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鬱うつウツと息子


昨夜遅くLINE電話の音が鳴った。
見ると息子だった。
慌てて飛びつくようにスマホをつかむ。


また(気持ちが)落ちちゃってさ。
自重気味の半笑いが耳に響く。
底なし沼が人だったら多分こんなふうなんだろうな。
そんなことを考えてしまうほど暗い声。

息子はただ今、"絶賛"鬱ど真ん中である。


以前こんなことを書いております。


本当によくある話で笑えないくらいだが、会社での上司からの一日中絶え間ない恫喝のリフレイン。(ユーミンならいいのに)
会社でも何度もトイレで吐きながら仕事をしていたという。聞けば聞くほど拷問である。
そしてそれを見て見ぬふりの人たち。

それをパワハラのひと言で片付けていいのだろうか。
人の精神を崩壊させる人間。
これを罪と呼ばず、何という。


まさか自分が。
病院でそう診断された時、薄々そうだろうなとわかってはいてもそうはっきり医師の口からという言葉を聞いた時は息子はやはりひどくショックを受けたらしい。


ひとつのことが気になると延々と考え続け、ああでもない、こうでもない。
こうなったら大変だ、じゃあどうしたらいいのか、うまくいく方法はないのか、それがもしうまくいかなかったら大変だ。
そんなふうに脳がエンドレスでフル活動して答えを探しているという。
見つかるわけもない。
動きっぱなしの思考の中でもちろん眠気も起きるわけがない。
ここでようやく睡眠薬を服用し、朝まで苦しい思いを抱えている焦燥感。

こんな時には尾崎を聴いてほしい。


そしてぐーっと地の底から押し上げてくる将来への不安と真っ黒い自分の中にあるネガティヴさ。
こんな風になってしまった自分の弱さ。
なんでも自信満々でヘラッと切り抜けてきた自分。
失敗なんてしなかった自分。
それに引き換え何でこんな風になってしまったのか、その情けなさと治らないかもしれない不安感に襲われると、もうどうしようもなくなっていてもたってもいられなくなるという。


辛い。
しんどい。
胸が痛い。
眠れない。
そしてまたぐるぐる同じところを回り続けることになる恐怖と戦っている。



日中は陽を浴びろ。
運動して軽く汗をかけ。
朝はカーテンを開けろ。
窓を開けて風を入れろ。
部屋を片付けろ。要らないものは捨てろ。
床に物は置くな。


専門家でも医者でもない私が言えるのはせいぜいそれくらいだ。
頑張れとは到底言えない。
命令形はいけないと調べたら書いてあった。

オーマイガー!!!
全部、命令形じゃないか!!!


息子の話をうんうんと聞くことに徹していると、私も鬱々としてくる。
胸が苦しくなる。
吐き気もしてくる。
彼の状態を言葉や響き、温度感で疑似体験してしまう。
たぶん私が魚座だからだ。
12星座の最後に当たる魚座はすべてのものを引き受け救済する役割があると、以前本で読んだフレーズをこんな時にふいに思い出す。


私に言えるのはただいつも君の側についているということ。
味方であるということ。
いつでも聴くということ。
すべてを受け止めるということ。


失敗せず、自信満々でクールにやってきたという君は虚像で、今やっと本来の優しい君に戻ろうとしてるだけなんだよ。
変化する時だから苦しいんだよ。
産道をくぐり抜けている時なんだから苦しいの。
あなたは生まれ変わるんだよ。




そう息子に伝えたら、少し笑って、
話したら少し落ち着いた。
明日仕事でしょ、もう寝るね。
そう言って電話は切れた。


時計を見ると1時をまわっていた。
もう今日になっている。
寝よう。


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