | 教科書に出てこないニュース英語 《イギリス》

イギリスの国営放送 BBCで2025年2月20日に配信された記事の見出しで使われていました。

Huge sinkhole swallows up more of Surrey street
巨大な陥没穴がサリー通りをさらに飲み込む

地盤の陥没は、日本の埼玉県で起こっている、怖い現象ですが、イギリスでも月曜(2月17日)の夜に発生し、穴が拡大していることが報じられていました。


◾️sinkholeの訳語は?

sinkholeという語が指す状況はわかっているのですが、適切な説明や訳語がなかなか見つかりませんでした。探索の様子を紹介します。

この語の意味の広がりや辞書による特性の違いを見ていただけると思います。

goo辞書(小学館 プログレッシブ英和中辞典)では、

1 吸い込み,汚水だめ(sink);悪の巣窟
2 ドリーネ(doline)(◇石灰岩台地のすりばち穴)

とされています。

元の意味はおそらく、「汚水だめ」の形なのでしょう。「悪の巣窟」への連想もあるのですね。

ドリーネは近いようですが、日本語の訳語を見つけたい。説明も、今回の事故は石灰岩台地で起きたのではないので、他の辞書をあたってみることにします。

MacOS搭載のウィズダム英和辞典(2020年版)では

1 〘地〙 ドリーネ〘すり鉢状くぼ地〙.
2 長期間多額の費用がかかるもの.

ドリーネの説明が単純になっています。2の意味は、「シンクに水が流れ落ちるイメージで、お金を注ぎ込む必要がある状況」ということでしょうか。

Weblioの研究社 新英和中辞典では

1(流しなどの)穴.
2下水口.

この辞書は本来の意味だけを書いていますね。

Weblioの日本語WordNet(英和)でやっと、記事の状況に近い説明が見つかりました。

坑道(特に石灰岩で)に通じていて、溶解によって、または、洞穴の屋根の崩壊によって作られる地面のくぼみ

坑道や洞穴を下水道管と読み替える必要がありますが、状況にかなり近い説明です。

Weblioの日英・英日専門用語辞書でやっと訳語が出てきました。この辞書は、日中韓辭典研究所(CJKI)によるものです。

吸込み穴,陥落孔,シンクホール

英辞郎にも日本語の訳語が見つかりました。

〔石灰岩台地に見られるような〕陥没穴、〔地面にできた雨水がたまるような〕くぼみ
〈俗〉悪のたまり場

「陥落孔」と「陥没穴」の2つが見つかりましたが、ニュースなどでは「路面の陥没」と言われることが多いので、「陥没穴」で検索をかけると、

朝日新聞やナショナルジオグラフィックの記事でこの訳語が使われていました。

ナショジオの記事では次のような説明がされています。

◆陥没穴とはどのようなものですか?
 基本的には、地下の空洞が原因でできたくぼみに、周囲のさまざまなものが流れ込むことによって形成される、崩壊性の地形、またはお椀型の地形を指します。

最近の事故については、この説明が適切だと思われます。


◾️イギリスの陥没の原因は?

この記事によると、考えられる原因として次のようのことがあると書かれていました。

・弱い砂岩が村の下に横たわっており、これは通常は安定しているが、突然水が流入すると弱い砂岩の岩盤を洗い流す可能性がある。これが空洞を作り、その上にある地面が崩壊した。水は地元の水道管の破裂が原因。

・かつて砂の採取のために村の近くに洞窟が作られていた。過去の洞窟で埋め戻されていないものがあり、その屋根が崩落し、最初の水道管の破裂を引き起こした。


◾️他人事ではない

地上から空洞の有無を調べる機器があるわけですが、凍結を防ぐために深い場所に埋めたり、高低差で水を流すために先に進むほど深くなったりするため、検査には限界があるのかもしれません。また、水道管のような人工構造物の他に、辞書の説明にあったように石灰岩層が溶かされて空洞ができる場合もあるようです。

上にリンクを貼ったナショナルジオグラフィクスの記事では、前兆や対策についても書かれていました。

◆陥没穴ができる場合、どのような前兆が見られますか? また、未然に防ぐ手立てはありますか?

 前兆現象はいつも表れるわけではありませんが、皆無ではありません。まず、家屋や建物の基礎部分に、新しい亀裂がないかどうかよく観察してください。また、突然ドア枠がゆがみ、ドアの閉まりが悪くなったという場合も注意が必要です。

 家屋や建物の外まわりでは、地面に亀裂や小さなくぼみが見つかる場合があります。もしそれらがわずかな範囲に集中していたら、崩落が始まっている可能性も否定できません。また樹木が突然傾き始めた場合は、原因が根の喪失にあるのか、周囲の地盤沈下にあるのかを見極める必要があります。もっとも、その樹木に近寄ることは避けるべきです。

 次に、未然に防ぐ手立てについてですが、もし構造物の地下に空洞が確認できる場合には、土壌をすべて掘り返して岩盤を露出させます。そこへコンクリートを注入し、大きめの石や細かい砂利を敷けば、陥没穴の出現を食い止めることができるかもしれません。この方法は、これまでの実績に照らしてある程度有効だとされています。ただ、今回のフロリダのケースように建物の床下に空洞が潜んでいる場合、確認は非常に困難だと思います。

広く記事を探すと、かなり大きな規模の陥没が各地で起こっていることがわかります。

みんなが自分の身の回りでも起こる可能性があると思って前兆に注意をしておく必要がありそうです。


⬜︎ 続報が出ました。

イギリスの現場では穴の拡大は止まったとのことです。一時的な避難所(体育館)も確保されたようです。

問題として書かれていたのは、借家だった人のこと。持ち家の人は保険会社が世話をする一方で、借家だった人は相談する(talk to)相手がいないとのこと。地方議会は、空き部屋の提供ができる人を探しているそうです。

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オオニシ チヒロ
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