妊娠からの結婚はなぜ離婚率が高いのか。
先ごろ今泉佑唯さんの妊娠と結婚が発表された。
私は過去50組以上結婚式の司会をつとめて来た経験があり、そのうち12組が「婚前妊娠」で結婚に至っている。
少し説明すると私は「結婚式の司会」と言ってもプロではなく、会社の同僚であったり新郎か新婦どちらかが直接の知人で私の評判を聞き、頼まれたら引き受けるのだが、打合せは早い場合は半年前から始まる。当然夫婦とも充分会話を交わし親しくなる。結婚後も夫婦と食事の場を持つ事は普通にあるし、知人ではない側のパートナーから誘われるなら大抵離婚の相談だ。
その中で婚前妊娠の離婚率は高くほぼ9割と言って良い。もっとも残りの1割も「手続き的に婚姻状態を保ってる」に過ぎず、実情は全滅に近い。
芸能界がそうであるように、一般人にも婚前妊娠は多い。そして(統計を取った訳ではないが)見る限り離婚率も高いと感じる。背景には女性が自立しやすい環境が整って来た故に早めの決断が増えたのだろう。ちなみに女性は子供が生まれると肚が決まり自立的になる傾向が強い。
婚前妊娠カップルは式の前には、後の自分たちに想像が及ぶべくもなく例外なく他の夫婦同様に惚気けている。妊娠がわかり彼に告げると「妊娠したからとかではなく結婚しよう」と言われ、それを話すと周囲から「素敵!」などと言われた話などを滔々と。
しかしそんな「結婚の決断」は古来からの世間体重視の誤った「責任論」であって、「どーせ結婚するからいいや」という実に雑な尻拭いで、とどのつまり諦めにも近い後付けに過ぎない。
私は司会を引き受ける回数が増えるに従い、打合せの段階から離婚する夫婦がおおよそ判るようになっていたが、婚前妊娠は身も蓋もなく言えば“避妊の失敗”あるいは単に“避妊をしなかった”過失だ。
そしてそれは性行為では圧倒的に女性の立場が弱い事を知らないはずもなく、最も相手を慮らねばならない場面で制御できなかった事実を示す。相手を軽んじている逃れようのない証拠なのだ。
——「結婚」は女性にとって今昔を問わず“魅惑的な言葉”であり続けている。“社会で評価されたい”男性と違い女性は“周囲の友達や仲間から認められたい”傾向が強く人生に於いて数少ない晴れ舞台が結婚なのだ。
妊娠が判明し「結婚」の声を聞くともう女性は高揚する。例え結婚を視野に入れている相手であっても「今でいいのか」と冷静に考える事が出来ない。昔と違い中絶の安全性は極めて高く、かつ容易になっているにも関わらず。
さて、婚前妊娠者はほぼ2年~3年で離婚するケースが多い。それはなぜか。
婚前妊娠は結婚からまもなく出産を迎え、そこからは有無を言わさず夫婦は双方の育児ミッションに巻き込まれる。ここではわかりきった事を行うので夫婦はお互いの個を見つめあう時間は多くない。そして子供の手がかからなくなるのが概ね2才~3才あたりで、そこで夫婦はやっとお互い向き直る事になり、それまで育児期間を通じて蓄積され、あるいは目の当たりにしてきたパートナーの姿に「この結婚が誤りであった」と気付き、どちらかといえば妻が旦那を見限る事になる。
当たり前であるが、様々な観点から今一度確信を持って言えるのは、やはり結婚をふまえてからの子作りが望ましいということ。そして子供がほしい時にタイミングを考慮して産むのが当たり前といえば当たり前の結論を言うしかないのだが、どうしても婚前妊娠の収束を「どうせ結婚するからいいや」との乱暴な形に収めてしまう。
避妊失敗による「妊娠」と「結婚」は本来ダイレクトに繋がらない。「結婚」を「避妊失敗のけじめ」にしてしまうのは誤りである事をしっかり再認識して欲しい。そして結婚も視野に入れる交際相手「だからこそ」迂闊に妊娠しないように避妊をすべきだし、女性からも避妊をしない場合に拒む姿勢が必要だ。
ここまで書いても婚前妊娠時には2~3年後の残酷な審判と多大な苦労が待っている事など全く想定出来ないのであろうが——