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探し物は意外なときに意外な場所から出てくる

母が花屋をしている関係で、私は子どものときから繁忙期のお盆と年末は花屋で過ごしています。社会人になったいまも、花屋の手伝いのために帰省しています。商店街の中にある花屋で、昔はとってもにぎわっていたもんだから、二手に分かれた売り場を押し合いへし合いしながらお客さんをさばいていました。いまはさみしいもんですが、それでもお得意さんに助けてもらっています。

私が中学生だったときのことです。年末の花屋は寒いし忙しいし手が荒れるし嫌だなと思う一方で、商品がバンバン売れていくのは楽しかったです。何より、「これだけ売ったよ!」と親を喜ばせたいという思いが子ども心にありました。なのでお金はそのまま自分で管理して、お正月に披露しようと思っていました。

年末を終え、正月になりました。自分の頑張りを見せつけようとお金を探すも、入れたはずの戸棚にないんです。右往左往する私に家族も不審がり、とうとう「お金がない」と告白。「いくらあったの?」と聞かれて「……25万円ぐらい」。正月早々、みんなで必死の捜索が始まりました。でも見つからない。「もしかしたら泥棒に入られてしまったんじゃないのか」。みんなの疲弊した顔を見ながら、私はただ泣くしかありませんでした。

何か飲もうとしたんだと思います。冷蔵庫を開けて中を見ると、見慣れた小さい箱が出てきました。私が毎夜毎夜、大事に戸棚に締まっていたあのお金の箱でした。その冷蔵庫は戸棚の真横。入っていた場所も、戸棚と同じ高さでした。疲れて寝ぼけた私が戸棚と思って冷蔵庫に締まっていたようです。みんなで万歳。出てきたことでお祝いまでしました。

そんなことがあったもんだから、いまでも「あれがない」って話になると「また冷蔵庫に入っているんじゃないの?」と言われてしまいます。みなさんも探し物が見つからないときは、ぜひ冷蔵庫もチェックしてみてください。まさかな。でもひょっとすると……。

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