あるコラムニストからもらった最初で最後の返信
編集・ライターとして働き始めて十数年。とくに誰かに言われたわけではないんですが、誰かの原稿を確認するときは必ず、一言でも感想を伝えるようにしています。自分が書いた原稿を世の中の人はどう感じるんだろうって、やっぱり気になる(気にすべき)ところだと思います。自分が最初の読者になるわけですから、どんなに忙しくてもそれは最低限の礼儀だろうと私は思っています。
数年前、元々の担当者が退職することになって引き受けたあるコラムニストについてです。遠方に住まわれていてなかなかご挨拶ができず、かつ、いろんな連載を抱えていたとっても多忙な方でした。それでもしっかりと納期を守ってくださいました。
ただ、メールは「原稿送ります」とあるだけ。企画案を送っても「分かりました」。初校確認でのメールは一度も返信をもらったことがありません。それでも、あまたある媒体の中でうちの仕事を受けてくれているわけですから、こちらも誠意を示したいと思い、お礼の言葉とともに感想を送り続けていました。
1年ぐらい経ち、サイト改修に伴って担当替えになりました。結局、一度もご挨拶できないまま新しい担当者に引き継ぎになったんですが、次の原稿と合わせて「新天地でのご活躍をお祈りしています」というご連絡をいただきました。
原稿のテーマは元々、「卒業」と定めていました。いつも通り、余韻のある筆圧な文章でしたが、最後には担当からの卒業についても触れていました。つまり、私です。そのコラムニストは担当いじりを一つのネタにしていました。前の担当者曰く、それは身に余る光栄なことだと。そこにつづられていたのは以下でした。
私と対極をなす「コミュ力モンスター」な担当に、最終的に私の方が戦慄を覚えた。
この方なりのはなむけなんだろう、と受け取ることにしました。ある種、最初で最後の返信でした。
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