名大初のプロ野球選手・松田亘哲くんのその後
「初登板の日は駆けつけるから」と言っていました。戦力外通告でマウンドを降りたなら今なんだろうと思い、松田亘哲くんに会いに行きました。
初めましては4年半前。高校はバレー部でリベロだった子が、名古屋大学初のプロ野球選手を目指す。大学で初めて硬式野球を知る左腕投手、それも黒縁眼鏡。話を聞いてみるとやっぱり面白い。
嬉々として書いた原稿はいろんなメディアの目にも触れたようで、その後、取材が相次ぎ、中日も本気になってくれたと服部監督が言ってくれました。でもそれはたまたまで、一番は彼自身の努力と実力と人柄です。育成選手の1位で呼ばれた瞬間、感情が追いつかず何とも言えない顔をしていたのが印象的でした。
去年は1軍キャンプメンバーに抜てきされ、初の1軍での対外試合も経験しました。中日で過ごしたこの4年間、本当にいろんなことを乗り越えてきたようです。みんなに愛されてきたことがよく伝わりました。野球がどれだけ大好きなのかも。戦力外通告から数日は、ずっと目指してきたことがなくなった喪失感があったようですが、今は次のキャリアを見据えています。
「七原優介さんのように、僕よりもうまい選手が名大にいたのはもちろん知っています。でも名大初のプロ野球選手という肩書きは僕だけのものです。そんな僕だから、後輩たちのいいプレーは素直に誉めてあげたいし、次のキャリアも開けるんだよと示してあげたいです」
いい子だ。
服部監督に会い、松田くんの元バッテリーの黒柳くんのご家族にも松田くんと一緒に会いに行きました。松田くんがご家族に会うのは黒柳くんのお葬式以来のようでしたが、お父さんとお酒を酌み交わし、楽しそうに野球の話をする松田くんの笑い声はきっと、黒柳くんにも届いたことでしょう。
サインも書き慣れたもので、「太いマッキーが一番」と言うから、100円ショップで買ってきましたよ。日帰り名古屋から夜行バスで帰京し、翌日は寝不足で頭が痛い一日でしたが、私も元気をもらいました。
