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認知症になったら財産管理はどうなる? 代理人を決めておける制度2つ

認知症になったら、家族など信頼できる他の人に代理で財布や通帳を管理してもらわざるを得ません。しかし、認知症になってしまってから代理人を決めるのは困難です。
 
認知症になる前に「認知能力が落ちたらこの人に財産を管理してもらう」と、代理人を決めておく必要があります。財産管理の代理人を定める方法について解説します。


認知症になると金銭トラブルが発生しやすくなる

判断能力が落ちてくると、生活のさまざまな場面で困ったことが起こる可能性がありますが、なかでも一番困ってしまうのが金銭トラブルです。次のような事態に陥ることがあります。

いらない物を買ってしまう

スーパーへ行き日常的な買い物をするときに、ティッシュやトイレットペーパーなどすでに大量に溜め込んでいる消耗品を、毎回のようにまとめ買いしてしまう人がいます。また食べきれない量の生鮮食品を購入してしまうと、食べられないまま処分するような、もったいない事態になります。

高額な無駄遣いをしてしまう

訪問販売事業者に言いくるめられて高額な買い物をしてしまう恐れがあります。家族が気づいたときにはクーリング・オフの期間を過ぎていたというのも、よくある話です。

「いつの間にか財布に現金がない」と他人を疑う

自分でお金をいつ、いくら使ったのかを覚えていないため、財布からいつの間にかお金が減っていくように見えることがあります。同居家族など、いつもそばにいる人ほど疑われてしまいがちです。

投資詐欺に遭う

判断能力が落ちてくると、詐欺的な話の矛盾に気づけず、大事な資金を悪徳事業者に渡してしまうことがあります。
 
以上のように、認知症になると大切な老後資金を失ってしまうことがあります。それどころか借金を抱えることになり、家族に迷惑をかける恐れも出てきます。

認知症になる前からの対策が必要

基本的に、たとえ家族であっても本人名義の財産を他人が勝手に処分したり、お金に関わる意思決定を他人が行ったりすることはできません。よって何の対策もしないまま認知症になってしまうと、本人も家族も財産の管理が十分にできない状況に陥ります。
 
この状況を防ぐには、認知症になる前からの対策が必要です。次の2つの方法から自分や家族に適したものを選び、判断能力のあるうちに手続きを完了させておきましょう。 

  • 家族信託

  • 任意後見制度

それぞれについて詳しく解説します。

家族信託とは

家族信託とは自分の財産を家族や信頼できる人に託し、あらかじめ決めた信託目的に従って管理してもらう財産管理の方法です。例えば、父親が認知症になる前に娘と信託契約を結び、「父親に認知症の診断が下ったら、娘が父親の財産管理や処分を行う」といった内容の契約書を作成しておきます。すると、時期が来たら娘が父親の代理人として財布や通帳を管理し、必要な場合は不動産を処分して施設へ住み替える費用に充てることが可能になります。
 
家族信託は、認知症になってしまってからでは、基本的には契約を結ぶことができません。判断能力のあるうちに契約を結ぶ必要があります。
 
信託の契約書は任意のものでも可能ですが、他の相続人などとのトラブルを避けるためには、公正証書にしておいた方がいいでしょう。公正証書は最寄りの公証役場で作成します。契約書ができたら、本人の不動産名義を代理人へ移す信託登記を行い、財産を管理する信託口口座を解説します。
 
なお、「家族信託」という名称ではありますが、財産を管理してもらう代理人に指名するのは士業などの専門家でも構いません。

任意後見制度とは

任意後見制度とは、あらかじめ後見人となる人や後見内容について公正証書で定めておき、本人の判断能力が低下したときに契約内容が実行される制度です。家族信託との違いは、財産管理だけでなく身上監護(医療や介護に関する事務手続きなどを代行すること)についても後見人に任せられること、監督者として任意後見監督人が選任されることです。
 
任意後見制度は、認知症になってからでは利用できません。認知症になってから後見人を立てる制度は「法定後見制度」といい、本人や家族などが任意で後見人を選ぶことはできません。家庭裁判所が適任な後見人を選ぶため、家族が選ばれるとは限らないのです。
 
家族自身を後見人とし、財産管理がスムーズに行われるようにしたいと考えるなら、任意後見制度を利用する必要があります。判断能力が十分なうちに家族と相談し、財産管理の範囲など契約内容を決め、公証人役場で公正証書を作っておくのが大事です。

参考:任意後見制度とは(手続の流れ、費用)


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