おばさんになっても何もできない
情けないことだが、わたしはひとりで行動できない。買い物やスタバ、ランチやカラオケにならひとりで行けるが、ひとり焼肉やひとりラーメン、ひとり映画鑑賞などはまだ経験が無い。
Googleマップを見ながら、或いは車のナビを見ながら見知らぬ場所に行くことはできない。
オタオタしてしまい、事故を起こしかねない。
正直言ってナビが信じられない。
1人で新幹線に乗って大阪まで行ったのは数年前に一度きりだ。
極度の方向音痴で目も悪い。
それなのにメガネは車を運転する時だけなので、日常的に掛けていないせいか大体忘れてしまい、案内板の文字がまったく見えない。
なんて書いてあるのかと口を開けて目を細め、眉を寄せてしか見ることができない。
飛行機にも1人で乗ったこともない。
海外に行くなんてもってのほか。
家族で富山の主人の実家に行く時に飛行機を利用したことがあったが、落ちるんじゃないかと不安でしかたなかった。
エンジンがかかり機体がゆっくり滑走路に向かって動き出すと両手を組んで神様仏様、どうか無事に着きますようにとブツブツ言っていたら、前の座席の人にじろっと睨まれてしまった。
エンギデモナイ。
SNSの波を乗りこなせていない。
youtubeやnoteはなんとかこなしているが、複雑な編集など出来るわけもなく、あくまでも気持ちは受け身であることには変わりない。
発信はしているのだが、まったくやり方を熟知していない。覚えようという気概がないだけなのだが。こうすれば再生回数もっと伸びますよ、という話を聞く気が起きない。
カタカナ、英単語、省略などの言葉の羅列は迷いの森のようにその中へ進むことを拒むようだ。
去年この歳になって初めて胃カメラを飲み、大腸癌検査で肛門から内視鏡を入れられた。
麻酔をかけられた間に終わり、そのままぐーぐー夕方まで寝続けてしまい、看護師さんに起こされて結果を聞く羽目になった。
ひとつひとつ経験することにより、大人になるのだと自分を褒め称える。
疲れやすくなり、暑さにもストレスにも耐性が無くなり、我慢することなく自分に楽をさせようとするその術こそ、きっと年の功ということなんだろうとくすっと笑う。
ふらっと思い立ってのひとり旅は夢であり、強い憧れでもあるが、それができるようになるのはいつのことやら。
そんなことを考えながら麦茶を飲み、首に買ったばかりのアイスリングを巻き、わたしは今日も仕事に行くのだ。
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