台風での試合運営の思い出。

 台風10号が日本列島に上陸し、Jリーグでは大阪ダービーをはじめ複数の試合の中止が現時点で発表されています。今日は私がクラブスタッフ時代に体験した、台風や荒天時の試合運営のエピソードをいくつかお話しします。

当時の試合運営の状況

 私が在籍していたのは当時J2のクラブであり、予算規模は小さく、試合運営ではJ1やJ2の大きなクラブが外部委託することでも、クラブスタッフ総出テ行っていました。具体的には、ピッチのライン引き、ゴールの設置、スポンサー看板・バナーの設置、場外ブースのテント設営、担架要員・ボールパーソンへのレクチャー、公式記録の作成、マッチデープログラムの準備と配布などなどを行っており、スタジアムほぼ全ての設営・運営・片付けを経験したと言えます。また、チームに帯同するマネージャーも経験したので、台風や荒天下でのアウェイへの移動の大変さも経験しています。そんな経験の中から、いくつかピックアップしてお話しが出来ればと思います。

エピソードその1。空飛ぶ看板。

 私が入社して1年目か2年目の出来事です。当時はまだ、計画運休のように社会全体が台風に早めに備える習慣はなく、台風接近中であっても試合を行う前提で準備を進めていました。また、キックオフ時間に台風が過ぎている=準備中に強い・雨風に晒されることも何度かあり、このエピソードもそんな時に発生しました。
 台風が接近する中、夜のキックオフに向けて準備をしていた私たち。当時はピッチサイドのスポンサー看板をクラブスタッフと運営補助のアカデミーの選手で設置していましたが、暴風の中での作業であったため、さすがにアカデミーの選手達はお休みで、クラブスタッフのみで行っていました。
 台車に看板を乗せてゴール裏まで運び、所定の場所に看板を仮置きして、並べている時でした。突風が吹いて、某航空会社の看板の半分が宙を舞ったのです。看板は木材の基礎とアルミ製の表面で出来ており、大人二人で運んでもかなり重い素材です。そんな看板が吹き上げられるほどの強風。さすがに、そのあとすぐに看板を撤去し、その試合は看板なしで行われました。
 ちなみに、この試合以外にも強風で看板を出さなかった試合は数試合ありましたし、看板に重りを置いても風で動いたことも何度かあったので、自然の力は人間には到底及ばないと実感しました。

ちなみに看板はこんな感じです。
※私の経験とガイナーレ鳥取は関係ありません。


エピソード②水たまりを排除せよ。

 私の所属していたクラブのホームスタジアムは水捌けが悪いことで有名で、雨が降るとすぐにピッチに水が溜まりました。今は土壌が改良されてかなり良くなっているそうですが、当時はピッチ上の水を抜くために、巨大なスポンジローラーを出動させていました。

 水を含んだピッチ上を押しながら進むのですが、ピッチはぬかるんでいる上に水を含んだスポンジと水受けに入る水の重さで重量は半端なく、コンディションが悪いときには一人で押すのも難しい状況でした。また、当然、雨に降られながら行うので、季節によってはとてつもなく寒いですし、靴はビチョビチョです。さらに、雨が降り続いている状況だと、いくらやったところで水は溜まる一方で、まさに焼け石に水状態でした。

エピソード③。地獄の人工芝運び。

 雨の試合運営で一番過酷だったのが、人工芝運びです。私のクラブのスタジアムは陸上競技場ため、芝のピッチの範囲がギリギリなので、ピッチ周りのタータンに人工芝を敷いていました。

※国立競技場も同じで周りの薄い緑の所が人工芝です。

 この人工芝が雨を含むととてつもなく重くなります。台車に乗せるために丸めて運ぶのですが、丸めると水が一気にしみ出してきます。またただで冴え重く大人二人で運ぶ人工芝が水を含むと、大人三~四人掛かりで運ばなければならず、作業効率が一気に落ちます。さらに最悪なのは、1週間天気が良くない時。前の試合で濡れた人工芝が乾かずに水を含んだまま、かつ使い古した雑巾のような異臭を放つ状態で、ピッチ周辺に広げて行かなければならず、これもかなりのキツい作業でした。

試合開催の裏側には多くの苦労が隠れている。

 他にも悪天候にまつわるエピソードは沢山ありますが、今回はこの3つをご紹介しました。華やかに見えるJリーグですが、裏側ではクラブスタッフがとても地味な作業をコツコツと積み重ねていて、その努力が安全な試合運営に繋がっています。試合を観る際には、一瞬でも良いのでそんな方々に思いを馳せていただければと思います。

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