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真っ赤な嘘

可愛いアマガエルを雨の日に見つけたからといって拾ってはなりません。蛙の生きるのはその田んぼの中や、そこから歩いて遊べる野原。もしも君がアマガエルと一緒に暮らすために、お家へ持って帰ってしまっても、君はアマガエルを入れるためのガラスケースを持っていない。仕方がないので、君の好きなハムスターたちの住むケースに入れようか迷っているうちに、アマガエルは手の中から飛び出して、ハムスターたちの部屋に落下する。たちまちハムスターたちはアマガエルに群がり、自分たちとは異なる生き物を恐れて殺す。君は泣きながらアマガエルを助けるために、ハツカネズミのような目の色にも見えてきたハムスターたちを驚かせないように、アマガエルを砂場の中から探し出す。手に当たったのは冷たくて硬いもの。砂の上に残された、褐色の丸くて薄い石。君が初めから拾うべきだったのは、ただの石。

探し物は落ちていない。元の場所にしか見つからない。倒れもせず、動けもせず、ただそこに取り残されて、どうしたらいいのか分からないで俯く君に、膝の高さまで大きくなったハツカネズミが、君が怖くならないようにと、その赤く充血した目に気付かせてはあげないように、カーテンの向こうを向いたままでいる。救急車に電話したくても、赤く表示された圏外マークが目に付くだけで通じない。落ち着いて電話を掛け直したところで、どうしたのかと聞かれた君は、間違えて掛けたと嘘をつく。アプリを閉じた後の画面にうっすらと映るネズミの目。君も今日から仲間入り。

君は、いつだって、ただ誰かと話がしてみたかっただけなんだよね。悪い子だね。

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