自分の好きを見つける環境があるアメリカの公立高校
昨日は長女のアメリカの高校のBack to school nightに行ってきました。
Back to school nightとは、夜、学校に行き、娘の時間割に沿って、教室を移動しながら娘の受講している先生にお会いし、先生の授業に対する想い、スタイルについての説明を受けるものです。毎年一回、年度の最初に開催され、私はとても楽しみにしている時間です。
アメリカの高校に入るのは初めてだったので、ちょっとドキドキしつつ、廊下ですれ違う懐かしの顔にちょっとほっこりしながら娘の先生のお話しを聞いてまわりました。
そこで、いいなぁと思ったのは、娘の高校は、自分が好きだって感じるものを模索できる環境が整えられていることです。
高校といえば、やりたいことがあっても、勉強と部活以外に何かをする時間がなかったように記憶している私にとるとちょっと羨ましい気持ちになりました。
自分が好きなことに出会うために注ぐエネルギーの矛先は、例えば、こういうところなんだ、と気付かされた3つのことをご紹介したいと思います!
1.自分の興味を深めるスキル
まずBiologyの授業。先生は、高校時代のBiologyの先生の授業に感銘を受け、その授業がきっかけとなりハーバードでBiologyを学び、その後研究職などを経て高校教師になられた先生でした。
生物が大好きで、たくさん伝えたいことがあるその先生。けど、高校は大学とは異なり、生物を専攻にする生徒ばかりではない。なので先生が大事にされていることは、高校の一年目では、細かい知識を覚えてもらうことよりも、生物学を真剣に学ぶことで身に付くスキルで、どんな人生を選んだとしても役に立つ4つのスキルが身についてきているかどうかを大事にしますと、教えてくださいました。
自分の人生を作り上げていく上で大事なスキルと先生が生徒に伝えたいものは以下4つ。
私なりにまとめると、
スポーツでもいい、音楽でもいい、歴史でもアートでもいい。高校では、「このことについてもっとやりたい、もっと知りたい、もっと深めたい、もっとずっと一緒にいたい」と思うテーマに出会うチャンスを先生方はたくさん提供します。なので、色んなチャンスに挑戦することで、自分がもっとやりたいと思うことに出会って欲しい。そして、この授業で学ぶスキルを使って、それらを自分なりに深めていって欲しい。私はそれがたまたま生物だったから、生物というテーマを通してあなたたちに伝えます、とおっしゃられていたことが印象に残りました。
もちろん、生物の内容も好きでもっともっと学びたかったら、こーんなにも参考資料準備しているから、どんどん学んでいってね!とそのテーマに関連するYoutube videoなどの動画も紹介されています。その量は「参考資料が多すぎる!」と文句が出るほど。
大好きな生物学の「知識」よりも、興味ある分野を深め、新たな知識が生み出される過程で使われるスキルに重点を置いてくださるとは、なんてラッキーな高校生たちなんだろう、と感じました。
2自分のアイデンティティを模索する授業
次に印象に残ったのは、自分を知ろうとする授業が開催されていると言うことです。
それは、Identity, Health and Societyという授業です。きっと日本でいう保健の授業。ここで、あれ?って思ったのは、アイデンティティ、保健、社会ってどう繋がるの???
けど、少しよく考えてみると、健康・保健って、自分が今暮らしている外的な社会、そして、自分自身が自分をどう捉えるかという内的な社会と切ってもきれない関係にある、ということ。だからこそ、自分の健康・健康を保つこと(保健)を学ぶ上で、社会学的な視点が必要になる。それを娘の通う公立高校は必須の授業として14歳の若者に提供している。
健康であるということは、社会や仲間からの影響を賢く受けながら、自分にとって「正しい」と思う、自分の身体がYesという選択を続けることで保っていけるんだよ。ここでは、そんな選択を助けるために必要な知識、情報、スキルを提供するね、ってなんて深くて温かい。
これって、もしかして、多様性が尊重される公平な社会にむけて、大人たちが若者に伝えたいと感じている深いメッセージが込められた授業なのかもしれない、と気づいたのです。
今学期扱う内容を少し紹介すると
このようなセンシティブな話し合いができるように、教室では安心安全なコミュニティを築くことをまずは何よりも大事にしている、と。
教室にはカフェステーションも。
このカリキュラムは地区が開発した、Social-Emotional and Social Justice Competenciesカリキュラム(relationship skill, social awareness, self-awareness, self-management, responsible decision, understanding inequities and fostering equityなどを教えるもの) をもとに作られているとのこと。
自分は何者かを模索する高校時代に、そんな会話をガイドのもとにできるっていいな、と思いました。みんな違うから、同じ高校に通っていてもそれぞれ異なる選択をしていて当然。そんな土壌を授業を通しても耕してもらえる。高校という小さな社会で練習し続けられる。そして、いち人間として共に考え導き委ねられる等身大の先生の姿をみられるのは、豊かな時間だろうなぁと想像します。
3 失敗しながら学べる環境
後一つ感じたのは、選択にはつきものの「失敗」を安全に体験できる環境が準備されているということです。高校の一年目から授業の選択は全て生徒に任され、何単位取るか、取らない授業の時間何をして過ごすか、取ってみて合わないと思ったらどうするか、などいろんなことを生徒が体験し考え決断し行動していく仕組みがあります。
もちろん、そこで、色んな感情に出逢います。選択した後も、選択する前には思ってもいなかったことに出会い迷うこともあります。そして、何か違う、と思ったら、授業を組んでくださっているカウンセラー先生に相談に行けます。
失敗してもいいから、自分で選んでみて、行動してごらん、何かあったらいつでも相談にのってより良い方法を一緒に考えるからって、そんな体験を安全にできるコミュニティが公立高校の中にあるって、これも大人の愛だなぁと感じたのでした。
4 まとめ
長女がアメリカの高校生になり、急に部活のレベルが上がったり、数学のレベルが上がったり、いつみんな準備したんだろう???と思うほど、正直焦ってしまっておりました。部活も高校になるとVarsity, Jr. Varsityなど真剣にやる子とそうでない子で練習時間も分かれます。そもそも上手じゃない子には挑戦するチャンスさえないこともあります。ずっと部活を頑張ってきた私は、ガンガン頑張れる環境に娘が入れない状況にモヤモヤしていました。
けど、高校時代は、勉強やスポーツなど何かに打ち込むのもいい。同時に、学校で提供される授業は真面目に取り組みながらも、打ち込むものに出会うために、
自分で考えて、
自分で選び、やってみて、
どんどん失敗し、やり直し、
また挑戦し、見つけていく。
そんな機会を数多く設け、味わい、模索する機会にするのもいい。それをストーリーとして描くことがきっと自分にあった大学・進路選択に繋がり、自分にしか描き出せない志望動機に繋がっていくんだろうなぁ、と思いました。特に、高校の1、2年目は。
だから、焦らなくてもいい。授業の課題を終えることは応援しつつ、高校にある色んなチャンスの中からやってみたいものに挑戦することは応援し、一つ一つの選択の意図と学びを大事に積み上げ、娘にしか描けない物語を紡いでいけばいい、という親としての軸も一本できた気がします。
アメリカの高校生は、大学受験をどのように体験するのかは、私はまだわかりませんが、自分のやってみたいことを色々とやってみるチャンスとスキルを身に付けていく環境、とてもうらやましく、ありがたいと思いました。