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みんぱく映画会「The Pathパルバティ・バウル 風狂の歌ごえ」;吟遊行者が我々に気づかせてくれること

この映画会に行ってきました。↓


インド北東部の西ベンガル州とバングラデシュからなるのが「ベンガル地方」です。(ちなみに、バングラデシュとはベンガル語で「ベンガル人の国」を意味するらしいです。)

このベンガル地方に、歌と演奏と踊りを行い托鉢を行う修行者たちがいて、バウルと呼ばれます。

ただし、バウルの実際の活動スタイルは多様で、列車の中で歌を披露して施しを受ける物乞いのような人もいれば、音楽活動がメインの歌手のような人や、この映画の主人公のように世界各地でバウルの叡智を伝えている人もいるとのことでした。


「バウル」の意味は、「気が触れた」。
自分をそう位置づけることで、生まれによって決められる身分や宗教から自由になり、欲や妬みを捨てて物を持たない生活を送ります。

そして、身体という小宇宙に宿る神、「心のひと」と一体になり、音楽と歌・踊りを使ってその内なるものを解放する…とのこと。


このドキュメンタリー映画の主人公パルバティは、インドのバラモン階級の家に生まれ、大学に合格するも、バウルの師との出会いを契機に退学し、階級を捨て、物を所有することを捨て、子どもを作ることも捨てるバウルの伝承者となりました。

パルバティの歩む道Pathには、世俗的な利害からの解放や自由があります。

国や宗教の違い(その背景には利害関係があるわけですが)と結びついた紛争が続く現在において、
あるいは経済的な成功やそのための競争が焦点になりがちな現在において、

境界や私的所有を超越した生き方を実際にしている人の姿は、
「今の生き方でいいのか? 別の道もあるのではないか」と、
我々の視野を広げてくれるように思います。


このように思ったのは、上映後に行われた対談形式の解説を聞いてのことでした。

この映画の監督である阿部櫻子さんと南アジアの研究者であり阿部さんと共に現地調査も行っている岡田恵美さんの対談です。(みんぱく映画会のいい所は、関係者の生の話が聞けることです!)

その中で阿部さんが次のように説明された(と私は理解した)のでした。

よく生きるためには、
「あなたはなぜここにいるのですか?という問いに答える部分」
「生きていくための世俗的な知恵や技術」
の両方がバランスよく自分の中に存在しているのが大切だ。

しかし、現在は後者だけになってしまいがちである。
そのため、彼女たちバウルは、前者、すなわち自分の内に宿る神「こころの人」の存在を人々に気づかせるために歌っている


過去の、自分たちの社会と切り離されたものではなく、
現代の、自分たちの社会を見直すことを可能にしてくれる民族学。
おもしろいです!


《関連資料》

⬜︎ 劇場公開時の映画案内↓

⬜︎ 今年(2024年)11月に劇場公開が始まった続編の案内↓

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