ソニー仙台活動終了について思うこと。

 先日、JFLに所属するソニー仙台の活動終了が発表されました。

日本サッカーの基盤を作った企業チームの歴史。

 日本サッカーの歴史を紐解いていくと、企業チームがその発展に大きく貢献しています。サンフレッチェ広島が東洋工業サッカー部、浦和レッズが三菱自動車サッカー部であったように、企業チームを起源とするJクラブは少なくありません。Jリーグ開幕以降、プロ化しなかった企業チームはJFLもJリーグに活躍の場を移し、今シーズンは、ソニー仙台、Honda、ミネベアミツミ、FCマルヤス岡崎の4チームがJリーグを目指すクラブと戦っています。
※横河電気が出資する横河武蔵野FCは、横河電気をメインスポンサーとした地域総合型スポーツクラブとして活動しているため、企業チームとはカウントしていません。

フットボールの多様性を支えるJFL。

 JFLは日本の4部リーグに相当するリーグで、アマチュアクラブも参加出来る唯一の全国リーグとして、企業チームやJリーグを目指すチームが所属し、過去には大学生やJクラブのセカンドチームがリーグを戦っていた時期もありました。Jリーグに参入するためには、JFLで定められた成績や集客を残さなければならず、プロへの登竜門としての機能はもちろん、アマチュアが参戦できる最高峰のリーグとして存在感を発揮しています。プロとアマチュアの境界に全国リーグがあることで、プロを目指すクラブはJリーグに向けて強化・興行の双方で準備を行なうことが出来、企業チーム等のアマチュアクラブは身の丈に合った状態で全国リーグを戦うことが出来ています。
 このようにJFLがあることで、様々なクラブが全国リーグを戦うことが可能となり、日本サッカーの多様性を育んでいます。

J4化するJFL。

 しかし、JFLに所属するクラブの多くがJリーグを目指すクラブとなり、大学生やJのセカンドチームは現在所属しておらず、企業チームも前述の4クラブとなりました。さらに来季は、ソニー仙台が退会することで、地域リーグからの昇格がなければ企業チームは3チームとなってしまいます。実際、JFL参入戦である地域リーグチャンピオンズリーグの昨年の出場チームを見てみると、企業チームはなく、JFLの企業チームが減少することはほぼ間違いないでしょう。また、J3とJFLの現状の順位を鑑みると、Jリーグからの降格チームの参入の濃厚であり、プロを目指すクラブが切磋琢磨する様相がさらにつよまると予測されます。

JFL・企業チームだからこそ出来ること。

 度々天皇杯でも上位進出を果たすHonda FCは、本田技研が運営する企業チームで、Jリーグの門番としてJFLで活躍し、日本サッカー界の中でも確固たる地位を築き上げています。そんなHondaは、都田サッカー場とという自前のスタジアムを保有していますが、公共施設ではない自前のスタジアムを保有しているクラブは、Jクラブを含めてもごくわずかです。また、アカデミーも有しており、JFLという身の丈に合わせながらJクラブ以上に、サッカークラブとしての充実していると言えるでしょう。
 サッカーに限らず、上昇志向や成長志向がもてはやされる昨今ですが、競争の先にはごく少数の勝者と圧倒的多数の敗者が生まれてしまいます。HondaはJリーグという競争を降りたからこそ、JFLで独自の輝きを放ち日本サッカーに欠かせないクラブとなっています。Hondaだけでなく、最近までJクラブがなかった宮崎県で活躍し続けるミネベアミツミ、企業チームとして長い歴史を持ち、愛知県第二のサッカークラブの地位を確立したFCマルヤス岡崎、企業チームとしてスタートし、現在は地域総合型スポーツクラブとして新たな挑戦を続けている横河武蔵野と、JFLにはJリーグ以上に多様性に富んだ豊かなサッカー文化があります。
 この豊かな文化が末永く続いてくことを、イチ蹴球人として願っています。

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