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「嘘じゃない言い訳」が使えるようになった。

梅雨になりかけたかと思ったらすごい暑さになって、やっと今日くらいから雨が続きそうな気配。風が冷たくて気持ちいい。
できればずっと窓を開けておきたいけれど、湿気混じりの空気だからずっとは開けていられない。人間はこのくらいの湿気だったら気持ちいいんだけど、家具とか本とかは多分そんなに好きじゃない湿度なんだろうと思う。

一週間経つのが早い。もう木曜日だ。

唐突だけど病気になってから良かったと思えることもある。
それは病気になるまでは苦手だった「言い訳」が使えるってこと。
「ごめんね。だって、病気なんだもーん」って。
そういうのあんまり好きじゃなかったんだけど、本当に無理ですって事があると「嘘つきの言い訳」みたいじゃないから出来るようになった。

以前、インテリアの仕事をしている女性達に誘われて、一緒に仕事をするユニットみたいなのに誘われた。
もともとはギャラリーに、モデルルームとかに飾る絵画やオブジェを選びに来てた人たちの集まりなんだけど、この人たちが顧客の新規開拓と新しい仕事がしたいとかいうことで、なんだか相談に乗ることになった感じ。

フリーでやってる人たちばかりだから、月に一回ギャラリーをミーティングの場所にされて、そのユニット用のホームページの制作もその他諸々の資料の制作も、なぜか彼女達は不得手だからと、私とうちのスタッフがやってあげる始末。
まあ、出来ることだからいっかと思ってた。

でも、なんとも他力本願で一生懸命さが足りなくて、すぐにランチに行こうだの、夕ご飯食べに行こうだの言い出す。
私としては、あんまりそういうのは好きじゃない。

それを見てると、ホントに今のままでは先細りだから、心機一転頑張りたいのかわからなくなってきた。

その人達はモデルルームのインテリアを揃えたりするのがお仕事だから、個人の顧客とか、例えばホテルとか病院とか公共施設とかなんでもいいけど、残るような仕事は手がけていない。
マンションの販売が終われば、棟外モデルルームは壊されるし、棟内モデルルームでも売れちゃえばおわり。

だからなのか、そんなにこだわりがない。モデルルームに飾る絵画やオブジェだって、設計のコンセプトを持ってきてわたしに丸投げだ。
まあ、信頼されてるっていえば聞こえがいいけど。

新規開拓したいとか言ってるけど、あんまり仕事も芳しくなさそうだったので、私の仕事のお手伝いみたいな事を依頼してみた。
新しいホテルのアートワークのお仕事だったんだけど、意外にも嬉しそうに手伝うと言う。皆さん私より10個くらい年上だから、私のお手伝いみたいな仕事は嫌なんじゃないだろうかと思って遠慮して言ったのに、なんのことはなかった。

現場のホテルについて、全体朝礼の後、各部屋にアートワークを飾ったり荷物を運んだりしてもらった。
なんだかやる気まんまんで嬉しそうにすら見えた。

午前中の仕事が終わってランチタイム。
いつもは出来るだけ絵描きの学生にバイトを振るようにしてた。
少しでも助けになるように、バイトを頼む時は日当とその日の食事をつけていた。学生はお金に余裕がないかもしれないし、少しでも紙とか絵の具とか買えたらいいなと思って。

バイト代は当然払うけど、おまけの食事とか年上の人にはどうなんだろうと思ったけど、案外あっさり受け止めて「いただきまーす」と嬉しそう。
その上「こんどからなんでも私たちにも手伝わせてよ」と。
意外と、そんな感じなんだと思った。
そして「ホテルの仕事とか初めてだから嬉しい」と。
ちょっとだけ複雑な気分になった。

それからも何度かお手伝いバイトを頼んだけれど、少し中途半端な仕事をするように見えて来た。バイトはするけど年は上だし、私より10年は仕事を長くしてるしみたいな感じが徐々に出てくるようになった。

そうこうしてるある日、お仕事が終わった夕食の席でこんな事を言い出した。
「ねえ、〇〇ちゃんところのお客さんを紹介してくれない?」と。
「・・・。」そういう事だったのか。
気が付かなかった。
「私たちは特定の顧客がいないじゃない?だからギャラリーのお客さんを紹介してもらって、新規のお仕事を増やしたいのよ」
「・・・。」
「ホテルとかそういうお仕事もしてみたいし」
「・・・。」
ビールのせいだと思いたい。

人を人に紹介するっていうのはとても難しい事だと私は思っている。
責任を持って紹介そなくちゃいけないから。ってことはもしもなんかあった時、紹介した私が責任をとってもいいって思えるかどうかだ。

彼女達を見ていて責任はとれない。し、実は一度列車を走らせてる会社が新しいホテルを建てる時、地元でやってるような人もインテリアだけ入れてあげてはどうでしょう?と軽く、軽くね、お茶しながら社長に話した事がある。
「あー、そうね。〇〇さんの気持ちもわかるけど、引き出しが少ないでしょ。」
「それにもしも引き出しがあったとしても、なんかあった時対処する能力がないでしょ?経験不足だから」とさらっと断られていたのだ。
「〇〇さんの下請けのお手伝いって形なら、参加してもらっても構わないよ」と。

言えない。そんな事言えない。だからやんわりお手伝いだけって事にしてたのに。

おまけに長年大切にお付き合いしてくださってるギャラリーのお客様に紹介する事も出来ない。
お客様は一応こんな私でも、私とお話をして、ありがたい事に私の選んだものを気に入ってくれてるんだから。
物と物とのお付き合いだけじゃなくて、人と人との関係でもあると私は思いたい。
それをどうやって、彼女達に望めるだろう。

という事で、その後はなんとなくやんわりとその事には触れないようにした。

今でも「ランチに行きたい」とか「会いたい」とか連絡が来る。
そこで登場する「嘘じゃない言い訳」
「ごめんね。だって、病気なんだもーん」

時間が経つのは早い。おまけに嫌が上にも目的地まで止まらない行進は続く。
大切に使わなくては。

ストレスや無理はいけないって、のび太(私の主治医)も言うしね。

ありがとう!病気☆



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