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高校の探究学習に企業がコミットする意義 《前編》

高校教員時代の最後の10年間、探究学習に関してさまざまな企業の方にいろいろな形でご協力いただきました。

最近、元同僚の教員からメールをもらいました。そのメールの中で、企業側にとっての学生の探究活動に協力する意味に関する話題があり、これをきっかけに自分の考えを整理してみました。

「こんな意義を感じていただけていただけていたらありがたいなぁ」「そういう関係になれたらいいなぁ」という私の希望・期待を書いたものです。企業側にいらっしゃる方からご批判、ご指摘をいただければと考えています。


◾️そもそも高校での探究学習とは

この授業の正式な名称は、「総合的な探究の時間」といいます。

現行の学習指導要領(2023年度入学生から適用)で導入され、必修科目として全ての高校で2019年度から先行実施されています。

1つ前の学習指導要領では、名称が少し違う「総合的な学習の時間」というものがありました。小中はこのままなのですが、高校だけ変更になりました。

小中との活動の違いが次のように説明されています。

一つは,探究の過程が高度化するということである。
高度化とは,①探究において目的と解決の方法に矛盾がない(整合性),②探究において適切に資質・能力を活用している(効果性),③焦点化し深く掘り下げて探究している(鋭角性),④幅広い可能性を視野に入れながら探究している(広角性)などの姿で捉えることができる。

もう一つは,探究が自律的に行われるということである。
具体的には,①自分にとって関わりが深い課題になる(自己課題),②探究の過程を見通しつつ,自分の力で進められる(運用),③得られた知見を生かして社会に参画しようとする(社会参画)などの姿で捉えることができる。

文部科学省「高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 総合的な探究の時間編」平成 30 年 7 月 p.9
https://www.mext.go.jp/content/1407196_21_1_1_2.pdf

そしてこのように名称を変更して特質を持たせた背景を3つ挙げています。

一つは,この時期の生徒が,人間としての在り方を理念的に希求し,それを将来の進路実現や社会の一員としての生き方の中に具現しようと求めていることである。

二つは,小中学校の総合的な学習の時間における学びがこれらの特質の具体化を可能としていることである。

そして三つは,この時間における学びが社会的に期待されているからである。

同p.9-p.10

最後に、
ご存知の方もおられると思いますがこの新しいカリキュラムでは、「古典探究」・「地理探究」・「日本史探究」「世界史探究」・「理数探究基礎」・「理数探究」の科目が新設されました。

これらと「総合的な探究の時間」で行われる探究の違いの説明は次のようにされています。

一つは,この時間の学習の対象や領域は,特定の教科・科目等に留まらず,横断的・総合的な点である。総合的な探究の時間は,実社会や実生活における複雑な文脈の中に存在する事象を対象としている。

二つは,複数の教科・科目等における見方・考え方を総合的・統合的に働かせて探究するという点である。他の探究が,他教科・科目における理解をより深めることを目的に行われていることに対し,総合的な探究の時間では,実社会や実生活における複雑な文脈の中に存在する問題を様々な角度から俯瞰して捉え,考えていく。

そして三つは,この時間における学習活動が,解決の道筋がすぐには明らかにならない課題や,唯一の正解が存在しない課題に対して,最適解や納得解を見いだすことを重視しているという点である。

同 p.10

以上の目的・内容を踏まえて、各学校は,「各学校の総合的な探究の時間の目標や内容を適切に定めて,創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する」(同p.21)ことを求められているのです。

ざっくり言えば、結構大変です。(面白さもやりがいもあり、ワクワクもするのですが…)

もう少していねいに言うと、
扱う内容が実社会や実生活における複雑な文脈の中に存在する問題であるために、学校外の社会問題の関係者との繋がりが欠かせません。

また、研究の仕方を学ばせる必要もあり、従来であれば大学が担っていた教育の一部を行うことになっています。

これらは、たいていの教員にとって、受けたこともなく、やったこともないタイプの授業です。(人権教育や地域課題、環境問題、ボランティア活動等に取り組んでいた場合は、多少共通点があるように思いますが…)

そこで、
学校側としては、企業・NGO・行政機関といった現場の方々、また、大学の先生・大学院生の方々に協力をお願いしてきたのでした。


◾️企業側にとっての意義はあるのか。あるとすればどんなことか。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

長くなってしまいましたので、協力していただく企業側にとってどんな意義があり得るのか、については次の記事に分けて書かせていただきました。


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